親が元気なうちに聞いておくこと|お金・保険・契約の「置き場所」リスト
実家が遠い人ほど、決めておくのは「どこに何があるか」だけでいい

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親は今のところ元気で、深刻な話をする理由が何もない。でも、何かあったときに自分は親の口座がどこの銀行かも知らない——その居心地の悪さから検索した人に向けた記事です。ここで扱うのは金額ではなく「置き場所」の一点だけ。いくら持っているかを聞き出す話は出てきません。葬儀社やお墓の資料請求、相続の手続きそのものは終活の始め方のページにまとめてあるので、この記事はその手前、まだ何も切り出せていない時期を担当します。

先に結論

なぜ「元気なうち」でないと間に合わないのか

「そのうち聞けばいい」と思っているうちに、聞ける時期が終わることがあります。終わり方は2通りあって、ひとつは親の判断能力が下がったとき、もうひとつは亡くなったあとです。前者では手続きが止まり、後者では手続きは進むけれど費用と時間がかかる、という違いがあります。

判断能力が下がると、本人にしかできない手続きが止まる

分かりやすい例が任意後見契約です。将来支援してもらう人を自分で決めて結んでおく契約で、日本公証人連合会の説明によれば、本人の判断能力が十分なうちに締結するもので、任意後見契約に関する法律により公正証書で作らなければなりません。そして実際に効力が生じるのは、判断能力が低下したあとに家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時からです。

順番が逆にはできない、というのがここでの要点です。任意後見契約は、本人が契約の内容を理解できるだけの判断能力を持っていることが前提なので、判断能力が下がるほど選べる幅は狭まります。ただし、どの程度なら契約できるのかを家族が判断することはできません。公証人が本人の意思を確認したうえで作る契約なので、迷う段階になったら公証役場や司法書士・弁護士に相談してください。家族信託という言葉も見かけますが、要件も費用も解説ごとに書き方が違うので、この記事では名前を挙げるだけにします。判断能力が下がったあとに何ができるかは家庭の事情で変わるため、地域包括支援センターや家庭裁判所、司法書士・弁護士の窓口に相談してください。

出典:日本公証人連合会 任意後見契約の解説ページ(koshonin.gr.jp/2026年8月25日参照)。個別のケースで任意後見が使えるかどうかは、公証役場や司法書士・弁護士の窓口でご確認ください。

亡くなったあとは、家族が「どこにあるか」を一から探すことになる

何も聞けていなくても、調べる手段はあります。生命保険については、生命保険協会が運営する生命保険契約照会制度が使えます。親族等が亡くなった場合、または認知判断能力が低下した場合(この場合は医師による診断が必要です)に、加盟する生命保険会社の契約を一括で照会できる仕組みで、利用料は調査対象者1名につきWEB申請6,000円、書面申請7,000円です。

ただし、分かるのは契約が「ある」か「ない」かまでです。保険金額も受取人も保障内容も出てきません。対象になるのは照会受付日の時点で有効に継続している個人保険契約で、すでに失効した契約や解約済みの契約は含まれません。死亡による照会では死亡日まで最低3年間さかのぼって調べます。契約があると分かったあと、保険金の請求はその保険会社へ個別に行うことになります。

つまり照会制度は「保険に入っていたかどうか」までしか教えてくれない道具で、証券の置き場所が分かっていればそもそも使う必要がありません。借入についても信用情報機関の開示制度がありますが、こちらも手数料と戸籍などの書類が要ります(後述の④)。手段があることと、手間がかからないことは別だ、という前提でこの先を読んでください。

出典:生命保険協会「生命保険契約照会制度のご案内」(seiho.or.jp/2026年8月25日参照)。利用料・対象範囲は改定されることがあります。災害救助法の適用時など、別の取扱いが用意されている場合があります。申し込む前に生命保険協会の公式ページで最新の案内をご確認ください。

この記事で制度の可否は判断しません

以下に出てくる制度の金額や条件は、参照日時点で公的機関が公表しているものを書き写しています。ただし、その制度が読者の家で使えるかどうかは、相続人の人数、親の状態、取引先の金融機関の運用で変わります。判断が要る場面は、そのつど窓口の名前を書きました。

聞くのは金額ではなく「置き場所」

「いくらあるの?」だと身構えられやすい理由

金額を尋ねる質問は、答えた瞬間に何かが動くように聞こえます。相手の生活の全体を採点するような響きもあり、聞かれた側が身構える余地が大きい。終活の話を切り出された親が身構えるという解説はよく見かけますが、感じ方は人それぞれなので、ここでは「そう受け取る人もいる」の範囲にとどめます。

そのうえで、実務のほうから見ると事情がはっきりします。手続きで実際に必要になるのは金額ではなく在り処です。残高は通帳と金融機関が知っているので、子が知らなくて困るのは「そもそもどこの銀行なのか」のほう。置き場所を尋ねる質問は、答えても親の財布は何も変わりません。

置き場所への言い換え

同じことを聞いていても、主語を金額から場所に置き換えるだけで、答えが一言で済むようになります。

聞きたいことそのまま聞くと置き場所として聞くと
預貯金貯金はいくらあるの?どこの銀行を使ってる? 通帳はどこにしまってる?
保険保険にいくら入ってるの?保険会社はどこ? 証券はどこに置いてある?
不動産家と土地はいくらになるの?権利証と、固定資産税の納税通知書ってどこ?
借入借金はあるの?毎月の引き落としで出ていくもの、何がある?
デジタルネットでいくら動かしてるの?スマホで使ってる銀行や支払い、どれを使ってる?

右の列は、親にとっては家の中の物の場所を答えるだけの質問です。金額を答えさせないと決めておくと、聞くほうも気が楽になります。

一覧は親が書いてもいいし、子が書き取ってもいい

エンディングノートを買って渡す方法もありますが、書き始められないまま置かれることもあります。帰省した日に子がメモを取る形でも、記録される中身は同じです。書式にこだわらず、後で読んで場所が分かればそれで足ります。市販のノートの比較は別の記事の担当なので、ここでは商品名を挙げません。

そして、一覧が使い物になり続けるかどうかを左右するのは、書いたあとに更新することです。引っ越し、通帳の切り替え、保険の見直し、スマホの機種変更。どれも置き場所が変わる出来事なので、そのたびに一行だけ直せる形にしておきます。

聞いておくことリスト(9項目)

1日で全部を聞く必要はありません。帰省のたびに1項目ずつでも、9回で終わります。各項目に「なぜそれが要るのか」を1行添えたので、親に理由を聞かれたときはそのまま使ってください。

①預貯金|取引のある金融機関名と支店、通帳・カード・印鑑のしまい場所

相続の手続きは金融機関ごとに別々に進みます。どこに口座があるか分からないと、心当たりのある銀行に片端から照会をかけることになります。とくにネット銀行は通帳が発行されず、郵便物も届かない設定にできるため、家の中を探しても手掛かりが出てこないことがあります。

印鑑については、場所と一緒に「どれがどの用途か」まで聞いておきます。実印・銀行の届出印・認印が分かれてしまってあること自体は普通ですが、家族が見ただけではどれが届出印かは判別できません。

②生命保険・医療保険|保険会社名と保険証券の場所

保険金は請求しないと支払われません。家族が契約の存在を知らなければ、請求という行為そのものが起きないままになります。前の章のとおり生命保険契約照会制度で有無は調べられますが、分かるのは有無だけで、利用料もかかります。保険会社名と証券の場所を先に聞いておけば、この工程はまるごと不要になります。

入院給付金のように、亡くならなくても請求できるものもあります。親が入院したときに家族が保険会社を知らないと、請求できる期間のうちに気づけないことがあります。

③年金|受給している年金の種類と年金証書の場所

亡くなったあとには、年金を止める手続きと、まだ受け取っていない分(未支給年金)の請求があります。死亡の届出は、日本年金機構にマイナンバーが収録されている方については原則として省略できると案内されていますが、未支給年金の請求はこれとは別に必要です。未支給年金を受け取れるのは、亡くなった方と生計を同じくしていた遺族で、配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹・その他3親等内の親族という順位があります(先順位の人がいる場合、後順位の人は受け取れません)。どの年金を受け取っていたかで手続き先が変わるため、種類が分からないと最初の一歩でつまずきます。年金証書の場所と、振込先になっている口座を、①とあわせて聞いておきます。

出典:日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」(nenkin.go.jp/2026年8月25日参照)。取扱いは改定されることがあります。実際の手続きは年金事務所または街角の年金相談センターにご確認ください。

④借入・ローン・保証債務|信用情報機関の開示で分かること

相続では、プラスの財産だけでなく借入も引き継ぎます。相続放棄を検討する場合には家庭裁判所への申述に期限があるので(終活の始め方の相続・手続きの基本に期限をまとめています)、借入の有無を早く把握できるかどうかで、相続放棄をするかどうかを期限内に判断できるかが変わります。放棄するかどうかの判断そのものは弁護士・司法書士の領域です。

亡くなったあとに調べる手段としては、信用情報機関の開示制度があります。CIC・JICC・KSC(全国銀行個人信用情報センター)の3機関とも、亡くなった方の情報を法定相続人が請求できます。手数料と申込み方法は機関ごとに違います。

機関請求できる人亡くなった方の情報を開示するときの手数料申込み
CIC法定相続人1,500円
(税込)/コンビニで利用券を買う場合は発券手数料が加算され1,650円
郵送
支払い方法は下の※へ
JICC法定相続人
または2親等以内の血族
(委任を受けた弁護士・司法書士も可)
2,177円
(税込・速達は2,511円)
郵送
KSC
全国銀行個人信用情報センター
法定相続人2,403円
(開示2,060円+発券343円)
郵送
コンビニで利用券を購入

※CICの支払いは、開示利用券(コンビニで購入)か定額小為替証書のどちらかです。コンビニで買う場合は発券手数料が上乗せされ、通常の送付方法では合計1,650円(速達を付けるなら1,925円)が表示されます。定額小為替証書を使う場合は、額面1,500円のほかにゆうちょ銀行の発行手数料が1枚200円かかります。JICCで請求できるのは法定相続人または2親等以内の血族で、委任を受けた弁護士・司法書士も申し込めます。

3機関は加盟している会社の顔ぶれが違うため、どこか1つを開示すれば全部が分かるという関係ではありません。また、開示されるのはあくまで加盟会社との契約として登録されている情報です。親族や知人との個人的な貸し借り、頼まれて名前を貸した保証のように加盟会社を通っていないものは、開示しても出てきません。ここは本人に聞くしかない部分です。

必要書類も機関ごとに違い、戸籍謄本または法定相続情報一覧図、本人確認書類2点といったものを揃えることになります。

出典:CIC 法定相続人による開示申込みの案内(cic.co.jp(PDF・様式番号F39))およびCIC よくある質問(亡くなった方の情報開示)/JICC「二親等以内の血族 法定相続人等による開示」(jicc.co.jp)/全国銀行協会 全国銀行個人信用情報センター 開示手続(郵送)のページ(zenginkyo.or.jp)。いずれも2026年8月25日参照。手数料も申込方法も改定されることがあります。申し込む前に各機関の公式サイトで最新の案内と必要書類をご確認ください。KSCのインターネット開示の金額は、裏取りが足りないため本記事では扱っていません。

⑤不動産|固定資産税の納税通知書と、登記識別情報(権利証)の場所

「どこに何を持っているか」を家族が把握するとき、手掛かりになるのが固定資産税の納税通知書です。実家の土地建物だけでなく、親が相続した田畑や山林、遠方の土地が載っていることがあります。この種の不動産は、本人以外は場所を特定できないまま残りやすい部分です。

なお、相続による名義変更(相続登記)については、法務局が示している必要書類の一覧に登記識別情報(権利証)は挙がっていません。相続を証明するのは戸籍謄本や遺産分割協議書のほうです。ただし同じ資料に「上記以外にも必要な書類がある場合があります」と書かれているとおり、追加の書類を求められることはあるので、実際の必要書類は管轄の法務局にご確認ください。権利証の置き場所を聞いておく意味があるのは、親が元気なうちに不動産を売る・担保に入れるといった場面のほうです。

出典:法務局「相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等」(houmukyoku.moj.go.jp(PDF)/掲示元は不動産登記の申請書様式について)。2026年8月25日参照。

⑥デジタル|ネット銀行・ネット証券・スマホ決済・有料サブスク

紙が出てこないものが増えました。ネット銀行やネット証券は郵便物が届かない設定にできますし、有料サブスクは解約するまで請求が続きます(口座やカードが使えなくなっても、未払いとして残ることがあります)。スマホが開かなければ、通知も履歴もたどれません。

最後の項目は書き方に注意してください。子がパスワードや暗証番号そのものを預かる形は勧めません。親が自分で控えを作り、その控えがどこにあるかだけを共有する。理由はやってはいけないことに書きました。

⑦医療|かかりつけ医、お薬手帳、持病とアレルギー

救急車を呼んだ場面で、その場で聞かれることが多いのがここです。入院や治療方針の説明でも、家族が普段の状態を答えられないと話が進みません。介護保険の要介護認定でも、市町村が主治医に意見を求めることが介護保険法で定められているので、かかりつけ医の名前は早い段階で共有しておく価値があります(申請の流れは親の介護は何から始める?にまとめています)。

出典:厚生労働省「要介護認定に係る法令」(mhlw.go.jp/2026年8月25日参照)に、介護保険法第27条第3項として「市町村は、被保険者から要介護認定の申請があったときは、主治医に対して、身体上又は精神上の障害の原因である疾病又は負傷の状況等について、意見を求める」と掲載されています。

⑧葬儀とお墓の希望、菩提寺の有無

亡くなったあと、葬儀の形式を決める時間はほとんどありません。菩提寺があるのに家族が知らないまま別の形で済ませてしまうと、あとから納骨で困ることがあります。希望の有無、菩提寺があるかどうか、連絡してほしい人の名前。ここまでで十分です。

費用の相場や葬儀社・霊園の比較は終活の始め方の担当です。親が「まだ考えたくない」と言うなら、この項目は最後に回して構いません。

⑨マイナンバーカードと健康保険証の場所

各種の手続きで提示や返納を求められます。手続きの当日に家中を探すことになりやすい書類なので、しまってある場所だけ聞いておきます。

印刷して使えるチェックリスト

ブラウザの印刷機能でそのまま紙にできます。金額を書く欄は作っていません。書いた紙が人目に触れる可能性を考えると、置き場所までにとどめておくほうが安全だからです。

項目聞くこと(置き場所)聞けた日
①預貯金取引のある銀行名と支店。通帳・キャッシュカード・印鑑の場所と、どれが銀行の届出印か / 
②保険保険会社名と、保険証券をしまってある場所 / 
③年金受け取っている年金の種類と、年金証書の場所。振込先の口座 / 
④借入・保証毎月の引き落としで出ていくもの。保証人になっているものの有無 / 
⑤不動産固定資産税の納税通知書と、登記識別情報(権利証)の場所 / 
⑥デジタルネット銀行・ネット証券・スマホ決済・有料サブスクの名前。ロック解除方法の控えの場所 / 
⑦医療かかりつけ医の名前と連絡先、お薬手帳の場所、持病とアレルギー / 
⑧葬儀・お墓希望の有無、菩提寺があるか、連絡してほしい人 / 
⑨身分証マイナンバーカードと健康保険証の場所 / 

※暗証番号・パスワード・金額は書かない前提のリストです。書き込んだ紙をどこにしまうかについては、公的機関の推奨として確認できたものが見つからなかったため、具体的な保管先は挙げていません。

口座は「いつ」使えなくなるのか

銀行に相続の連絡をすると、その口座の入出金は原則として制限される

全国銀行協会は、相続の連絡と同時に、亡くなった方(被相続人)の口座での取引、つまり預金の入出金等が原則として制限されると案内しています。「死亡した瞬間に自動で凍結される」という説明を見かけることがありますが、全国銀行協会のページにその書き方はありません。連絡と結び付けて理解しておくほうが実際に近いといえます。

ただし、これは「連絡する前に引き出しておけばいい」という話ではありません。他の相続人がいる場合、引き出した記録は取引履歴に残るので、あとで使い道の説明を求められることがあります(やってはいけないことを参照)。取扱いは金融機関ごとに違う場合があるので、詳しくは取引のある金融機関に確認してください。

葬儀費用のための払戻し制度(民法909条の2)

2019年7月1日から、家庭裁判所の判断を経なくても、相続人が単独で預貯金の一部を払い戻せるようになりました。金額は次の式で決まります。

払い戻せる金額の計算

相続開始時の預貯金債権の額(口座ごと)× 1/3 × その相続人の法定相続分

ただし、1つの金融機関から払い戻せるのは150万円まで。

例:親の口座の残高が900万円、相続人が子2人(法定相続分は各1/2)の場合。900万円 × 1/3 × 1/2 = 150万円で、上限とちょうど同じ額になります。残高が1,200万円だと計算上は200万円ですが、1つの金融機関からは150万円までです。

払い戻した分は、あとで相続分から差し引かれる

この払戻しは、その相続人が遺産の一部分割をしたものとみなされます。つまり引き出した額は、後の遺産分割でその人の取り分から差し引かれます。葬儀費用の立て替えには使えますが、受け取れるお金が増えるわけではありません。

出典:法務省「相続に関するルールが大きく変わります(民法(相続法)改正)」(moj.go.jp(PDF))の遺産分割前の預貯金の払戻し制度の図表に、計算式と「1つの金融機関から払戻しが受けられるのは150万円まで」という注記があります。口座での取引が相続の連絡と同時に原則として制限されること、家庭裁判所を経ない払戻しが遺産の一部分割をしたものとみなされることは、全国銀行協会 相続手続きの解説ページ(zenginkyo.or.jp)によります。いずれも2026年8月25日参照。上限額は法令で定められていますが改定されうるため、最新は法務省と取引金融機関でご確認ください。実際に払い戻せる金額や必要書類は金融機関の手続きによります。個別の可否や相続放棄の判断は、弁護士・司法書士・税理士など専門家にご相談ください。

切り出し方|責める形にしない

言い方の問題というより、順番と分量の問題です。1回の帰省で全部聞こうとすると、どうしても詰問の形になります。

自分の分から先に書いて見せる

子のほうが先に自分の口座・保険・スマホの解除方法の置き場所を書いて、それを見せてから同じ紙を渡す。この順番だと「あなたのことを調べたい」ではなく「うちで決めておく」という話になります。子が独身だったり、単身赴任中だったりするなら、自分に必要な理由もそのまま説明できます。

帰省のついでに、1項目だけ

9項目を9回に割ります。「今日は保険だけ」と決めて、答えが出たらそこで終わる。次の帰省まで期間が空いても、書いたものは残ります。全部そろわないと意味がない、という性質のリストではありません。

話が自然につながるきっかけ

言いにくいときの言い換え

「財産を教えて」と言うと、目的が財産そのものに見えます。同じことを「もしものとき、私はどこを見ればいい?」と聞くと、目的は自分が困らないための確認になります。主語を親の資産から自分の段取りに移すだけで、質問の性格が変わります。

それでも話したがらないときは、その日は引きます。次の帰省で別の項目を聞けば、順番が変わるだけです。

やってはいけないこと

親に無断でカードから引き出す・通帳を持ち出す・勝手に解約する

良かれと思って先回りしても、口座の出入りは取引履歴として残ります。相続人が複数いる場合、引き出した本人が使い道を説明できないと、そこで話が止まります。親本人が知らないところで動かした場合はなおさらで、家族の間の信用の問題にもなります。必要があるなら、親の同意を得たうえで、何にいくら使ったかを記録に残す形にしてください。

電話で暗証番号を聞く/カードを預かる形にしない

警察庁が注意喚起している手口と、外形が同じになります

  • 預貯金詐欺…自治体や税務署、銀行協会の職員などを名乗り、医療費の還付があるからキャッシュカードの確認・取替が必要だと信じ込ませて自宅を訪ね、電話で暗証番号を聞き出す手口。
  • キャッシュカード詐欺盗…私服警察官や銀行協会職員を装って訪問し、被害者が目を離した隙に、用意していた偽のカードと本物をすり替える手口。封筒を開けないよう指示されるため、すり替えにすぐ気づけない構造になっています。

警察庁は、自治体や銀行協会などの職員が暗証番号を尋ねたり、キャッシュカードを預かりに来ることはないと明言し、キャッシュカードや通帳を他人に渡さないよう呼びかけています。

この記事が勧めているのは、置き場所を家族で共有することであって、暗証番号を電話で聞くことでも、カードを預かることでもありません——ここは線を引いておきます。子が電話で暗証番号を尋ねる習慣がつくと、次に同じ電話がかかってきたとき、親には本物かどうかを見分ける手掛かりが残りません。「暗証番号は電話で聞かない」と家の中で決めておけば、同じ電話がかかってきたときに親が判断に迷う場面を減らせます。

規模の感覚として数字を1つだけ。警察庁の確定値では、令和7年の特殊詐欺は認知件数27,832件、被害額1,423億1,000万円で、前年から件数が32.3%、被害額が98.0%増えています。このうち65歳以上の被害は認知件数14,273件、被害額841億1,000万円で、金額でみると被害の59.2%が65歳以上に集中しています。

出典:警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」(令和8年5月22日公表/npa.go.jp(PDF))。手口の説明は警察庁 SOS47 特殊詐欺対策ページの預貯金詐欺およびキャッシュカード詐欺盗によります。いずれも2026年8月25日参照。上の数字は特殊詐欺だけの集計です。SNS型投資・ロマンス詐欺は別に集計されており、両者を合算した数字が特殊詐欺の被害額として紹介されている例があるので、比べるときは範囲をご確認ください。

聞き出せなかった項目を責めない・急がせない

答えたくない項目が残るのは普通のことです。書けない欄があっても、書けた欄の分だけ探す手間は減ります。空欄をゼロにすることを目的にすると、次の帰省で話ができなくなります。

聞き取りが済んだら、次にやること

葬儀・お墓・相続の準備は終活のページへ

置き場所が分かったら、次は本人の希望を形にする段階です。葬儀社の資料請求、お墓・供養の方針、死亡後に期限のある手続きは、終活の始め方(葬儀・お墓・相続の準備)にまとめてあります。このリストは、そのページのステップ④「預貯金・保険・不動産など財産の一覧を作る」を、子の側から実行するための手順です。

終活の準備を見る

介護が始まったときの最初の手続き

判断能力や体の状態が変わってきたときの入口は、介護保険です。どこに電話をかけるか、要介護認定の申請から結果が届くまでに何が起きるかは、親の介護は何から始める?に順番どおり書いてあります。かかりつけ医(⑦)の情報は、ここで主治医意見書の話につながります。

実家の片づけ・遺品整理を考えるなら

置き場所を聞いておくことは、そのまま片づけの下準備にもなります。費用の相場や業者の選び方は遺品整理の費用相場と業者の比較に、記事の一覧は遺品整理・実家じまいにあります。

見守り・認知症の備え

離れて暮らしていて様子が分からないことが不安の中心なら、道具で埋められる部分もあります。見守り・認知症の介護用品、あるいは介護用品を悩みから探すから見てください。

よくある質問

親が話したがりません。どうすればいいですか

その日は引いて、別の項目に変えてください。9項目のうち、比較的答えやすいのは⑦医療(かかりつけ医・お薬手帳)と⑨身分証の場所です。お金から入ると身構えられやすいので、順番を入れ替えます。理由を聞かれたときは「もしものときに私がどこを見ればいいか分からないから」と、自分の困りごととして伝えるほうが角が立ちません。子が先に自分の分を書いて見せる方法も、切り出し方として使えます。それでも難しい場合、無理に説得する必要はありません。この記事のリストは、埋まった分だけ後の手間が減る性質のものです。

きょうだいがいる場合、誰が聞くのがいいですか

誰が聞くかより、聞いた内容をきょうだい全員が見られる状態にしておくことのほうが重要です。1人だけが情報を持っている状態は、あとで「勝手に動いたのではないか」という疑いを生みやすくなります。1人が聞き取ったなら、その場で他のきょうだいにも同じ内容を共有してください。金額を書かないリストにしておくと、共有のハードルも下がります。誰が何をするかで意見が割れる場合は、相続の個別の判断になります。弁護士・司法書士・税理士などの専門家に相談してください。

聞いた情報は、どこに保管しておけばいいですか

保管場所については、公的機関の推奨として確認できたものがないため、この記事では特定の方法を勧めません。決めておけるのは中身のほうです。暗証番号とパスワードは書かない。金額も書かない。書くのは「どこにあるか」だけ。この3つを決めておけば、紙が人目に触れた場合に読み取られる情報を減らせます。あわせて、一覧を作ったことと置き場所を親本人にも伝えて、親が知らないところで子だけが管理している状態にしないでください。

何も聞けないまま親が亡くなったら、もう調べようがないのですか

調べる手段はあります。生命保険は生命保険協会の生命保険契約照会制度で契約の有無を照会でき、借入は信用情報機関(CIC・JICC・KSC)の開示制度で、法定相続人が登録内容の開示を請求できます。不動産は固定資産税の納税通知書が手掛かりになり、預貯金は取引のありそうな金融機関に相続の手続きとして照会することになります。ただし、それぞれ手数料と戸籍などの書類が必要で、生命保険契約照会制度で分かるのは契約の有無だけです。調べる方法そのものは残っていますが、どれも費用と書類の手間が要る点は共通しています。

エンディングノートは買ったほうがいいですか

市販のノートの比較は別の記事の担当なので、商品としての良し悪しはここでは書きません。書式は何でも構わないというのが前提です。決め手になるのは書式ではなく、置き場所が変わったときに一行だけ直せる形かどうかです。市販のノートでも、子が書き取ったメモでも、その条件を満たしていれば足ります。

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