親の介護は何から始める?最初の1本の電話から、要介護認定の結果が届くまで
入院・転倒・急に弱った。今週やることを、順番に並べました
親が入院した、転んで動けなくなった、電話の受け答えが前と違う。そこから検索を始めると、要介護認定、ケアプラン、区分支給限度基準額といった言葉が一度に出てきます。役所の説明ページは制度ごとに分かれていて、子である自分が今日どこに電話をかければいいのかは、探し当てるまでに時間がかかります。この記事は制度の一覧ではなく、やる順番の記事です。日数と金額には出典と参照日を付け、自治体で運用が分かれるところは「どこに確認するか」まで書きました。
先に結論
- 今日やるのは電話1本です。かける先は、親が住んでいる市区町村の地域包括支援センター。制度を調べてからにしよう、と思うと1週間が過ぎます。
- 要介護認定は、介護保険法で「申請のあった日から30日以内」に処分すると定められています。ただし延期を通知できる仕組みがあり、厚生労働省の集計では申請から二次判定までの全国平均は40.2日(令和4年度下半期)。1か月で結果が届く前提では予定を組まないでください。
- 認定調査の日は、できるだけ家族が立ち会ってください。調査員が親の様子を直接見るのは、原則としてこの訪問の1回です。
- 結果を待つ間も動けます。ただし住宅改修は着工前の申請が原則で、先に工事をすると原則として支給の対象になりません(例外を認めるかどうかは市区町村の運用によります)。
- お金の枠は4つあります。負担割合(1割・2割・3割)、ひと月の上限(区分支給限度基準額)、ひと月の自己負担の上限(高額介護サービス費)、そして住宅改修20万円と特定福祉用具販売の年10万円。 → お金の全体像を見る
親の介護、今週やることはこの順番
介護保険のサービスを使うまでには、決まった段取りがあります。飛ばせる工程はほとんどありませんが、子が動くのは最初と真ん中の2か所だけです。あとは市区町村と医師の側で進みます。全体を先に見ておくと、今どこで止まっているのかが分かります。
全体の流れを1枚で
- 相談…地域包括支援センターに電話する。親の様子を伝えて、申請すべき状態かを一緒に判断してもらう。ここは子だけでもできます。
- 申請…市区町村の介護保険担当窓口へ、要介護認定の申請書と介護保険被保険者証を出す。持ち物と出し方は市区町村ごとに違うので、電話で確認してから行きます。
- 認定調査…調査員が親のところへ来て、決められた項目に沿って心身の状況を確認する。ここが家族の立ち会いどころです。
- 主治医意見書…市区町村が親の主治医に意見書を依頼する。家族の手は動きませんが、実はここがいちばん日数のかかる工程です。
- 一次判定…認定調査の結果と主治医意見書の一部をコンピュータに入力し、介助にかかる時間を推計して要介護度の目安を出す。
- 介護認定審査会(二次判定)…保健・医療・福祉の専門家が集まる審査会が、一次判定と主治医意見書、調査の特記事項を見て要介護度を決める。
- 結果通知…審査会のあとに、認定結果が郵送で届く。非該当・要支援1〜2・要介護1〜5のいずれかです。
- ケアプラン…要介護ならケアマネジャー、要支援なら地域包括支援センターが担当になり、使うサービスを組み立てる。ここでようやくサービスが始まります。
※工程の並びと、一次判定に認定調査の74項目と主治医意見書の一部(5項目)が入力されることは、厚生労働省が社会保障審議会介護保険部会(第115回・令和6年12月9日)に出した資料「要介護認定の認定審査期間について」(mhlw.go.jp(PDF)/2026年8月24日参照)によります。同資料のフロー図では、認定結果の送付は介護認定審査会の実施より後の工程として描かれています。
急いでいる人へ。今日やるのは電話1本でいい
この記事を最後まで読んでから動く必要はありません。今日やることは、地域包括支援センターに電話をかけて、親の様子を話すことだけです。申請書の書き方も、要介護度の見込みも、そこで教えてもらえます。
制度を先に理解しようとすると、要介護度の区分、限度額、負担割合、サービスの種類と、覚えることが次々に増えます。全部を頭に入れてから電話をかけよう、と考えているうちに数週間が過ぎることがあります。順番は逆で、電話をかけると、自分の家に関係のある部分だけが残ります。
ステップ1|最初の1本の電話は地域包括支援センターへ
介護の入口は、病院でもケアマネジャーの事業所でもなく、地域包括支援センターです。高齢者の相談を受ける窓口として市町村が設置していて、総合相談、権利擁護、介護予防のケアマネジメント、医療や福祉の関係機関との連携を担っています。相談は無料です。
出典:厚生労働省「地域包括ケアシステム」(mhlw.go.jp/2026年8月24日参照)。設置数は本文に書いていません。名称は市区町村によって「高齢者相談センター」「あんしんすこやかセンター」など別の呼び方をしている地域があります。
どこにかけるか。自分の住所ではなく、親の住所で探す
ここを間違える人が多いところです。担当のセンターは親が住民登録をしている市区町村で決まります。離れて暮らしていても、子の側の市区町村に相談するのではありません。「(親の市区町村名) 地域包括支援センター」で検索すると、たいてい担当区域の一覧表が出てきます。区域が分からなければ、市区町村の高齢福祉の担当課に電話をすれば、その住所の担当センターを教えてもらえます。
電話で聞かれること、手元に用意しておくもの
身構える必要はありませんが、次のものが手元にあると話が早く進みます。分からない項目があっても、そこは飛ばして電話して構いません。
- 親の氏名、生年月日、住所、電話番号。
- 介護保険被保険者証。65歳になると全員に交付されています。実家のどこにあるか分からない場合は、その旨を伝えれば再交付の相談もできます。
- いま困っていることを、生活の場面で3つほど。「歩けない」ではなく「トイレまで壁を伝って行く」「風呂の縁をまたげない」「同じ買い物を何度もしてくる」のように、起きていることをそのまま話します。
- 親の主治医と病院名。持病、飲んでいる薬、直近の入院や手術があればその時期。
- 同居している人の有無と、家族が通える頻度。誰がどの時間帯に手を出せるかによって、ケアマネジャーが組むプランで家族が担う部分と外部サービスに任せる部分の配分が変わります。
- 子である自分の連絡先。日中つながる番号を伝えておくと、折り返しの取りこぼしが減ります。
子が代わりに電話してよいか
相談の電話は家族からで問題ありません。むしろ、本人が困りごとを小さく言う傾向があるぶん、家族が見ている様子を伝える価値があります。ただし、そのあとの申請や契約は本人の同意が前提になるので、親に無断で話を進めないでください。「市に相談してみた」と本人に伝えたうえで動くほうが、あとの認定調査で本人の協力を得やすくなります。
まだ介護というほどではない段階でも、相談していい
「要介護認定が下りるほどではないのに、相談していいのか」という迷いで止まる人がいます。地域包括支援センターは介護認定を受けた人だけの窓口ではありません。介護予防のケアマネジメントも役割に入っているので、認定に至らない段階の相談が想定の範囲です。
加えて、認定を受けることと、サービスを使うことは別です。認定が出たあとに何も使わない、という選択もできます。先に認定を受けておくと、急に介助が必要になったときに、申請から結果を待つ期間を挟まずにケアプランの相談へ進めます。ただし認定には有効期間があり、状態が変わったときは区分変更の申請が必要になることがあります。有効期間と更新の時期は、結果通知と一緒に届く書類で確認してください。転倒や入院は、たいてい予告なく起きます。
ステップ2|要介護認定を申請する
相談の結果、申請することになったら、次は市区町村の窓口です。地域包括支援センターに申請の手続きを代わってもらうこともできます(後述)。
申請の窓口と必要なもの
申請先は、親が住民登録をしている市区町村の介護保険担当窓口です。基本の持ち物は次のとおりですが、細かい必要書類は市区町村ごとに違います。行く前に電話で確認してください。
- 要介護・要支援認定申請書。窓口でもらえるほか、市区町村のサイトからダウンロードできることが多いです。
- 介護保険被保険者証(65歳以上の場合)。40〜64歳の人(第2号被保険者)は、加入している医療保険の被保険者証が必要になります。なお介護保険法第7条第3項は、40歳以上65歳未満について、要介護状態の原因が「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病であって政令で定めるもの(特定疾病)」による場合を要介護者としています。親が64歳以下の場合は、対象になるかどうかを先に市区町村の介護保険担当窓口で確認してください。
- 親の主治医の氏名・医療機関名・所在地・電話番号。申請書に書く欄があり、市区町村はここに主治医意見書を依頼します。かかりつけがいない場合は、その相談から窓口ですることになります。
- 窓口へ行く人の本人確認書類。マイナンバーの記入を求められる市区町村もあります。
主治医の欄は、結果が届くまでの日数に関わります。しばらく受診していない医師を書くと、意見書を書いてもらうために受診の予約を取り直すところから始まり、そのぶん結果が遅れます。主治医意見書は、市区町村が依頼してから入手するまで全国平均で17.8日かかっている工程です(令和4年度下半期。出典と参照日はステップ3の表)。直近で親を診ている医師を書けば、この受診のやり直しを挟まずに済みます。
子が代理で出せるか。法律上の「申請代行」と、家族による提出は別のもの
ここは説明が食い違いやすいところなので、分けて書きます。
介護保険法第27条第1項が定める「申請代行」ができるのは4類型です。指定居宅介護支援事業者、地域密着型介護老人福祉施設、厚生労働省令で定める介護保険施設(介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護医療院)、そして地域包括支援センター。家族はこの4類型に含まれていません。厚生労働省の資料も「現在、介護保険法においては、要介護認定の申請代行ができる者として以下の4つを指定している」と書いています。
一方で、家族が本人に代わって申請書を出すこと自体は、多くの市区町村が受け付けています。これは法第27条第1項の「申請代行」ではなく、家族による代理・使者としての提出という別の位置づけです。実際、厚生労働省の集計では、申請の8割近くが本人以外の手によるものです(令和6年度の代行割合78.4%)。
つまり「子が窓口に持って行けるか」の答えは、たいてい持って行けます。ただし委任状が要るのか、本人確認書類は誰の分が要るのか、被保険者証は原本が要るのか、といった運用は市区町村で違います。行く前に電話1本、が結局いちばん早く済みます。
出典:厚生労働省が社会保障審議会介護保険部会(第122回・令和7年6月30日)に出した資料「要介護認定について」(mhlw.go.jp(PDF)/2026年8月24日参照)。代行割合78.4%は令和6年度の値で、申請代行者の情報が介護保険総合データベースに入力されているデータに限った集計です。なお、申請代行ができる者の範囲は令和6年度の地方分権改革提案を受けて見直しが検討されており、同資料は令和7年度中に結論を得るとしています。この4類型は、本記事の参照日(2026年8月24日)時点のものです。
郵送・オンラインで出せるかは、自治体によって違う
郵送を受け付けている市区町村もあれば、窓口持参を原則としている市区町村もあります。マイナポータル経由の電子申請に対応している市区町村も出てきていますが、全国どこでも使えるわけではありません。遠方に住んでいて何度も帰れない人ほど、ここは事前に確認する価値があります。「郵送で出せますか」「オンラインは使えますか」「使えないなら地域包括支援センターに代行してもらえますか」の3つを、同じ電話でまとめて聞いてしまうのが手数を減らすやり方です。
ステップ3|申請してから結果が届くまでに何が起きるか
申請したあとは、家族の手が止まります。この期間に何が動いているのかを知らないと、待っているのか止まっているのかが分かりません。
法律上は「申請から30日以内」。ただし延期を通知できる仕組みがある
介護保険法第27条第11項は、「第一項の申請に対する処分は、当該申請のあった日から三十日以内にしなければならない」と定めています。ここだけを読むと、1か月で結果が出るように見えます。
ところが同じ項にはただし書きがあり、認定調査に日時を要するなど特別な理由がある場合には、30日以内に処理見込期間とその理由を通知したうえで、処分を延期できます。「30日以内」は守られるべき原則ですが、延期の通知が届いているなら、30日を過ぎていること自体は違法な状態ではありません。手元にその通知が来ているかどうかが、待つ側の最初の判断材料になります。
実際にはどれくらいかかっているか(厚生労働省の全国データ)
厚生労働省が社会保障審議会介護保険部会に出した資料に、全国の実測値が載っています。令和4年度下半期の数字です。
| 何を数えたか | 令和4年度下半期の値 | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| 申請から認定(二次判定)までの全国平均 | 40.2日 | 中央値39.4日。介護保険総合データベースに登録された個々の認定情報から算出 |
| 市町村ごとの平均値のばらつき | 最小20.0日 中央値38.9日 最大78.7日 | 1,735市町村の平均値を並べたもの。第1四分位31.7日、第3四分位48.1日 |
| 平均が30日以内に収まっている市町村 | 1,735のうち97市町村 | 割合にすると約5.6%。この97市町村の平均は26.8日 |
| 内訳:主治医意見書の依頼から入手まで | 17.8日 | 認定審査期間の中でいちばん長い工程 |
| 内訳:認定調査の依頼から実施まで | 10.3日 | 日程調整と訪問にかかる期間 |
出典:厚生労働省「要介護認定の認定審査期間について」(社会保障審議会介護保険部会 第115回・令和6年12月9日 資料2/mhlw.go.jp(PDF)/2026年8月24日参照)。集計対象は令和4年10月〜令和5年3月申請分(介護保険総合データベース)。ここでいう認定審査期間は「二次判定日−認定申請日」と定義されており、結果通知が手元に届くまでの日数ではありません。審査が終わってから、結果が郵送されます。また同資料には、集計方法の違う全市町村平均39.5日という値も併記されています。これは令和4年度下半期の集計値です。最新の値は厚生労働省の公表を確認してください(同資料は、認定審査期間を全国・都道府県別・保険者別に毎年度公表する方針を示しています)。
この表から読み取れるのは、日数は自治体によって大きく違うということです。平均20.0日の市町村と78.7日の市町村が、同じ制度の中にあります。「1か月くらいで出るらしい」という一般論より、親の住む市区町村の窓口に「今どのくらいかかっていますか」と聞くほうが、はるかに当てになります。
なぜ延びるのか。いちばん時間がかかるのは主治医意見書
同じ資料に、市区町村の担当者が感じている課題の調査結果が載っています。全国150自治体を抽出した調査で、回答は108自治体。そのうち「主治医意見書の取得に時間がかかる」を課題に挙げたのは100自治体、92.6%で、選択肢の中でいちばん多くなっています。次いで「認定調査の実施までに期間を要する」が52.8%、「認定調査の内容確認に時間がかかる」が51.9%です。
意見書を書くのは、市区町村ではなく医師です。診療の合間に書かれるものなので、市区町村が急がせても限界があります。家族の側にできるのは、申請書に書く主治医を、直近で親を診ている医師にしておくことと、可能なら申請したことを診察のときに本人から伝えてもらうことくらいです。それでも、この工程だけで平均17.8日かかっています。
出典:同資料に掲載された「要介護認定事務の実態に関する調査」(令和5年度要介護認定適正化事業/全国の市区町村150自治体を抽出、回答数108自治体)。回答した108自治体の中での割合で、全市区町村を数えたものではありません。2026年8月24日参照。
30日を過ぎても何も届かないときにできること
まず確認するのは、延期の通知が来ているかどうかです。処理見込期間と理由を書いた通知が届いているなら、その期間を待つのが筋になります。郵便物の山に紛れていることもあるので、実家の郵便物を一度見せてもらってください。
通知も来ないまま30日を過ぎている場合、介護保険法第27条第12項に、次の定めがあります。申請から30日以内に処分がされないとき、延期の通知がないとき、または処理見込期間が過ぎても処分がされないときは、被保険者は市町村が申請を却下したものとみなすことができる、というものです。
これは審査請求に進むための法律上の仕組みで、いきなり使うものではありません。この条文があるという事実が意味するのは、30日という期限には裏づけがあり、進捗を尋ねるのは正当な行為だということです。実際の一手としては、市区町村の介護保険担当窓口に電話して、申請日と親の氏名を伝え、いまどの工程で止まっているのかを聞いてください。認定調査がまだなのか、意見書待ちなのか、審査会待ちなのかで、待ち方が変わります。
出典:介護保険法(e-Gov法令検索/2026年8月24日参照)第27条第11項および第12項。条文の解釈や、不服申立てをするかどうかの判断については、市区町村の窓口や専門家にご相談ください。この記事は、まず窓口に進捗を問い合わせることを最初の一手として示しています。
ステップ4|認定調査には家族が立ち会う
認定調査の日程は、申請のあとに市区町村から連絡が入ります。厚生労働省の集計では、市区町村が認定調査を依頼してから実施するまでの全国平均は10.3日です(令和4年度下半期。出典=厚生労働省「要介護認定の認定審査期間について」社会保障審議会介護保険部会 第115回・令和6年12月9日 資料2/mhlw.go.jp(PDF)/2026年8月24日参照)。ただしこの期間は市区町村によって差があるので、訪問日がいつごろになるかは申請のときに窓口で確認してください。ここは、家族が親の普段の様子を判定の材料として伝えられる場面です。
立ち会う理由は、調査員が親を見るのが原則1回だけだから
認定調査は、決められた74項目に沿って心身の状況を確認していきます。この結果と主治医意見書の一部が一次判定のコンピュータに入力され、介助にかかる時間が推計されます。つまり、その日に確認された状態が、要介護度の土台になります。
問題は、他人が来る日には普段よりしっかりして見える人がいることです。普段は壁を伝って歩いているのに、その日は背筋を伸ばして歩いてみせる。夜中に3回起きていても「よく眠れています」と答える。悪気があるわけではなく、他人の前で弱った姿を見せたくないという、ごく普通の反応です。
ただ、調査員が見られるのはその1回きりです。できる日の姿だけが記録に残ると、実際より軽い判定になることがあります。要介護度が軽く出ると、ひと月に保険で使えるサービスの上限も低くなります。だから家族が同席して、普段の様子を補う必要があります。
調査員に渡すメモに書いておくこと
その場で親の言うことを否定すると、本人が気分を害して、そのあとの受け答えに協力が得られなくなります。口で訂正せず、紙に書いて調査員に渡せば、本人の前で言い争わずに同じ内容が伝わります。書くのは評価ではなく、起きたことです。
- できない日の頻度。「週に何回できないか」「1日のうち、いつの時間帯がつらいか」。日内変動や日による波は、1回の訪問では見えません。
- 直近1か月で起きた出来事。転んだ、道が分からなくなった、薬を飲み忘れた、鍋を焦がした。日付と一緒に書きます。
- 家族が実際に手を貸している場面。入浴の背中を洗う、着替えのボタンを留める、通院に付き添う、といった具体的な動作で書きます。
- 夜間の様子。トイレに起きる回数、眠れているか、夜中に電話をかけてくることがあるか。家族しか知らない情報です。
- 本人が「できる」と答えたが実際は違うこと。ここを紙に書いておくと、その場で言い争わずに済みます。
- 認知面の変化。同じ話を繰り返す、同じものを何度も買う、季節に合わない服を着る、といった観察をそのまま書きます。
コピーを1部取っておいてください。あとでケアマネジャーに親の状態を説明するとき、そのまま使えます。
遠方で立ち会えないときの手
遠くに住んでいて訪問日に行けないケースは珍しくありません。次のような手があります。どれも市区町村や調査員によって可否が変わるので、日程の連絡が来たときに相談してください。
- 日程を調整してもらう。帰省できる日に合わせてもらえることがあります。連絡が来た時点で「その日は不在です、〇日以降なら立ち会えます」と伝えるだけで動くことがあります。
- メモを事前に送る。市区町村の担当課に郵送またはファクスで届けておき、調査員に渡してもらえるか聞きます。
- 調査の時間帯に電話でつながる状態にしておく。調査員から家族へ電話で聞き取りをしてもらえる場合があります。
- ケアマネジャーや、すでに関わっているヘルパー、地域包括支援センターの職員に同席してもらえないか相談する。
離れて暮らす親の様子をふだんから記録に残しておくと、立ち会えないときに調査員へ渡すメモの材料になります。見守りの機器やサービスの選び方は見守り・認知症の介護用品にまとめました。
結果に納得できないときの選択肢
届いた要介護度が実態と合わないと感じたとき、取れる道は2つあります。どちらを選ぶかは、担当のケアマネジャーか市区町村の窓口に相談してから決めてください。
- 区分変更申請。心身の状態が変わったときに、有効期間の途中でも認定のやり直しを求める手続きです。実務ではこちらが使われる場面が多くなります。
- 審査請求(不服申立て)。都道府県に置かれた介護保険審査会に対して行うもので、期限が定められています。手続きの詳細は市区町村の窓口で確認してください。
どちらにしても、もう一度認定調査からやり直しになります。結果が変わる保証はありません。次の調査に向けて、前回の調査からあとに起きたことを記録しておくのが、いちばん実のある準備です。
ステップ5|結果を待つ間にもできることがある
「認定が出るまでは何も使えない」と思い込んで、1か月以上を空白にしてしまう家庭があります。実際には、待つ間に進められることがあります。ただしお金の面で気をつける点があるので、順に書きます。
暫定ケアプランという選択肢と、知っておくべきお金のリスク
認定の結果が出る前に、見込まれる要介護度を想定してケアプランを作り、サービスを先に使い始める方法があります。暫定ケアプランと呼ばれます。厚生労働省の資料にも、要介護認定の申請中に暫定ケアプランに基づく介護サービスの提供が可能であること、認定は申請日にさかのぼって効力を生ずることが注記されています。
ここに落とし穴があります。想定より軽い要介護度が出た場合、ひと月の上限を超えて使った分は全額自己負担になりえます。要介護2を見込んで組んだプランで、結果が要支援2だった、という取り違えが起きると、差額が家計に直撃します。だから実務では、想定より控えめに組むといった調整が行われます。
使うかどうかは、状況次第です。今すぐ介助の手が要るなら検討する価値がありますし、数週間なら待てるなら無理に使う必要はありません。どこまで保険の対象になるか、いくらの自己負担が発生しうるかは、ケアマネジャーと市区町村の介護保険担当窓口に必ず確認してください。運用は市区町村で違います。
出典:厚生労働省「要介護認定の認定審査期間について」(社会保障審議会介護保険部会 第115回・令和6年12月9日 資料2/mhlw.go.jp(PDF)/2026年8月24日参照)の現行制度の説明図に付された注記。実際に暫定ケアプランを使えるか、どの範囲が保険の対象になるかは個別の判断になるため、この記事では可否を断定していません。
福祉用具を自費で先に用意するときの注意
介護保険の対象になるのは、申請したうえで、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員が必要性を確認し、都道府県等の指定を受けた事業者から購入したものです。認定は申請日にさかのぼって効力を生じますが、認定結果が出る前に購入したものを支給の対象と認めるかどうかは市区町村の判断になります。申請より前に買ってしまうと、あとから保険が使えたはずのものを全額自費で買っていた、という取りこぼしが起きます。買う前に、市区町村の介護保険担当窓口とケアマネジャーに確認してください。
その一方で、今夜の安全のために必要なものはあります。手すりの代わりになる家具の配置、滑り止めマット、夜間の足元灯のように、保険の対象外でも今夜の転倒を減らせるものは先に用意して構いません。何が保険の対象で何が対象外かは歩行器・車椅子は買うのとレンタル、どっちが得?で整理しています。家の中の危ない場所から手を付けるなら実家の転びやすい場所7つと、帰省時10分チェックリストが使えます。
自費で先に入れるとき、介護ベッドのように隙間のできる大きな用具は、置き方の確認を省かないでください。消費者庁は令和2年9月16日の注意喚起で、事故情報データバンクに平成27年1月から令和2年7月末までの約5年間に介護ベッドの手すり等に関する事故が36件寄せられ、うち21件が死亡事故、11件が治療期間1か月以上の事故だったと公表しています。
出典:消費者庁「介護ベッドと柵や手すりとの間に首などが挟まれる事故に注意」(令和2年9月16日/caa.go.jp(PDF)/2026年8月24日参照)。事故情報データバンクは、消費者庁が国民生活センターと連携して運用する情報収集システムで、同資料は「事実関係及び因果関係が必ずしも確認されていない事例を含みます」と注記しています。特定の製品やメーカーの危険性を示す数字ではありません。同資料は、隙間を埋める対応品やカバーで隙間を埋めること、ベッド周りを整理すること、手元スイッチの置き場所と利用者の手足の位置を確認してから動かすことを挙げています。ケアマネジャーや福祉用具専門相談員が入る前に自費で導入する場合は、この点だけでも確認してください。
住宅改修は着工前の申請が原則。先にやるのは見積もりまで
手すりの取り付けや段差の解消は、介護保険の住宅改修費の対象になります。ただし、工事を始める前に市町村へ申請書類を出すのが原則です。厚生労働省の通知でも、被保険者は住宅改修を行おうとする前に申請書または書類の一部を市町村に提出することとされています。良かれと思って先に工事を済ませると、原則として支給の対象になりません。事後の申請を認める例外があるかどうかは市区町村の運用によるため、着工前に市区町村の介護保険担当窓口とケアマネジャーへ確認してください。
だから、待っている間にやるのは見積もりを取るところまでです。どこに手すりを付けるか、どの段差をなくすかを業者と相談し、金額を出してもらう。申請と着工は認定が出てからにします。工事の内容を決めるにあたっては、担当が決まったあとにケアマネジャーの意見が入るので、待つ間に契約まで進めないほうが手戻りが少なく済みます。
お金の全体像|結局いくらかかるのか
介護保険のお金の話は、性質の違う枠がいくつも重なっているので分かりにくくなっています。整理すると、覚えるのは4つです。
| 枠の名前 | 何を決める枠か | 期間の区切り | 確認する先 |
|---|---|---|---|
| 利用者負担割合 | サービス費のうち自分が払う割合(1割・2割・3割) | 8月1日から翌年7月31日 | 介護保険負担割合証 |
| 区分支給限度基準額 | ひと月に介護保険で使えるサービスの上限 | 月ごと | ケアマネジャー・市区町村 |
| 高額介護サービス費 | ひと月に払う自己負担額の上限 | 月ごと | 市区町村(該当すると案内が届く運用が多い) |
| 居宅介護住宅改修費 | 20万円 | 原則1回(例外あり) | 市区町村・ケアマネジャー |
| 特定福祉用具販売 | 10万円 | 4月1日から翌年3月31日 | 市区町村・福祉用具の指定事業者 |
※金額は本文の各項目に出典を付けています。制度の細部と実際の運用は市区町村で違うので、最終的な確認は親が住む市区町村の介護保険担当窓口へ。
自己負担割合(1割・2割・3割)と、毎年7月に届く負担割合証
介護保険のサービスを使ったとき、自分で払うのは費用の1割・2割・3割のいずれかです。65歳以上(第1号被保険者)は何割になるかが所得で決まり、市区町村から交付される「介護保険負担割合証」に書かれています。40〜64歳の第2号被保険者は、所得にかかわらず1割です。この証書は毎年7月中旬ごろに発送され、適用期間は8月1日から翌年7月31日までです。
所得の判定ラインは改定されうるので、この記事では金額の基準を書いていません。自分の親が何割かは、届いた負担割合証で確認するのが確実です。届いていない、なくした、という場合は市区町村の介護保険担当窓口へ。
出典:町田市「費用負担割合について(介護保険負担割合証)」(city.machida.tokyo.jp/ページ更新日2026年7月1日/2026年8月24日参照)。発送時期は市区町村の案内によるもので、自治体によって日程が前後することがあります。同ページは「第2号被保険者(40歳以上65歳未満)の方は1割となります」とも記載しています。負担割合が1割・2割・3割に分かれることは江東区「高額介護(介護予防)サービス費の支給」(city.koto.lg.jp/2026年8月24日参照)にも記載があります。
区分支給限度基準額。ひと月に保険で使える上限
介護保険では、要支援1から要介護5までの区分ごとに、ひと月に保険で使えるサービスの上限が決められています。これが区分支給限度基準額です。上限の中で使う分は1〜3割の自己負担で済み、上限を超えて使った分は全額自己負担になります。要介護度が重くなるほど、上限は大きくなります。
この上限は金額そのものではなく「単位数」で決められていて、1単位あたりの単価は地域やサービスの種類で違います。単位数は介護報酬の改定で変わるため、この記事では具体的な数字を書いていません。親のケースでひと月いくらまで使えるかは、担当のケアマネジャーが計算して示してくれます。ケアプランを見せてもらうときは、限度額に対して何割くらい使っているかを合わせて聞いてください。急に手が必要になったときに、あと何が足せるかが分かります。
高額介護サービス費。上限を超えた分は払い戻される
ひと月に払った自己負担が一定額を超えたとき、超えた分が払い戻される仕組みがあります。高額介護サービス費です。上限額は所得によって段階が分かれていて、住民税課税世帯で課税所得380万円未満の場合、世帯の上限は月44,400円です。それ以外にも段階があり、住民税非課税世帯などはさらに低い上限が設定されています。
ここで注意したいのは、この上限が介護サービスの自己負担についてのものだという点です。福祉用具の購入費や住宅改修費の自己負担、施設の食費・居住費などは対象外です。段階の区分は世帯単位のものと個人単位のものが混在しているので、自分の親がどの段階かは市区町村の案内で確認してください。
出典:江東区「高額介護(介護予防)サービス費の支給」(city.koto.lg.jp/ページ更新日2025年9月5日/2026年8月24日参照)。上限額は全国共通の基準ですが、掲載は江東区のページであり、段階の区分や申請の案内方法は市区町村ごとに確認が必要です。44,400円は第4段階(一般・課税所得380万円未満)の上限です。他の段階には世帯単位の上限と個人単位の上限があり、この記事では混同を避けるため一般の段階のみを挙げています。金額は制度改正で見直されることがあります。
住宅改修の20万円枠。原則1回、ただし例外が2つある
手すりの取り付け、段差の解消、滑りにくい床材への変更といった住宅改修には、要介護状態区分にかかわらず20万円の支給限度基準額が設定されています(介護予防住宅改修費も同額)。この枠を使い切ると、原則として再度の支給は受けられません。
ただし厚生労働省の通知は、例外を2つ定めています。
- 介護の必要の程度が著しく高くなった場合…最初に住宅改修費の支給を受けた住宅改修の着工時点と比べて、通知が定める「介護の必要の程度」の段階が3段階以上上がった状態で行った改修について初めて支給を受けるときは、それ以前に支給された額にかかわらず、改めて20万円までの支給を受けられます。ただし通知は「なお、この取扱いは1回に限られる。」と明記しています。二度三度と使えるものではありません。
- 転居した場合…支給限度額の管理は、現に居住している住宅に係る住宅改修費を対象としています。そのため転居した場合には、改めて支給限度基準額までの支給を受けることが可能になります。
「3段階以上」は、要介護1から要介護4へ、といった要介護状態区分そのものの差ではなく、通知が定める「介護の必要の程度」の段階(第一段階から第六段階)で数えます。読者が自分で段階差を計算して判断するところではありません。該当しそうだと思ったら、ケアマネジャーと市区町村の介護保険担当窓口に確認してください。あわせて、支給の方法(いったん全額払って後から戻る償還払いか、自己負担分だけ払う受領委任払いか)、必要書類、事前申請の期限も市区町村ごとに運用が違います。
出典:厚生労働省「居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について」(平成12年3月8日老企第42号/mhlw.go.jp/2026年8月24日参照)。着工前の申請、20万円の支給限度基準額、3段階以上の例外とその1回限りの取扱い、転居時の取扱いは、いずれも同通知の本文の記述です。実際に適用されるかどうかの判断は市町村が行います。介護保険の給付対象となる住宅改修の範囲は「介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて」(平成12年1月31日老企第34号)でも示されています(福祉用具・住宅改修に関する告示・通知等|厚生労働省/2026年8月24日参照)。
特定福祉用具販売の年10万円枠(4月1日から翌年3月31日)
腰掛便座や入浴補助用具のように、肌に触れたり使い回しに向かなかったりする用具は、レンタルではなく購入の対象です。これを特定福祉用具販売といい、介護度にかかわらず、同じ年度内(4月から翌年3月まで)で10万円が支給限度額です。自己負担割合に応じて、購入費の7〜9割の給付を受けられます。
ここには手続き上の条件が2つあります。購入先が都道府県等の指定を受けた販売事業者であること、そして支給方法が償還払い(いったん全額を払い、あとから申請して7〜9割が戻る)または受領委任払い(自己負担分だけ払う)であることです。先にネット通販で買ってしまうと対象にならないことがあります。買う前にケアマネジャーへ、が実際の順番です。
出典:江東区「介護保険特定福祉用具購入費の支給」(city.koto.lg.jp/ページ更新日2026年2月4日/2026年8月24日参照)。年度10万円という限度額は全国共通の基準ですが、掲載は江東区のページです。受領委任払いを実施しているかどうかなど、支給方法の運用は市区町村ごとに違います。対象種目は平成11年3月31日厚生省告示第94号で定められています(福祉用具・住宅改修に関する告示・通知等|厚生労働省/2026年8月24日参照)。
レンタルと購入のどちらになるかは、品目で決まっている
「これは借りるのか買うのか」は、家庭の判断ではなく制度で決まっています。車いす、特殊寝台(介護ベッド)、手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえなどはレンタル(福祉用具貸与)の対象種目で、腰掛便座や入浴補助用具などは購入(特定福祉用具販売)の対象種目です。対象種目は厚生省告示第93号(貸与)と第94号(販売)で定められています。
なお、要支援や要介護1のような軽度の人には、車いすや特殊寝台などの一部の種目が原則として貸与の対象外になります。ただし、認定調査の結果や医師の判断を踏まえたケアマネジメントを保険者(市区町村)が事前に確認した場合に、例外的に貸与が認められる仕組みがあります。「要介護1だから借りられない」と決めつけず、ケアマネジャーに相談してください。
出典:厚生労働省「福祉用具・住宅改修」(mhlw.go.jp)および「福祉用具・住宅改修に関する告示・通知等」(mhlw.go.jp)/いずれも2026年8月24日参照。軽度者への例外給付の運用は大田区「軽度者の福祉用具貸与 対象外種目の例外給付について」(city.ota.tokyo.jp(PDF)/2026年8月24日参照)を参照しました。自治体の資料であり、事前確認の手続きは市区町村で違います。
費用の比べ方をもう少し詳しく知りたい場合は歩行器・車椅子は買うのとレンタル、どっちが得?へ。用具そのものの選び方は歩行・移動の介護用品にまとめています。
ステップ6|ケアマネジャーが決まったら最初にやること
要介護1〜5の認定が出たら、居宅介護支援事業者と契約してケアマネジャーを決めます。要支援1・2なら、地域包括支援センターが介護予防のプランを担当します。事業者の一覧は市区町村や地域包括支援センターでもらえますが、どこがいいかを役所が推薦することはありません。実家に近いか、緊急時に動けるか、といった条件で家族が選ぶことになります。
初回面談で子が聞いておきたいこと
最初の面談は、親の状態を伝える場であると同時に、こちらが確認する場でもあります。次のことを聞いておくと、あとのやり取りが早くなります。
- 担当してもらえる曜日と時間帯。緊急時に連絡が取れるのは誰か、事業所の営業時間外はどうなるか。
- 親の要介護度で、ひと月にいくらまで使えるか。今のプランはそのうち何割を使っているか。
- 今のプランで、家族がやることとして残っている部分はどこか。ここが曖昧だと、気づかないうちに家族の負担が増えます。
- 状態が変わったとき、プランの見直しはどのくらいの早さでできるか。
- 使えるのに今は入れていないサービスは何か。理由もあわせて。
- 親の希望と家族の希望が食い違ったとき、どちらを優先する方針か。
要介護度が出た時点で、認定調査のときに作ったメモが役に立ちます。同じ内容をもう一度話さずに済むぶん、面談の時間を今後の相談に使えます。
連絡手段と頻度を最初に決めておく
離れて暮らしていると、ここを決めておかないと情報が来なくなります。電話なのかメールなのか、何かあったときだけ連絡するのか、月に一度は様子を知らせてもらうのか。日中に電話に出られない仕事なら、それも先に伝えておいてください。折り返しがつかないまま日が過ぎると、親の状態が変わったことに家族だけが気づかないまま時間が過ぎます。
親の家に連絡ノートを置いて、ヘルパーやデイサービスの記録を家族も読めるようにする方法もあります。帰省したときに、その1冊を見れば数か月分の様子が分かります。
相性が合わないと感じたときは変更できる
ケアマネジャーは変更できます。事業所の中で担当を替えてもらう方法と、事業所ごと変える方法があります。手続きは市区町村や地域包括支援センターに相談してください。
ただし、変えれば解決するとは限りません。連絡が来ないことに困っているなら連絡の頻度を、提案が少ないと感じるなら何を求めているかを、まず言葉にして伝えてみてください。言っていないことは、伝わっていません。それでも噛み合わないときに、変更という手があると知っておけば十分です。
やりがちな回り道
ここまでの順番どおりに進めば、たいていは足りています。それでも遠回りになりやすいところが、いくつか決まった形であります。
制度を全部理解してから動こうとして、時間を溶かす
介護保険は、要介護度が7区分あり、サービスの種類が数十あり、限度額と負担割合と払い戻しの仕組みが別々に動いています。これを事前に理解しきるのは、ほぼ無理です。そして、理解したところで、親に関係するのはそのうちのごく一部です。
先に電話をかけて申請してしまえば、必要な知識は工程ごとに必要な分だけ入ってきます。認定調査の直前には調査の話を、結果が出たら限度額の話を。制度は、自分の家に当たった部分だけ覚えれば足ります。
親の「まだ大丈夫」で申請を先送りする
本人が嫌がることは珍しくありません。介護保険を使うことが「年寄り扱いされる」と受け取られるからです。ここで押し切ろうとすると関係がこじれ、認定調査の日にも協力が得られなくなります。
ただ、先送りには具体的な代償があります。厚生労働省の集計では、申請から二次判定までに全国平均で40.2日かかっています(令和4年度下半期)。結果の通知が届くのは、そのあとです。ただし日数は市区町村で大きく違い、暫定ケアプランを使えば結果を待たずに始められる場合もあります(→ ステップ5)。それでも、転倒や入院は待っている間にも起こります。認定を受けても使わないという選択ができることを先に伝え、「使うかどうかは後で決めればいい」と持ちかけると、本人が「介護される人」と決めつけられたと受け取らずに済みます。
兄弟に相談せず、一人で抱える
近くに住んでいる、時間の融通が利く、といった理由で、自然に一人へ寄っていきます。そのまま数か月が過ぎると、やっている側には疲れが、やっていない側には状況が見えないままの距離が残ります。
役割は、必ずしも介護そのものである必要はありません。費用を分担する、書類の手続きを引き受ける、月に一度電話をかける、といった形でも構いません。大事なのは、いま何が起きているかを同時に知っている人が2人以上いることです。ケアマネジャーからの連絡を家族のグループチャットに転記するだけでも、あとの「聞いていない」が減ります。
親が元気なうちに、預貯金や保険、契約の「置き場所」を共有しておく話は、親が元気なうちに聞いておくことにまとめています。介護が始まってからでは切り出しにくくなる話題です。
よくある質問
親が申請を嫌がっています。どうすればいいですか
本人の意向を無視して進めることはできません。要介護認定の申請は本人の申請が前提で、認定調査にも本人の協力が要ります。まず地域包括支援センターに「本人が乗り気ではない」とそのまま伝えて相談してください。第三者から説明してもらうことで受け入れられる場合があります。伝え方としては、認定を受けることとサービスを使うことは別で、認定が出ても使わないという選択ができる、という点を先に話すのが角の立たないやり方です。介護保険料はすでに払っているものなので、その話から入る家庭もあります。急がせる理由としては、申請してから審査が終わるまでに全国平均で40.2日かかっているという実測値があります(厚生労働省・令和4年度下半期)。
遠方に住んでいます。何から始めればいいですか
電話1本から始められます。かける先は、親が住民登録をしている市区町村の地域包括支援センターです。子が離れて暮らしていても相談できます。帰省の予定が決まっているなら、その日程を先に伝えてください。認定調査の日程をそこに合わせてもらえることがあります。立ち会えない場合でも、普段の様子を書いたメモを事前に市区町村へ届けて調査員に渡してもらう、調査の時間帯に電話でつながるようにしておく、といった方法を相談できます。申請を郵送やオンラインで出せるかは市区町村で違うので、あわせて確認してください。地域包括支援センターに申請の手続きを代わってもらう方法もあります。
認定が「非該当」だったら、何も使えないのですか
介護保険の給付は使えませんが、市区町村が行う介護予防・日常生活支援総合事業を利用できる場合があります。要支援の認定を受けていなくても、基本チェックリストによって事業対象者とされた人が総合事業のサービスを使える仕組みがあり、厚生労働省のガイドラインにも位置づけられています。何が実施されているか、対象になる条件、自己負担額は市区町村ごとに違うので、地域包括支援センターか市区町村の高齢者福祉の窓口で確認してください。また、状態が変われば改めて申請できます。非該当という結果は、その時点の判断です。
入院中でも申請できますか
入院中の申請を受け付けている市区町村は多く、退院後すぐにサービスを使いたい場合はむしろ入院中に動き始めることになります。ただし、状態が安定していない時期に認定調査を受けると、退院後の生活とかけ離れた状態で判定される可能性があります。この見極めは家族には難しいので、病院の地域医療連携室や医療ソーシャルワーカーに相談してください。入院中の患者と地域の介護をつなぐのが、その部署の仕事です。認定調査を病室で行えるか、退院の見通しをどう伝えるかも含めて、市区町村の介護保険担当窓口と病院の両方に確認してから進めるのが確実です。
要介護認定の結果が出ないまま30日が過ぎました。放っておいていいですか
まず、延期の通知が届いていないかを確認してください。介護保険法は、特別な理由がある場合に処理見込期間と理由を通知したうえで処分を延期できると定めています。通知が来ているなら、その期間を待つことになります。通知もないまま30日を過ぎている場合は、市区町村の介護保険担当窓口に電話して、申請日と本人の氏名を伝え、いまどの工程で止まっているかを聞いてください。認定調査がまだなのか、主治医意見書を待っているのか、審査会待ちなのかで、見込みが変わります。なお、同法には、30日以内に処分がされず延期の通知もないときは申請が却下されたものとみなすことができるという定めもあります。これは審査請求に進むための仕組みで、最初の一手として使うものではありません。
要介護認定の結果を待っている間、サービスは使えませんか
暫定ケアプランを作ってサービスを先に使い始める方法があります。厚生労働省の資料にも、要介護認定の申請中に暫定ケアプランに基づく介護サービスの提供が可能であること、認定は申請日にさかのぼって効力を生ずることが注記されています。ただし、想定より軽い要介護度が出た場合、ひと月の上限を超えた分が全額自己負担になりえます。使うかどうか、どの範囲までなら安全かは、ケアマネジャーと市区町村の介護保険担当窓口に確認してから決めてください。福祉用具を自費で先に買う場合は、申請より前に買ったものは介護保険の対象にならない点、認定結果が出る前に買ったものを対象と認めるかは市区町村の判断になる点、特定福祉用具販売は都道府県等の指定を受けた事業者から購入したものに限られる点に注意してください。住宅改修は着工前の申請が原則なので、待つ間にできるのは見積もりまでです。