親の食事が心配になったら。介護食を買う前に決めること
帰省して、むせる・残す・痩せた、に気づいた人へ
PR本ページはプロモーション(広告)を含みます。製品の評価・順位は収益で変えていません。運営・選定方針
正月に帰省して初めて気づいた、という書き込みをよく見かけます。餅に手を出さなくなった、食卓で咳き込む回数が増えた——年に数回しか会わない家族には、こういう変化が前回との差としてまとめて見えます。ところが「介護食」で検索して出てくるのは、とろみ剤とレトルトの一覧です。うちの親に何が要るのかは、そこには書かれていません。この記事は、買い物より前の順番を決めるための記事です。むせ方や体重の減り方によっては、道具をそろえるより先に受診が要ります。数値には出典と参照日を添え、制度の判断は窓口へ渡す書き方にしています。
先に結論
- 最初に決めるのは「何を食べさせるか」ではなく、受診が先か、家の工夫が先かです。むせが続く・体重が減っている・熱を出した、のどれかがあれば、道具を買う話ではありません。
- 家族に用意できるのは、観察の記録です。診断は医師の仕事です。飲み物と固形物のどちらでむせるか、食後に声がかすれるか、一食に何分かかっているか。これがそのまま受診のときの材料になります。
- 食形態は家族の判断で下げないでください。刻んでも食べやすくなるとは限らず、とろみも濃くすれば安全になるものではありません。段階を決めるのは医師・歯科医師・言語聴覚士・管理栄養士です。
- 市販品を選ぶ共通のものさしがUDF(ユニバーサルデザインフード)の4区分です。数字が大きいほどやわらかい、と覚えれば売り場で迷いません。
- 自助食器やスプーンは介護保険の対象種目に挙がっておらず、原則として自己負担です。配食は介護保険の給付ではありませんが、市区町村の事業として実施されている地域があります。 → 変化別の一覧表を見る
帰省して気づく、親の食事の変化
同居していると毎日の小さな変化は見えません。逆に、離れて暮らす家族は前回の帰省との差で気づきます。ここでは、実際に相談として書き込まれている4つの変化を挙げます。どれも、それ単体では老化とも不調とも判断がつかないものばかりです。
食事中にむせるようになった
お茶を飲んだ拍子に咳き込む。味噌汁で軽くむせて、そのまま話を続ける。本人は「変なところに入っただけ」と言い、家族も一度なら気に留めません。気になり始めるのは、それが一食に何度も起きたときです。
むせは「飲み込む力が落ちている合図かもしれない」というだけの情報で、原因を家族が言い当てることはできません。ここで押さえておきたいのは、むせているかどうかより、何でむせているかです。水やお茶などのさらさらした液体でむせるのか、ごはんやパンなど固形物でむせるのか。この違いは、あとで医師に伝えるときの材料になります。
食べる量が減って、痩せてきた
Yahoo!知恵袋には「1年ぶりに会いに行ったらゲッソリ痩せていました。体重を測ったら10kgも痩せてました」という投稿があります。同じ人は、ヘルパーに聞いても「普段と何も変わらない」と言われたとして、「こんなに痩せても気づかないものですか?」と書いています。別の投稿では、70代の父親について「この1年程で、急に父が痩せてしまい心配しています。少なくとも10キロは落ちたようです」「頬もコケてしまっています」と書かれています。
毎日会っている人ほど、体重の減り方には気づきにくい。数か月ぶりに会う家族のほうが先に気づくのは、珍しいことではありません。「歳だから」で片づける前に、いつと比べてどれだけ減ったのかを数字にしてください。体重計がない実家なら、ベルトの穴の位置や指輪の緩み方でも、変化の大きさは伝わります。
食べ終わるまでの時間が長くなった
盛った量は変わらないのに、家族が食べ終わってからも親だけ食卓に残っている。噛む回数が増えたのか、飲み込むのに時間がかかっているのか、途中で疲れて箸が止まっているのか。外からは同じ「遅い」に見えますが、中身は別物です。
時間の変化は、家族が数えられる数少ない手がかりです。一食に何分かかったかを2〜3回分メモしておくと、受診したときに「最近は40分くらいかかります」と具体的に言えます。
硬いものを残すようになった
肉が皿に残る。漬け物に手をつけない。餅を配っても取らない。本人は「好みが変わった」と説明することが多く、家族もそう受け取ります。ただ、噛む力が落ちたり入れ歯が合わなくなったりしたとき、人はまず硬い食べ物を献立から静かに外します。「嫌いになった」と「食べられなくなった」は、食卓では同じ光景に見えます。
食べこぼしが増えることもあります。介護の相談サイトには「最近、父の食事の仕方が汚くなりました。どうすれば本人も傷つく事なく角もたたずに注意出来るのでしょうか?」という相談が投稿されています。こぼす量が増えたのは、手元が狂っているのか、口に運ぶまでの姿勢が崩れているのか、単に器が合っていないのか。本人を注意する前に、何が起きているかを見るほうが早く済みます。
その変化を、様子見にしないほうがいい理由
脅かすつもりはありませんが、食事の話は他の生活動作と少し違います。理由になる数字を2つ、何年の・誰を数えた統計なのかを明記して挙げます。
誤嚥性肺炎は全年齢の死因で第6位(令和7年=2025年の概数)
厚生労働省の令和7年(2025年)人口動態統計月報年計(概数)で、誤嚥性肺炎は死因順位の第6位です。死亡数は64,396人、死亡率(人口10万対)は53.9で、全死亡者に占める割合は4.1%。第5位の肺炎は84,013人・70.4です。
順位そのものより、この統計に「誤嚥性肺炎」という項目が独立して立っていることのほうが意味を持ちます。食べ物や唾液が気管に入ることは、統計に載る規模で起きています。だからといって、むせている親がすぐそうなるという話ではありません。むせを様子見にしないほうがいい理由として読んでください。
餅による窒息死は1月に集中している(消費者庁の集計・2018〜2019年)
消費者庁の集計では、65歳以上で「餅」または「もち」を含む窒息事故で亡くなった人は、平成30年(2018年)が363人、令和元年(2019年)が298人で、2年間の合計は661人。事故が起きた月は1月に集中し、282件で全体の43%を占めています。正月三が日だけで127件(19%)、元旦だけで67件(10%)です。
帰省と重なる時期に集中しているので、実家に着いてから慌てないよう、餅を出すかどうかは行く前に決めておくと揉めません。ただし、危ないのは餅だけではありません。東京消防庁は、食品による窒息事故の原因として、おかゆ類・餅・御飯といった主食類が多いことを示しています。餅を出さなければ安心、というわけではありません。
同庁の管内では、餅などをのどに詰まらせて救急搬送された人が令和2年から令和6年までの5年間で338人。その9割以上が65歳以上で、月別では1月が135人、12月が42人と、この2か月で全体の半数以上を占めます。年代別では80歳代が最も多く、搬送された人の約7割が中等症以上と診断されています。
最初に決めるのは「受診が先か、家の工夫が先か」
ここが記事の中心です。介護食の売り場に行く前に、この切り分けを済ませてください。順番を逆にすると、道具を買った安心感で受診が遅れます。
受診を先にしたほうがいい様子
次のような様子があるときは、食器やとろみ剤の検討より先に、かかりつけ医に相談してください。いずれも、家庭の工夫で押し戻せる範囲を超えている可能性がある変化です。
- むせが一時的ではなく、毎日の食事で繰り返し起きている。
- 体重が落ちている。とくに、本人が食事を減らした覚えがないのに減っているとき。
- 熱が出た。食後にぐったりする、微熱が続く、といった様子があるとき。
- 食事の途中でむせ込んで、しばらく咳が止まらないことがある。
- 飲み込んだあとに声がかすれる、痰がからんだような声になる。
- 薬を飲み込みにくそうにしている。錠剤が口の中に残っている。
家族が見て伝えられる観察メモ
受診したとき、医師が知りたいのは「心配です」ではなく、いつから何がどう変わったかです。診断は書けませんが、観察の記録は家族にしか作れません。帰省中にメモしておくと役に立つのは、次のようなことです。
- 飲み物でむせるのか、固形物でむせるのか。両方ならどちらが多いか。
- 一食にかかった時間。2〜3回分あれば十分です。
- 食後の声の変化。食べる前と後で、声がかすれていないか。
- 残した物の傾向。硬い物か、水分の多い物か、それとも量そのものが減っているのか。
- 食べこぼしの増え方と、こぼす場面(すくうとき/口へ運ぶ途中/口から)。
- 体重。測れないなら、服やベルトの緩み方でもかまいません。
- 入れ歯を使っているなら、最後に歯科で見てもらったのはいつか。
親の前でメモを取るのが気まずければ、その日の夜にスマートフォンへ書き留めるだけで十分です。数か月後に「あのとき何分かかっていたか」を思い出すのは、まず無理です。
むせ・体重減少・発熱は、道具を買っても解決しない
とろみ剤も、やわらかいレトルトも、すくいやすい皿も、食べる動作を助ける道具であって、原因を治す物ではありません。むせの背景に飲み込む機能の低下があるなら、それを評価できるのは医療職です。体重が落ちている背景に別の病気があるなら、なおさらです。
それでも道具の話が先に来てしまうのは、家族にとってそれが今すぐできる唯一のことに見えるからだと思います。実際、遠方に住んでいれば、明日病院に連れて行くことはできません。だからこそ、順番だけは決めておいてください。受診の予約と、家で試すことは、同時に進めて構いません。やってはいけないのは、道具で様子を見ているうちに受診の話が消えることです。
相談先の地図|誰が何を判断するのか
食事の相談先は、他の介護の悩みより分かれています。「とりあえずケアマネジャー」で済まないのは、噛む力と飲み込む力を診る人が別にいるからです。
かかりつけ医(まずここ)
入口はかかりつけ医です。むせ・体重減少・発熱をひとまとめに相談できて、必要なら耳鼻咽喉科やリハビリテーション科へつないでもらえます。持病や服薬の内容を把握している人が判断するのが、いちばん間違いが少ない。実家から遠くて付き添えないなら、観察メモを本人に持たせるか、あらかじめ電話で伝えておく方法もあります。
歯科・摂食嚥下の専門外来(噛む力と飲み込みを診る)
硬い物を残すようになった、食べこぼしが増えた、というときは、入れ歯の適合や残っている歯の状態が関わっていることがあります。ここは歯科の領域です。通院が難しい場合、訪問診療に対応している歯科もあるので、対応の可否は歯科医院に直接確認してください。飲み込みそのものを詳しく診てもらいたい場合は、摂食嚥下の専門外来を設けている医療機関もあります。
管理栄養士(介護保険で自宅に来てもらえる場合がある)
介護保険の居宅サービスには「居宅療養管理指導」があり、通院が困難な利用者に対して、医師の指示にもとづき管理栄養士が居宅を訪問して栄養管理・栄養指導を行う類型が置かれています。配食そのものは介護保険の給付ではありませんが(後述)、栄養の相談は介護保険のサービスとして受けられる場合があります。
ケアマネジャー・地域包括支援センター(制度の入口)
すでに要介護認定を受けているなら担当のケアマネジャーへ。まだ認定を受けていないなら、実家のある地域の地域包括支援センターが入口になります。ここは医療の判断をする場所ではなく、使える制度とサービスを組み立てる場所です。「食事が心配」で止めずに、「水でむせるようになった」「3か月で5kg減った」と具体的に伝えてください。伝わる情報の量で、出てくる提案が変わります。
要介護認定の手続きから知りたい場合は、親の介護、何から始める?最初の手続きまとめにまとめています。
一覧表|気づいた変化 × まず相談する先 × 家で試せること × 介護保険の扱い
親に当てはまる行だけを見てください。表は左から順に「気づいたこと → 誰に相談するか → 家でできること → お金の扱い」と読むように並べています。重要度順ではありません。道具は3列目にしか出てきません。
| 気づいた変化 | まず相談する先 | 家で試せること | 介護保険での扱い |
| 水やお茶でむせる | かかりつけ医(必要に応じて耳鼻咽喉科・リハビリテーション科へ) | 一口の量を少なくする/ゆっくり食べる | 受診は医療保険。とろみ調整食品は自費 |
| ごはんやパンでむせる・口の中に残る | かかりつけ医と歯科(入れ歯の適合、噛む力) | 食べにくい物を書き出しておく | 歯科受診は医療保険。訪問診療の可否は歯科医院へ |
| 食べる量が減った・体重が落ちた | かかりつけ医。認定があればケアマネジャーにも | 一食を小さくして回数を増やす/栄養補助ドリンクを足す(持病で食事の指示が出ている場合は、足す前にかかりつけ医か管理栄養士へ) | 管理栄養士の訪問(居宅療養管理指導)は介護保険のサービス。医師の指示が前提 |
| 食べ終わるまでの時間が長い | かかりつけ医・歯科 | 一食にかかった時間を2〜3回分メモ | 食器・スプーンは自費 |
| 食べこぼしが増えた | ケアマネジャー(いなければ地域包括支援センター) | すくいやすい形の皿/持ち手の太いスプーン/滑らないマット | 自助食器・自助スプーンは対象種目に挙がっていない(原則自費) |
| 硬い物を残すようになった | 歯科 | UDF区分表示のある市販品で、やわらかさの段階を試す | 市販の介護食は自費 |
| 買い物・調理がつらくなってきた | ケアマネジャー・地域包括支援センター | 市販のやわらか食を常備/配食を試す | 配食は介護保険の給付ではないが、市区町村の事業として実施されている地域がある。食材費は自己負担 |
| 水分をとらない・脱水が心配 | かかりつけ医 | 手の届く場所に飲み物を置く/食事以外の時間にも飲む場面を作る | 飲料は自費 |
| 熱が出た・食後にぐったりする | すぐにかかりつけ医(休日夜間は地域の相談窓口へ) | 道具で対応する場面ではありません | 医療保険 |
食形態の段階と、家族が独断で下げてはいけない理由
介護食の説明でよく出てくるのが、食べやすさの段階です。全体像を知っておくのは役に立ちますが、この階段を家族が勝手に下ろすのは危険だ、というのがこの節の主旨です。
普通食 → 軟菜食 → やわらか食 → ミキサー食・とろみ付き、という並び
おおまかには、普通の食事から、煮込んでやわらかくした食事、形は残しつつ舌でつぶせる程度にした食事、なめらかにしたものやとろみをつけた飲み物、という順に並びます。段階が進むほど、噛む・飲み込むの負担は減ります。
ただし、負担が減るぶん、食べる楽しみと、見た目から得られる情報も減ります。見た目で何を食べているか分からなくなると、食欲そのものが落ちることがあります。「安全のために全部ミキサーへ」という方向へは誘導しません。必要な段階を、必要な分だけ下ろす。それを決めるのは専門職です。
「刻めばいい」ではない(学会分類2021が言っていること)
硬い物が食べにくそうだから細かく刻む。家庭でいちばん自然に出てくる工夫ですが、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の「嚥下調整食分類2021」は、そこに注意を向けています。同分類のQ&Aは、刻んだものが上下の歯槽堤間で押しつぶせないほど硬い場合や、あんのとろみが薄すぎる場合は、嚥下調整食として適切ではないとしています。さらに、「刻み」や「ミキサー」という呼称は調理手技に過ぎず、できあがったものの物性で判断すべきであるとも述べています。
つまり、刻むという手技そのものは食べやすさを決めません。決めるのは、できあがったものが口の中でまとまるかどうかです。刻んだだけでばらばらのままなら、口の中でまとまらず、飲み込みにくいものが増えることになります。「刻み食は誤嚥を増やす」と言い切れる話ではありませんが、刻めば安全になる、とは言えません。
とろみは3段階。「濃いとろみ」は重度の人向け
同じ学会分類2021では、とろみを段階1「薄いとろみ」/段階2「中間のとろみ」/段階3「濃いとろみ」の3つに分けています。名前のとおり段階3がいちばん濃く、これは重度の嚥下障害の症例を対象とした段階です。家族が「心配だからもう少し濃く」と足していく先にある段階ではありません。
マニュアルには、濃いとろみをとろみ調整食品で調整する場合、製品の種類によっては付着性などが増強して、かえって嚥下しにくくなることがあると書かれています。濃くすれば安全、という方向には進みません。
家庭でできるのは、指示された段階を、毎回同じ濃さで作ることです。とろみ調整食品は製品ごとに使う量が違い、入れる量と混ぜ方で濃さが変わります。計量スプーンを袋と一緒に置いておけば、目分量にならずに済みます。
市販品を選ぶときの共通のものさし|UDFの4区分
介護食の売り場に行くと、パッケージに数字やマークが並んでいます。ここを読めるようになると、選ぶ時間がかなり短くなります。
区分1「容易にかめる」から区分4「かまなくてよい」まで
ユニバーサルデザインフード(UDF)は、次の4区分です。数字が大きいほどやわらかい、という向きだけ間違えなければ使えます。
- 区分1「容易にかめる」
- 区分2「歯ぐきでつぶせる」
- 区分3「舌でつぶせる」
- 区分4「かまなくてよい」
区分名そのものが、必要な口の動きを説明しています。歯ぐきでつぶせる程度なのか、舌だけでつぶせる必要があるのか。親の様子と付き合わせれば、売り場で手に取る棚が決まります。
実際の商品では、たとえばキユーピーの「やさしい献立」シリーズが区分1〜4に対応した品ぞろえを公開しており、同じシリーズの中で段階を上下できます(キユーピー公式サイトの商品ラインアップ/2026年8月24日参照)。まず1〜2種類を試して、本人が食べきれるかを見るのが現実的です。
スマイルケア食(農林水産省)はUDFとは別の分類
もう1つ見かけるのが、農林水産省のスマイルケア食です。こちらは、噛む・飲み込むに問題はないが栄養補給が必要な人向けの青、噛むことに問題がある人向けの黄、飲み込むことに問題がある人向けの赤という3系統でできています。
紛らわしいのですが、UDFとスマイルケア食は別々の仕組みです。どちらが上位ということもなく、対応関係も公式には示されていません。換算表も作れません。売り場で両方の表示を見かけたら、その商品が採用しているほうの表示で読む、と割り切ってください。
食べる量が減ったとき|少量高カロリーという考え方
量が減っている親に「もっと食べて」と言っても、食べられる量は増えません。方向を変えて、同じ量でどれだけ栄養が入るかで考えます。
栄養補助ドリンクをどう位置づけるか
少ない量でエネルギーやたんぱく質を補える飲料が、ドラッグストアや通販で買えます。1本125mlといった小さい容量のものもあり(明治「メイバランスMini」など)、食事のあとに少しだけ足す、朝食が進まない日に置き換える、といった使い方ができます。
ただし、これは食事の代わりに据える物ではありません。位置づけとしては、足りない分を埋める補助です。糖尿病や腎臓の病気で食事の指示が出ている場合、勝手に足すと指示の内容とぶつかることがあります。持病があるなら、かかりつけ医か管理栄養士に「これを足してもよいか」を確認してから始めてください。
- 味は好みがはっきり出ます。同じシリーズでも、飲みきれる味とそうでない味に分かれます。まとめ買いの前に、1本ずつ買える店で試すほうが無駄になりません。
- 常温で飲めるか、冷やす必要があるか。一人暮らしの実家では、冷蔵庫の出し入れが1つ増えるだけで続かなくなります。
- 開けやすさも見ておいてください。握力が落ちていると、キャップやストローが本人の手に負えないことがあります。
毎食手作りを前提にしない
介護食の記事を読むと、だしを取る、裏ごしする、といった手順が並んでいます。同居していて時間があるなら選択肢になりますが、離れて暮らす家族には、そもそも作る場面がありません。作れるのは帰省中の数日だけです。
実際に投稿されている悩みを見ても、多くは誰が用意し続けるのかに集まっています。調理の技術の話が出てくるのは、そのあとです。「安くておいしい親向けの宅食を探している」という相談が知恵袋に上がっているのも、同じ理由からでしょう。市販のレトルトや配食を使うのは手抜きではありません。続けられる形を選んでいるだけです。
それに、本人が自分で食べたいと思う物を食卓に置くと、結果として食べる量が増えます。栄養価の設計は市販品に任せて、家族は「何なら食べたか」を見る側に回るという分担も成り立ちます。
水分の落とし穴|とろみをつけたあとに見落とされること
むせ対策で飲み物にとろみをつけると、そこで見落としが起きます。とろみのついた飲み物は、さらさらした水より飲みきるのに手間がかかるので、本人が途中でやめてしまうことがあります。とろみをつけることになったら、むせの回数だけでなく、一日にどれだけ飲めたかもあわせて見てください。
飲む場面を数えるほうが確実です。起きたとき、食事のたび、薬を飲むとき、風呂上がり、寝る前。回数で組み立てると、本人も家族も把握しやすくなります。手の届く場所に置いておく、蓋が開けやすい容器にする。こうして環境を先に整えておくと、飲む回数が増えます。
なお、とろみをつけるかどうか自体が、家族の判断で決めることではありません。前の章のとおり、段階を決めるのは専門職です。
経口補水液は病者用食品。買い置きの前に確認すること
脱水が心配なとき、家庭で常備されることが多いのが経口補水液です。ただし、値段を見る前に製品の区分を知っておいてください。
OS-1(オーエスワン)は、消費者庁の許可を受けた特別用途食品(個別評価型病者用食品)です。製造元の大塚製薬工場は、2004年12月に表示許可を取得したとしています。だれもが日常的に飲む清涼飲料ではありません。メーカーのよくある質問にも、「脱水症でない場合には、オーエスワンを飲む必要はありません」「医師、薬剤師、看護師、管理栄養士、登録販売者の指導に従ってお飲みください。医師からナトリウムやカリウムの摂取量の制限を指示されている方は、必ず医師にご相談ください」と書かれています。1日の摂取目安量も示されていて、学童から高齢者までは500〜1000mL/日です。買っておくかどうか、どんなときに飲ませるかは、かかりつけ医に確認してください。
そのうえで買い置きするなら、まとめ買いの価格には幅があるので、1本あたりいくらかに直すと比べやすくなります。
実例として、大塚製薬の公式通販「オオツカ・プラスワン」では、「OS-1(オーエスワン)500mlペットボトル×24本」が税込5,184円で、1本あたり216円です(2026年8月24日、メーカー公式通販での価格)。同じ製品名でも容量違いのSKUが複数あるので、注文画面では本数だけでなく容量まで見比べてください。この章の下のカードで挙げている楽天市場の店舗では、同じ500ml×24本が2026年8月24日時点で税込4,350円(1本あたり181円)でした。価格は販売店・時期で変わるので、注文画面で必ず確認してください。
水分が明らかにとれていない、ぐったりしている、といったときは、飲料を足して様子を見る場面ではありません。受診してください。
家で試せる道具を、困りごとごとに1つずつ
ここまでの順番を踏まえたうえで、家で試せる物を挙げます。編集部は実物を試しておらず、点数もつけていません。どれも受診の代わりにはならないという前提で読んでください。
むせる
🥄
濃さを毎回そろえる:とろみ調整食品
段階は専門職に決めてもらってから
向いている場面- 医師や言語聴覚士から、とろみの段階を指示されている
- 家族が交代で用意するので、濃さがぶれやすい
気になる点- 製品ごとに使う量が違う。買い替えで濃さが変わることがある
- 濃くすれば安全になる物ではない
とろみの段階は、学会分類2021で薄い・中間・濃いの3つに分かれています。濃いとろみは重度の嚥下障害の人を対象とした段階で、家族が心配して足していく先にあるものではありません。選ぶときは、溶かす対象(水・お茶・味噌汁・牛乳)と、1回に使う量の表示を見てください。明治「トロメイクSP」800g(JAN 4902705017290)のように、メーカー公式サイトに製品情報が載っているものは、内容量と型番を確認しやすくなります。
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硬い物を残す
🍱
段階を試せる:UDF区分表示のあるレトルト
区分1〜4/数字が大きいほどやわらかい
向いている場面- 硬い物を残すようになったが、どの程度なら食べられるか分からない
- 帰省中に何種類か試して、常備する物を決めたい
気になる点- 1食分が少なめの物もある。量が足りるかは中身の表示で確認
- 味の好みが合わないと、そのまま残る
パッケージのUDF区分を見れば、必要な口の動き(歯ぐきでつぶせる/舌でつぶせる)で選べます。同じシリーズの中で区分をまたいで買えると、合わなかったときに一段だけ動かせて無駄になりません。キユーピー「やさしい献立」は区分1〜4のラインアップを公式サイトで公開しています。まずは2〜3種類から。
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量が減った
🥤
少ない量で足す:栄養補助ドリンク
1本125mlなど、小さい容量から
向いている場面- 一食の量が減って、体重が落ちてきた
- 朝は食が進まないが、飲み物なら口にする
気になる点- 持病の食事指示とぶつかることがある
- 味の好みが割れる。まとめ買いは合う味を決めてから
足りない分を埋める補助として使います。食事の置き換えには向きません。持病があって食事の指示が出ているなら、足す前にかかりつけ医か管理栄養士へ。買うときは、フレーバーが1種類の箱なのか、複数の味が混ざったアソートなのかで内容も価格も変わります。箱の構成を注文画面で確認してください。
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こぼす
🍽️
すくう動作を助ける:自助食器・自助スプーン
介護保険の対象種目に挙がっていない(原則自費)
向いている場面- 皿の中で食べ物を追いかけて、こぼしている
- スプーンの柄が細くて持ちにくそう
気になる点- 介護用の見た目を本人が嫌がることがある
- 手の状態に合うかは、実際に持たせてみないと分からない
縁が立ち上がった皿は、スプーンで食べ物を寄せられる形に作られています。持ち手を太くしたスプーンも売られていますが、本人の手に合うかどうかは、実際に持たせてみないと分かりません。食事の道具は介護保険の対象種目に挙がっていないため、購入費は原則として自己負担です。ただし市区町村が独自に行う給付の対象になる場合があるので、地域包括支援センターか市区町村の窓口で確認してください。買う前に、いま使っている食器のどこで手が止まっているかを見ておくと選びやすくなります。
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水分
💧
備えるなら医師に確認:経口補水液
特別用途食品(病者用食品)。容量と本数を確認してから買う
向いている場面- 夏場や発熱時の備えとして、実家に置いておきたい
- 発熱・下痢・嘔吐のときの備えとして、かかりつけ医から飲ませてよいと言われている
気になる点- 容量違いのSKUが複数あり、価格を比べにくい
- 飲ませ方の判断は家族ではできない
OS-1(オーエスワン)は消費者庁の許可を受けた特別用途食品(個別評価型病者用食品)で、清涼飲料の置き換えではありません。メーカーも「脱水症でない場合には、オーエスワンを飲む必要はありません」「医師、薬剤師、看護師、管理栄養士、登録販売者の指導に従ってお飲みください」と案内しています。買い置きするかどうか、どんなときに飲ませるかは、かかりつけ医に確認してください。同じ製品名で容量の違う箱があるので、注文画面では本数だけでなく容量まで確認を。実売価格は水分の章に出典と参照日つきで書いています。水分がとれていない、ぐったりしているときは、飲料を足して様子を見る場面ではありません。受診してください。
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介護保険で使えるもの・使えないもの
食事まわりは、他の介護用品と制度の当たり方が違います。「福祉用具=介護保険」という感覚で買いに行くと、ここで戸惑います。
自助食器・自助スプーンは対象種目に挙がっていない
介護保険の福祉用具貸与は、厚生労働大臣が定める告示に種目が列挙されています。車いす、車いす付属品、特殊寝台、特殊寝台付属品、床ずれ防止用具、体位変換器、手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえ、認知症老人徘徊感知機器、移動用リフト、自動排泄処理装置。特定福祉用具販売(購入費支給)の側も、腰掛便座や入浴補助用具など、告示で決められた種目に限られます。
食事に使う道具は、貸与・販売のどちらの対象種目にも挙げられていません。自助食器、自助スプーン、グリップ付きの箸は、購入費が原則として全額自己負担になります。
ただし、これで終わりにしないでください。お住まいの市区町村が独自に行っている給付・助成の対象になる場合があります。市区町村によっては、日常生活用具の給付など別の制度で相談できることもあります。対象になる品目や要件は市区町村ごとに決められているので、実家のある市区町村の高齢者福祉の窓口か、地域包括支援センターで確認してください。
配食サービスは給付ではないが、市区町村の事業として使える場合がある
ここは説明の仕方で誤解が生まれやすいところです。配食そのものは、介護保険のサービス費(給付)の対象ではありません。一方で、市区町村が行う地域支援事業の中に配食が位置づけられています。厚生労働省の総合事業ガイドラインは、その他生活支援サービスとして総合事業により実施できるものの1つに「配食:栄養改善を目的とした配食や一人暮らし高齢者に対する見守りとともに行う配食など」を挙げています。
したがって、正しくは「介護保険の給付ではないが、市区町村が行う事業として配食が位置づけられている」となります。実施しているかどうか、対象になる人の要件、自己負担の額は、市区町村ごとに違います。同じガイドラインは、配食について食材費などの補助を行う趣旨ではないことから、食材費などの実費は利用者に負担を求めるとも書いています。食材費は自己負担になります。
実家の地域でどうなっているかは、地域包括支援センターか市区町村の高齢者福祉の窓口で確認してください。民間の宅配弁当は、制度とは別に申し込めます。ただし配達できる地域や最低注文数は事業者ごとに違うので、実家の住所で届くかどうかを先に確認してください。
栄養の相談は、介護保険のサービスとして受けられる場合がある
配食が給付でないなら食事まわりで介護保険は使えないのか、というとそうではありません。前に挙げた居宅療養管理指導のように、医師の指示にもとづいて管理栄養士が自宅を訪問し、栄養管理・指導を行う類型があります。介護保険は、管理栄養士のような専門職が関わることに給付の枠を置いています。
利用できるかどうかは、かかりつけ医とケアマネジャーに相談してください。要介護認定をまだ受けていないなら、まず地域包括支援センターが入口になります。
レンタルと購入の考え方
食事の道具は対象外ですが、同じ時期に手すりやベッドを検討することになる家庭は少なくありません。何を借りて何を買うのか、費用の比べ方は歩行器・車椅子は買うのとレンタル、どっちが得?で整理しています。入浴のほうが先に気になっているなら、親の入浴が心配になったらもあわせてどうぞ。
介護保険の申請の流れを見る
よくある質問
親がむせるようになりました。まずとろみ剤を買えばいいですか?
買うより先に、かかりつけ医に相談してください。とろみの段階は、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の分類で薄い・中間・濃いの3つに分かれており、どの段階が合うかは医師・歯科医師・言語聴覚士・管理栄養士が評価して決めます。濃いとろみは重度の嚥下障害の人を対象とした段階で、家族が心配して濃くしていく先にあるものではありません。マニュアルにも、製品によっては付着性などが増強してかえって飲み込みにくくなることがあると書かれています。受診の前にできるのは、水やお茶でむせるのか固形物でむせるのか、食後に声がかすれるか、といった観察を記録しておくことです。
自助食器やスプーンは、介護保険で買えますか?
食事に使う道具は、介護保険の福祉用具貸与の対象種目にも、特定福祉用具販売の対象種目にも挙げられていません。そのため購入費は原則として全額自己負担になります。ただし、お住まいの市区町村が独自に行う給付・助成の対象になる場合があります。市区町村によっては、日常生活用具の給付など別の制度で相談できることもあります。対象になる品目や要件は市区町村ごとに決められているので、実家のある市区町村の高齢者福祉の窓口か、地域包括支援センターで確認してください。
配食サービスは介護保険で使えますか?
配食そのものは介護保険のサービス費(給付)の対象ではありません。一方で、市区町村が行う地域支援事業の中に配食が位置づけられており、厚生労働省の総合事業ガイドラインにも、栄養改善を目的とした配食や、一人暮らしの高齢者に対する見守りとともに行う配食が挙げられています。実施の有無、対象になる人の要件、自己負担額は市区町村ごとに違います。また同ガイドラインは、食材費などの実費は利用者に負担を求めるとしています。実家の地域でどうなっているかは、地域包括支援センターか市区町村の高齢者福祉の窓口で確認してください。
UDFとスマイルケア食は、どちらを見ればいいですか?
別々の仕組みなので、その商品が採用しているほうの表示で読んでください。UDF(ユニバーサルデザインフード)は日本介護食品協議会が定めた業界の自主規格で、区分1「容易にかめる」、区分2「歯ぐきでつぶせる」、区分3「舌でつぶせる」、区分4「かまなくてよい」の4区分です。数字が大きいほどやわらかくなります。スマイルケア食は農林水産省の分類で、栄養補給が必要な人向けの青、噛むことに問題がある人向けの黄、飲み込むことに問題がある人向けの赤という3系統です。両者の対応関係は公式には示されていないため、換算して考えないでください。
硬い物が食べにくそうです。刻み食にすれば食べやすくなりますか?
刻むという手技だけでは、食べやすさは決まりません。日本摂食嚥下リハビリテーション学会の嚥下調整食分類2021は、刻んだものが上下の歯槽堤間で押しつぶせないほど硬い場合や、あんのとろみが薄すぎる場合は嚥下調整食として適切ではないとしています。さらに「刻み」や「ミキサー」という呼称は調理手技に過ぎず、できあがったものの物性で判断すべきだとも述べています。見るのは、できあがったものが口の中でまとまるかどうかです。市販品ならUDFの区分表示が目安になりますが、どの段階が合うかは専門職に評価してもらってください。
離れて暮らしていて、毎食は作れません。市販品や宅配に頼っていいのでしょうか?
市販品や宅配を使ってかまいません。介護食の記事にはだしを取る、裏ごしするといった手順が並びますが、遠方に住んでいれば作る場面はそもそも帰省中の数日だけです。市販のレトルトや配食を使うのは、続けられる形を選んでいるだけです。栄養価の設計は市販品に任せて、家族は「何なら食べたか」「どれを残したか」を見る側に回るという分担も成り立ちます。買い物や調理そのものがつらくなってきた様子があるなら、それは生活支援の話なので、ケアマネジャーか地域包括支援センターに伝えてください。
出典一覧(資料名・年次・母数)