親の入浴が心配になったら。浴室の道具と介助を、動作別に整理する
まだ一人で入っている。でも、またぐのに時間がかかるようになってきた人へ

PR本ページはプロモーション(広告)を含みます。製品の評価・順位は収益で変えていません。運営・選定方針

帰省したとき、風呂場から物音がして耳をすませてしまった。「湯船はやめてシャワーだけにしてる」と本人が言った。このあたりから親の入浴が気になり始める人は、少なくありません。ただ、いざ何かしようとすると「浴室 介護」で出てくるのは道具の一覧か、介助の手順のどちらかで、うちの親にどれが要るのかが分かりません。この記事では、入浴を7つの動作に分けて、どの動作でつまずいているかによって、要る道具も、介助が必要な時期も変わるという形で整理します。数字は出典と参照日を添え、制度の判断は窓口へ渡す書き方にしています。

先に結論

まず「どの動作でつまずいているか」を見る

「風呂が危ない」とひとくくりにすると、買う物が決まりません。入浴は連続した動作の集まりで、つまずく場所は人によって1か所か2か所です。そこだけ手当てすれば、残りは今までどおりできることが多い。

入浴は7つの動作でできている

  1. 服を脱ぐ(脱衣所。片足立ちになる瞬間がある)
  2. 浴室に入る(脱衣所と洗い場の段差、ドアの開け閉め、濡れた床)
  3. 体を洗う(座る・立つ、前かがみになる、目をつぶって流す)
  4. 浴槽をまたぐ(片足で立ち、もう片足を高く上げる)
  5. 湯につかる(座る・姿勢を保つ・のぼせる)
  6. 浴槽から出る(浴槽の底から立ち上がり、もう一度またぐ)
  7. 体を拭いて服を着る(濡れた足で脱衣所に立つ)

動作ごとに危ないことが違う。だから道具も違う

逆に言うと、親が「どこで手間取っているか」が分かれば、買う物は1つか2つに絞れます。全部そろえる必要はありません。

この記事の範囲と、家全体の点検との違い

浴室の話は実家の転びやすい場所7つと、帰省時10分チェックリストにも出てきますが、役割が違います。あちらは家全体を見渡して、7か所のうちの1つとして浴室を点検する記事です。床の滑り対策や、置くだけの手すりの選び方はあちらにまとめてあります。

この記事は入浴という一連の動作を通しで見て、動作ごとに道具と介助を割り当てます。実家の環境をひととおり点検したいなら先にあちらを、入浴のどこかで親が手間取っているならこの記事を読んでください。

一人で入らせてよいか、家族が見て分かる範囲の見極め

ここで断っておくと、入浴の可否を判断できるのは、担当のケアマネジャーや主治医、リハビリの専門職です。以下は、その人たちに状況を伝えるために家族が観察できることの整理で、医学的な基準ではありません。

「できるか」ではなく「どうやっているか」を見る

「お風呂、一人で入れる?」と聞けば、たいていの親は「入れる」と答えます。これは嘘ではなく、実際に入れているからです。見るべきなのは、できるかどうかではなく、どうやっているかです。どこに手をついて、何秒かけて、終わったあとどうなっているか。

帰省中に確かめられること

本人に聞く言い方(責める形にしない)

「危ないから一人で入らないで」は、「あなたはもう一人で風呂に入れない人だ」と聞こえます。入浴は生活の中でもとりわけ自分のペースでやりたい行為なので、ここで反発されると、その後の道具の話まで通らなくなります。

聞くなら動作の話に限定します。「どこに手をついて入ってるの?」「またぐとき、どっちの足から入れてる?」。この聞き方なら、責める形になりません。手当てが必要なら、そのまま「そこに手すりを付けよう」という話につながります。

道具を足す段階/声をかけて見守る段階/介助を考える段階

おおまかな目安として、次のように整理すると、ケアマネジャーへ相談するときに状況を伝えやすくなります。

※この3段階は、家族が観察したことを整理するための区分で、医学的・制度的な基準ではありません。持病や服薬がある場合の入浴の可否は、主治医とケアマネジャーに確認してください。

入浴中の事故と季節・温度|数字は「何を数えたか」とセットで読む

入浴の事故については、出回っている数字の定義がまちまちです。ここでは何年の・どの統計で・誰を・どこで数えた数字なのかを明記して並べます。

令和5年、家や居住施設の浴槽で亡くなった65歳以上は6,073人

消費者庁が厚生労働省「人口動態統計」(令和5年)をもとに公表している数字は、3つが入れ子になっています。

数えた範囲(65歳以上・令和5年)人数
「不慮の溺死及び溺水」で亡くなった人(場所を限定しない)8,270人
 うち 浴槽での事故6,541人
  うち 家や居住施設の浴槽6,073人

出典:消費者庁「コラムVol.12 高齢者の事故 ―冬の入浴中の溺水や食物での窒息に注意―」(2024年12月19日/厚生労働省「人口動態統計」令和5年にもとづく/caa.go.jp/2026年8月24日参照)。同資料では、浴槽での溺水は「不慮の溺死及び溺水」全体の約8割を占め、溺水による死亡者はこの10年間で31%増加したとされています。

「入浴中に◯人が亡くなっています」と数字だけを置かないでください。上の3つは、同じ統計から、数える場所を変えて取り出した数字です。ネット上には「入浴中の死亡◯万人」という数字も出回っていますが、それは浴室での心肺停止を含む推計など、人口動態統計の確定死亡者数とは数え方が違うものです。定義の違う数字を並べたり足したりすると、実態から離れます。

「不慮の溺死及び溺水」は、ヒートショックで亡くなった人数ではない

ここは混同されやすいところです。上の6,073人や8,270人は死因分類の名称にもとづく集計で、「ヒートショックによる死亡」を数えたものではありません。消費者庁はヒートショックを、事故の主な原因となる体の変化(温かい室内と寒い脱衣所・浴室の温度差による急激な血圧の変動)として説明しており、この記事でも同じ扱いにします。ヒートショックに人数を付けた数字は、この記事では書きません

冬に増える。12月・1月が多い

季節性ははっきりしています。消費者庁は、入浴中の事故が12月・1月に多発するとしています。東京消防庁の救急搬送データでも、高齢者の「おぼれる」事故は12月から3月までに多く発生しています(令和6年中)。

同じ資料から、事故の起きる場所と重さも分かります。令和6年中の「おぼれる」事故の発生場所は、「住宅等居住場所」が400人で9割以上を占め、その多くは浴槽です。初診時程度では入院が必要な中等症以上と診断された割合が98.6%で、385人が生命の危険がある重症以上と診断されています。令和2年からの5年間の「おぼれる」事故の救急搬送は、合わせて2,481人です。

出典:東京消防庁「救急搬送データからみる高齢者の事故」(tfd.metro.tokyo.lg.jp/2026年8月24日参照)。発生場所の400人・9割以上は図2-16、中等症以上98.6%と重症以上385人は図2-15で、いずれも令和6年中の数値です。5年間2,481人は令和2年から令和6年までの合計(図2-13)、12月から3月に多いという月別の傾向は令和6年中(図2-14)です。母数は東京消防庁管内で救急搬送された65歳以上で、全国の統計ではありません。「おぼれる」は事故種別の分類で、「ころぶ」とは別に集計されています。なお同じ資料の図1-5には「おぼれる」事故の中等症以上が98.4%という数字も載っていますが、こちらは令和2年からの5年間・事故種別どうしの比較で、上の98.6%(令和6年中)とは集計年次が違う別の数字です。

消費者庁が挙げている目安

消費者庁の注意喚起「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!」には、次の6つが挙げられています。原文のまま引きます。

  1. 「入浴前に脱衣所や浴室を暖めましょう」
  2. 湯温は41度以下、湯につかる時間は10分までを目安にしましょう
  3. 「浴槽から急に立ち上がらないようにしましょう」
  4. 「食後すぐの入浴、またアルコールが抜けていない状態の入浴は控えましょう」
  5. 「精神安定剤、睡眠薬などの服用後の入浴は危険ですので注意しましょう」
  6. 「入浴する前に同居者に一声掛けて、見回ってもらいましょう」

出典:消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!」(caa.go.jp/2026年8月24日参照)。同じ「湯温は41度以下、湯につかる時間は10分まで」という目安は、上に挙げたコラムVol.12にも再掲されています。

湯温は入浴時間とセットで示されている点に注意してください。「41度以下にすれば安全」という意味ではなく、あくまで目安です。持病や服薬がある場合にどうするかは、主治医とケアマネジャーに確認してください。

6つのうち1・2・6は、家族が離れていてもできることです。脱衣所に暖房を足す、給湯器の設定温度を下げておく、入る前に電話やLINEで一声かけてもらう約束をする。実家の浴室に手を入れるより先に、ここから始められます。

それでも、入浴をやめる方向には持っていかない

ここまで数字を並べましたが、これは入浴をやめる話ではなく、続けられる形にする話です。入浴は清潔を保つだけでなく、体を温める行為であり、多くの親にとって一日の楽しみです。取り上げれば、その分だけ生活の張りが減ります。危ないのは入浴そのものではなく、寒い脱衣所・熱すぎる湯・長湯・支えのない動作という条件のほうです。条件は変えられます。

早見表|つまずく動作 × 効く道具 × 費用の目安 × 介護保険の扱い

親がどの動作で手間取っているかが分かったら、その行だけを見てください。上から順にそろえる必要はありません。

つまずく動作起きやすいこと動作を支える道具・対策費用の目安介護保険での扱い
脱衣所で服を脱ぐ暖かい居室と脱衣所の温度差が、裸のまま体にかかる脱衣所と浴室を先に暖めて温度差を減らす(既存の暖房、浴室暖房、小型のパネルヒーター等)既存の暖房を使うなら0円/器具を買うなら1万円台〜(※3)対象外(自費)
浴室に入る・洗い場を歩く濡れた床で滑る/段差につまずく浴室内すのこ・滑り止めマット数千円〜1万円台「浴室内すのこ」の種目に当たるかを窓口で確認。当たらなければ自費
洗い場で立つ・座る低い風呂いすから立てない/前かがみで崩れるシャワーチェア(入浴用いす)5千円台〜2万円台購入費支給(特定福祉用具販売)の対象種目
浴槽をまたぐ片足立ちの一瞬でふらつく浴槽の縁を挟む浴槽用手すり1万円台〜4万円前後購入費支給の対象種目
もうまたげない足が縁を越えないバスボード(入浴台)に座って越える数千円〜1万円台購入費支給の対象種目
浴槽から立てない底が滑る/浮力で踏ん張れない浴槽内いす・浴槽内すのこ数千円〜1万円台購入費支給の対象種目
浴室までの移動・出入口の支えつかまる所がない床置き・突っ張り式の手すり(工事なし)レンタルは月額制(※2)。自費で買うなら1万円台〜2万円台福祉用具貸与の対象種目(手すり)
体重を預ける支えが要る置く手すりでは動いてしまう壁にビス等で固定する手すりの取付け工事工事費(要見積り)住宅改修(20万円枠)の対象工事
道具では足りない動作の途中で止まる/家族だけでは支えられない訪問介護の入浴介助・デイサービスの入浴・訪問入浴サービスの自己負担分ケアプランに位置づけて利用する介護サービス

※1 価格は変動します。この表の金額は幅で示した目安です(本記事の価格情報の参照日:2026年8月24日)。
※2 費用の単位が行によって違います。購入する道具の金額は一括で払う本体価格、福祉用具貸与(レンタル)の手すりは月額制です。レンタルの月額は品目・事業者・地域で幅があり、介護保険が使えれば支払うのは原則その1〜3割です(→ レンタルと購入の比べ方)。実際の月額は担当のケアマネジャー・福祉用具貸与事業者にお尋ねください。
※3 暖房器具は室温を上げるための家電で、血圧や体調への効果をうたうものではありません。

表の見方|介護保険の扱いは4つに分かれる

右端の列は、○×ではなく4つの枠で書いています。浴室は、同じ「手すり」でも枠がまたがるので、ここを分けておかないと窓口を間違えます。

そして介護保険で決まっているのは「種目」までです。「この商品は介護保険で買えます」と言い切れる立場にいるのは、担当のケアマネジャー・福祉用具専門相談員・市区町村の窓口だけで、個々の商品が給付対象になるかは、指定を受けた事業者から買ったか、その人に必要と認められたかで変わります。

費用を幅で示している理由

介護用品は、同じ型番でも店舗と時期で表示価格が動きます。今回の調査でも、同じ型番が販売店によってかなり違う金額で出ている例がありました。そのため円単位の金額を載せているのは、その金額が実際に表示されているページを確認できたものだけにして、それ以外は幅で書いています。買うときは、型番と税込価格をそのページで必ず確認してください

動作別に、道具を1つずつ

ここでは、動作ごとに「こういう物を探す」という基準と、スペックを確認できた製品を1つずつ挙げます。編集部は実物を試しておらず、点数付けもしていません。挙げているのは、メーカーや販売ページの公表スペックです。

洗い場での立ち座りがつらい|シャワーチェア(入浴用いす)

家庭にある風呂いすは座面が低く、そこから立ち上がる動作は膝と腰に負担がかかります。シャワーチェアは座面を高くして、その一段を軽くする道具です。見るのは次の5つ。

参考にできる製品例:幸和製作所(テイコブ)「シャワーチェア(背付)BSOC01」は、幅51〜54.5cm×奥行45.5〜49cm×高さ66〜76cm、重量2.6kg、脚部5段階の高さ調節、フレームはアルミニウム・ステンレスパイプ、座面と背もたれはポリエチレン、クッションはEVA樹脂(介護用品卸センターの商品ページ/2026年8月24日参照)。このページには耐荷重の記載がなく、座面高も別表記です。購入するページで、座面の高さと耐荷重の表示を見比べてから決めてください。

浴槽をまたぐときにふらつく|浴槽の縁を挟む浴槽用手すり

浴槽の縁を上下から挟んでネジで締めるタイプで、工事はいりません。またぐときに体の前に握る場所を作るのが役割です。

参考にできる製品例:アロン化成「安寿」高さ調節付浴槽手すり UST-130Nは、幅18cm×奥行29〜38cm×高さ42cm、重量約3.8kg、最大使用者体重80kg、材質はフレーム=アルミニウム/グリップ支柱=ステンレス/カバー=PP/グリップ表面=エラストマー、付属品に段差補正板(5mm厚×3枚)。希望小売価格は36,000円(税込39,600円)(アロン化成の製品ページ/2026年8月24日参照)。取り付けられる浴槽の縁の厚みは同ページの寸法図に示されています。

型番の「N」の有無に注意。同じシリーズにUST-130UST-130Nがあり、寸法・重量・材質・希望小売価格がすべて違う別製品です(希望小売価格で税込8,800円の差があります)。検索で出てきたページのスペックを、別の型番の商品に当てはめないでください。注文画面で型番を最後まで確認を。

安全性の考え方:この種の手すりは、メーカーが定める適合範囲(挟める縁の厚み・最大使用者体重)の中で使うことが前提です。またぐときのバランスを取るための支えであって、体重を強く預ける物ではありません。体重を預けて立ち上がる支えが要る段階なら、壁に固定する手すり(住宅改修)のほうが向いています。ただし浴室の壁材や下地、持ち家か賃貸かによって取り付けられるかどうかが変わるので、ケアマネジャーと施工業者に実際に見てもらってから決めてください。なお、福祉用具の使用中に起きた事故・ヒヤリハットの情報は(公財)テクノエイド協会が公開しており、用具の種別ごとに読めます。

またぐ動作の支えとして別のメーカー・別の型番も比べたいなら、幸和製作所の型番を実売価格つきで挙げた実家の転びやすい場所7つの浴室の節も見てください。

もうまたげない|バスボード(制度上の名称は「入浴台」)

浴槽の縁に渡す板です。立ったまま足を上げるのをやめて、いったん板に座り、腰を回して足を浴槽へ入れる。動作を「またぐ」から「座って回る」に置き換えます。足が縁を越えなくなってきた段階の道具です。

参考にできる製品例:島製作所「バスボード 楽湯SP」(型番7522)は、幅70.5cm×奥行31.5cm×高さ19cm、ボード厚さ5cm、重量約2.5kg、最大使用者体重150kg、対応する浴槽の内寸41〜63cm、素材はポリプロピレン・TPR(楽天市場の商品ページ/2026年8月24日参照)。同ページでは税込価格の表示を見つけられなかったため、金額は本文に書いていません。購入時に販売ページの表示をご覧ください。

浴槽から立ち上がれない|浴槽内いす・浴槽内すのこ

浴槽の底に置いて座る位置を上げる道具です。立ち上がる高さが減るぶん、出るときの動作が軽くなります。深い浴槽ほど効きます。

参考にできる製品例:幸和製作所(テイコブ)浴槽内いす「ユニプラス BSN09」は、幅36cm×奥行34cm、座面の高さ12〜20cm(連結パイプを外すと8cmの低い設定も可能)、重量2.8kg、パイプ部はステンレス、座面・背もたれはポリエチレン、クッションはポリエチレン・EVA(楽天市場の商品ページ/2026年8月24日参照)。同ページでは耐荷重と税込価格の表示を見つけられなかったため、この記事では書いていません。購入時に販売ページでお確かめください。

脱衣所が寒い|小型のパネルヒーター(これは介護保険の対象外)

消費者庁の注意点の1つ目は「入浴前に脱衣所や浴室を暖めましょう」です。暖め方までは指定されていませんから、道具を買う前に、いまある設備でできることから始める手もあります。浴室側は、入る前にシャワーで湯を張る・フタを開けておくといった方法で温度差を減らせます。脱衣所側は暖房を足すのが早い。

この種の暖房器具は介護保険の給付対象種目ではありません。自費での購入になります。

参考にできる製品例:ナカガワ工業の脱衣所用アルミパネルヒーター「icoro(イコロ)i-500」は、サイズ約50〜61cm×13〜44cm、重量約4.5kg、消費電力は弱120W/強180W、電源AC100V、表面温度約55〜60℃、3年保証(楽天市場の商品ページ/2026年8月24日参照)。同ページでは税込価格の表示を確認できなかったため、金額は書いていません

床が滑る・洗い場が冷たい|すのこと滑り止めは家全体の記事へ

洗い場に敷く折りたたみ式のすのこや滑り止めマットは、実家の転びやすい場所7つの浴室の節で、実売価格とサイズを挙げて扱っています。敷いた厚みの分だけ洗い場の床が上がるので、浴槽の縁との高低差が小さくなるという副次的な効果もあります。ただしサイズが合わずに端が浮くと、かえってつまずく原因になるので、洗い場の実寸を測ってから選んでください。

浴室まで歩くのが不安なら|歩行補助具の使い分けへ

そもそも脱衣所までたどり着くのが不安、という段階なら、道具の選び方が変わります。杖・歩行器・シルバーカー・車椅子の使い分け早見表で全体像をつかんでください。

以下は順位ではなく、動作ごとの選択肢を5つ並べたものです。編集部は実物を試しておらず、点数付けもしていません。

洗い場
🪑

立ち座りを軽くする:シャワーチェア

座面の高さと耐荷重で選ぶ

向いている親
  • 低い風呂いすから立つのに時間がかかる
  • 洗っている途中、前かがみで崩れそうになる
気になる点
  • 洗い場の面積を取る(扉の開閉と動線を確認)
  • 販売ページに耐荷重・座面高の表示がないことがある

入浴用いすとして、介護保険の「特定福祉用具販売(購入費支給)」の対象になっています。通知が示す要件は、座面の高さが概ね35cm以上、またはリクライニング機能があること。個々の商品が給付対象になるかは購入先や必要性の判断で変わるため、買う前にケアマネジャー・福祉用具専門相談員へ。

楽天で見る Amazonで見る

またぐ
🛁

またぐ一瞬を支える:浴槽用手すり

浴槽の縁の厚みを測ってから

向いている親
  • 浴槽に入るとき、縁や壁に手をついている
  • 浴室の工事まではまだ考えていない
気になる点
  • 挟める縁の厚みが合わないと付かない
  • 最大使用者体重(例に挙げたUST-130Nは80kg)を超える使い方はできない

浴槽用手すりも、購入費支給の対象種目の一つです。似た型番(UST-130/UST-130N)で寸法も価格も違うので、注文画面では型番の末尾まで見比べてから進めてください。体重を強く預ける支えが要る段階なら、壁に固定する手すり(住宅改修)のほうが向いています(取り付けられるかは浴室の壁の下地しだいです)。

楽天で見る Amazonで見る

またげない
🌉

座って越える:バスボード(入浴台)

浴槽の内寸に合うかで決まる

向いている親
  • 足が浴槽の縁を越えなくなってきた
  • 手すりを付けても、またぐのが怖い
気になる点
  • 浴槽の内寸が対応範囲外だと使えない
  • 浸かるときに外す使い方だと、その手間が毎回かかる

制度上の名称は「入浴台」。これも購入費支給で買えます。またぐ動作を「座って腰を回す」に置き換える道具です。板の上で回るときの支えが要るなら、手すり付きのタイプも検討してください。

楽天で見る Amazonで見る

立てない
🪜

立ち上がる高さを減らす:浴槽内いす

座面を上げるほど、浸かる深さは浅くなる

向いている親
  • 浴槽の底から立ち上がれない/時間がかかる
  • 浴槽が深く、肩まで沈み込んでしまう
気になる点
  • 浸かる深さが浅くなる(本人に座らせて決める)
  • 浴槽の底の形状によっては入らない

浴槽内いす・浴槽内すのこも、同じ購入費支給の枠に入ります。毎日出し入れするなら、濡れた状態で持てる重さかどうかも見ておいてください。

楽天で見る Amazonで見る

脱衣所
🌡️

温度差を減らす:脱衣所用のパネルヒーター

介護保険の対象外(自費)

向いている実家
  • 冬の脱衣所が冷え切っている
  • 浴室暖房の設備がない
気になる点
  • 脱衣所にコンセントが要る
  • 表面が熱くなる。可燃物との距離は説明書で確認

消費者庁は「入浴前に脱衣所や浴室を暖めましょう」と呼びかけていますが、暖め方までは指定していません(特定の器具をすすめているわけではありません)。既存の暖房を使う、入浴前にシャワーで浴室を温めるなど、器具を買わずにできる方法もあります。暖房器具は介護保険の給付対象種目ではないため、買う場合は自費です。

楽天で見る Amazonで見る

介護保険で何が使えるか|浴室は3つの枠に分かれる

前提として、要支援1・2または要介護1〜5の認定を受けていることが必要です。認定を受けていない段階では、原則として福祉用具の購入費支給も住宅改修費も使えません(自費で同じ物を買うことはできます)。ただし市区町村によっては独自の助成を設けている場合があるので、認定前でも一度、実家のある地域の地域包括支援センターに聞いてみてください。

浴室まわりは、同じ「手すり」でも制度の入口が3つに分かれます。ここを取り違えると、窓口も、上限額も、申請の順番も変わってしまいます。

1|入浴補助用具は「特定福祉用具販売(購入費支給)」の対象種目

入浴補助用具の7種目は、購入告示(平成11年3月31日 厚生省告示第94号)に定められ、その要件は通知(平成12年1月31日 老企第34号)が示しています。種目の名称は原文のとおりです。

  1. 入浴用いす(要件=座面の高さが概ね35センチメートル以上のもの又はリクライニング機能を有するもの)
  2. 浴槽用手すり(浴槽の縁を挟み込んで固定することができるもの)
  3. 浴槽内いす
  4. 入浴台(いわゆるバスボード)
  5. 浴室内すのこ(浴室内に置いて浴室の床の段差の解消を図ることができるもの)
  6. 浴槽内すのこ
  7. 入浴用介助ベルト

これらがレンタルではなく「買う」扱いになっているのは、直接肌に触れるもので、他人との共用になじまないためです。

出典:厚生労働省「介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて」(平成12年1月31日 老企第34号/mhlw.go.jp/2026年8月24日参照)。老企第34号は厚生省老人保健福祉局企画課長通知で、告示(平成11年3月31日 厚生省告示第93号・第94号・第95号)の内容と取扱いを示すものです。本文で「通知」と書いているのはこの文書を指します。

2|年度10万円の枠、自己負担1〜3割、買う前にケアマネジャーへ

出典:健康長寿ネット「特定福祉用具販売・購入について」(tyojyu.or.jp/2026年8月24日参照)、厚生労働省「福祉用具・住宅改修」(mhlw.go.jp/2026年8月24日参照)。同一種目の買い直しについては、健康長寿ネットの同ページに「破損した場合を除き、同一種目を複数購入することができません」「購入できるのは同一年度内で1品目あたり原則1回まで」と記載されています。上限額・申請の様式・窓口・買い直しの取扱いは市区町村ごとに運用が定められているため、実家のある市区町村の介護保険窓口で確認してください。

3|支払いは償還払いが原則。受領委任払いがあるかは市区町村ごと

原則はいったん全額を販売事業者へ支払い、あとから申請して保険分の払い戻しを受ける「償還払い」です。つまり、購入の時点では10万円の商品なら10万円を用意することになります。

この立て替えを避ける仕組みとして、購入時は自己負担分だけを支払う「受領委任払い」を用意している市区町村があります。ただしこれは全国一律の制度ではなく、導入の有無も、対象になる事業者が登録済みかどうかも市区町村によって違います。手元にいくら必要になるかは、買う前に実家のある市区町村の介護保険窓口と担当のケアマネジャーへ確認してください。

レンタルと購入の考え方、費用の比べ方は歩行器・車椅子は買うのとレンタル、どっちが得?で整理しています。

4|壁に固定する手すりの工事は「住宅改修」(20万円枠・着工前に申請)

浴室の壁にビス等で固定する手すりは、福祉用具ではなく住宅改修の側です。支給限度基準額は20万円で、こちらは年度ではなく原則として1人あたりの枠です。そして住宅改修を行おうとする前に、申請書等を市町村に提出するのが手順で、先に工事を済ませると枠を使えないことがあります。

手続きの中身(提出する書類、理由書を書く人、償還払いと受領委任払い)は実家の転びやすい場所7つの住宅改修の節に詳しく書いています。

出典:厚生労働省「居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について」(老企第42号/mhlw.go.jp/2026年8月24日参照)。

5|工事を伴わない床置き・突っ張り式の手すりは「貸与」

脱衣所や浴室の出入口に、床に置くだけ・天井との間に突っ張るだけの手すりを立てる場合は、福祉用具貸与(レンタル)の側になります。老企第34号は、福祉用具としての手すりを「居宅の床に置いて使用すること等により(中略)取付けに際し工事を伴わないもの」と定めています。分かれ目は、工事をするかどうかだけです。

なお、浴槽の縁を挟む浴槽用手すりは、工事を伴いませんが貸与ではなく購入費支給の側です(上の1)。「工事なし=すべてレンタル」ではないので、ここは分けて覚えてください。

「要支援だから手すりは借りられない」と決めつけない

福祉用具貸与には、要支援1・2と要介護1の人(軽度者)について原則として貸与費を算定できない種目が定められています。通知(要介護1=老企第36号 第2の9(4)、要支援1・2=老計発第0317001号ほか 第2の10(4))が挙げているのは、次の9つです。

  1. 車いす
  2. 車いす付属品
  3. 特殊寝台
  4. 特殊寝台付属品
  5. 床ずれ防止用具
  6. 体位変換器
  7. 認知症老人徘徊感知機器
  8. 移動用リフト(つり具の部分を除く。)
  9. 自動排泄処理装置

この一覧に、手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえは入っていません。ただしこれは「軽度者でも必ず借りられます」という意味ではありません。通知が原則対象外の種目として挙げているのは上記だけで、手すりはそこに含まれていない。ここまでが事実で、実際に給付されるかどうかは、ケアプランへの位置づけと市区町村の判断によります。判断するのは担当のケアマネジャー・福祉用具専門相談員・市区町村の窓口です。

出典:上記2本の通知の本文(三鷹市が全文を転載しているPDF。表題に〔老企第36号〕第2の9(4) と明記されています/city.mitaka.lg.jp(PDF)/2026年8月24日参照)。要介護1と要支援1・2で根拠となる通知は別ですが、列挙されている種目名は同一です。

介護保険の申請の流れを見る

介助が必要になったら|手順より先に決めること

ここからは、家族が手を貸す場合の話です。細かい手順の前に、決めておくと揉めにくいことが3つあります。

順番を決めておく

入浴介助は工程が多く、その場で考えると必ず何かを飛ばします。暖める → 声をかける → 座らせる → 洗う → またぐ → 出る——この順番を先に決めておくだけで、浴室で立ち止まる時間が減ります。

引き上げない。自分の腰を守る

介助でよく問題になるのが、浴槽から親を引き上げようとする動作です。濡れた浴槽の中で、前かがみになって、体重のかかった相手を持ち上げる。この姿勢は、介助する側の腰に大きな負担がかかります。介護職はこれを避けるために体の使い方を訓練しています。年に数回帰省する家族が見よう見まねで行うと、親を支えきれなかったり、自分の腰を痛めたりすることがあります

「裸を見られたくない」は理由として正当に扱う

入浴介助は、親が子に裸を見せる場面です。親が嫌がるとき、その理由が羞恥心であることは珍しくありません。「家族なんだから」で押し切ると、入浴そのものを拒否する方向へ進みます。

同性介助が難しい家庭で、現実にできること

「息子が母の入浴を手伝う」「娘が父の入浴を手伝う」。この形には、本人も家族も抵抗があるのが普通です。きょうだいや配偶者に同性の人がいない家庭も多く、家族の努力では解決しません。

現実的なのは、次の2つです。

入浴を嫌がるとき、理由を切り分ける

「風呂に入らなくなった」は、それだけでは手当てのしようがありません。理由が違えば、やることが変わります。

4つに切り分ける

本人が理由を言葉にしないことも多いので、「どの動作を避けているか」から逆算すると当たりがつきます。湯船だけやめてシャワーにしたなら「またぐのが怖い」、そもそも脱衣所まで行かないなら「寒い」か「面倒」——というふうにです。

認知症が背景にある場合は、説得より段取りを変える

認知症があると、入浴を拒む理由が本人にも説明できないことがあります。「お風呂に入りたがらない」「たまに入っても石鹸を使わずに済ませてしまう」といった相談は実際に投稿されています。

この場合、理屈で説得しようとするほど、話がこじれます。変えられるのは段取りのほうです。時間帯を本人の機嫌がよい時間に合わせる、「お風呂に入って」ではなく「お湯を張ったから、足だけ温めない?」と入口を小さくする、家族ではなくデイサービスの職員に頼む。誰が言うか・いつ言うかを変えるほうが、言い方を工夫するより効くことがあります

対応の当たり外れは本人によって大きく変わるので、担当のケアマネジャーに「入浴を拒む」と具体的に伝えてください。同じ人を見ている専門職のほうが、実家の事情に合う手を知っています。

道具で解決しきれないときの出口

道具を足しても動作が成り立たない、家族が支えると腰を痛める、羞恥心で家族の介助を受け入れない。このどれかに当てはまったら、外のサービスに渡す段階です。入浴に関わるものは、大きく3つあります。

どれが使えるか、いくらかかるかは、要介護度・ケアプラン・地域の事業所の状況によって変わります。この記事で「使えます」と断言はできません。すでに介護保険を使っているなら担当のケアマネジャー、まだなら実家のある地域の地域包括支援センターへ、「入浴が一人でできなくなってきた」と具体的に伝えてください。

要介護認定をまだ受けていない場合の進め方は、親の介護、何から始める?最初の手続きまとめにまとめています。

よくある質問

介護保険の認定を受けていなくても買えますか?

商品を買うこと自体はできます。買えないのは「介護保険の購入費支給を受けること」で、こちらは要支援1・2または要介護1〜5の認定が前提です。認定がない段階で自費で買うのは自由ですが、認定を受けてから買えば購入費支給の対象になったのに、というケースはあります。「そろそろかもしれない」と思っているなら、買う前に地域包括支援センターへ相談してください。

レンタルではなく買い取りになるのはなぜですか?

入浴補助用具は直接肌に触れるもので、他人との共用になじまないためです。介護保険では、シャワーチェア(入浴用いす)・浴槽用手すり・浴槽内いす・入浴台・浴室内すのこ・浴槽内すのこ・入浴用介助ベルトが「特定福祉用具販売(購入費支給)」の対象種目として区分されています。一方、床に置く・突っ張るなど工事を伴わない手すりは福祉用具貸与(レンタル)の側です。同じ「手すり」でも、浴槽の縁を挟むものは購入、床置き・突っ張り式は貸与、と分かれます。

浴槽用手すりは、どんな浴槽にも付きますか?

付きません。挟める浴槽の縁の厚みは製品ごとに範囲が決まっているので、買う前に実家の浴槽の縁をメジャーで測り、製品ページの寸法図と突き合わせてください。縁に丸みがある浴槽やフタのレールがある浴槽では、付属の補正板が必要になることもあります。また、似た型番で寸法も価格も違う製品があります(例:アロン化成のUST-130とUST-130Nは別製品)。注文画面で型番を最後まで見てから進めてください。

一度に全部そろえたほうがいいですか?

その必要はありません。つまずいている動作は、たいてい1つか2つです。まず「どの動作で手間取っているか」を見て、そこだけ手当てしてください。買う前にケアマネジャーへ相談すれば、購入費支給の年度10万円の枠をどう使うかも含めて一緒に決められます。同じ種目を買い直せるかどうかにも決まりがあり、指定を受けた事業者から買っていないと支給の対象にならないことがあるので、その点でも先に相談したほうが安心です。

動作別の早見表を見る