実家の転びやすい場所7つと、帰省時10分チェックリスト
離れて暮らす親が心配。でも何から手をつければいいのか分からない人へ

PR本ページはプロモーション(広告)を含みます。製品の評価・順位は収益で変えていません。運営・選定方針

実家に帰るたび、玄関で靴を履く親のふらつきや、廊下に伸びたままの延長コードが気になる——そんな相談は珍しくありません。かといって「危ないから手すりを付けよう」と言えば、たいてい「まだいらない」と返ってくる——。この記事では、高齢者が家の中のどこで転んでいるのかを公的な統計の実数で確認したうえで、帰省したときに10分で見られるチェックポイント、お金をかけずにできること、買うなら何を見るか、そして介護保険の住宅改修費20万円枠を取り逃がさない申請の順番までを、順に整理します。

先に結論

高齢者が家の中で転んでいるのは、実際どこか

「危ないのは階段と浴室」というイメージがありますが、救急車で運ばれた人数を場所別に数えると、順位はイメージとずれます。

住宅内で「ころぶ」事故により搬送された42,180人の内訳

東京消防庁が公表している令和6年中のデータでは、住宅等居住場所で「ころぶ」事故により救急搬送された高齢者は42,180人。そのうち屋内での発生が39,053人で、9割以上を占めます。場所別の内訳は次のとおりです。

順位場所搬送人員
1居室・寝室29,783人
2玄関・勝手口等3,900人
3廊下・縁側・通路2,653人
4トイレ・洗面所1,229人
5台所・調理場・ダイニング・食堂1,079人

出典:東京消防庁「救急搬送データからみる高齢者の事故」令和6年中・表2-1(tfd.metro.tokyo.lg.jp/2026年8月24日参照)。母数は東京消防庁管内で令和6年中に救急搬送された65歳以上の人数で、全国の統計ではありません。東京消防庁の管轄区域は、東京消防庁の組織ページによれば島しょ地域と稲城市を除く東京都のほぼ全域です(tfd.metro.tokyo.lg.jp/2026年8月24日参照。稲城市は現在も稲城市消防本部が単独で消防事務を行っています)。また「自宅内の転倒のうち何%」を示した割合ではなく、搬送された人数の実数です。

「外より家の中」を、割合ではなく人数で読む

ここで押さえておきたいのは、1位の居室・寝室が2位の玄関の7倍以上あることです。段差の大きい玄関や階段のほうが危なそうに見えますが、実際に搬送されている人数は、親が起きて座って寝る、いちばん見慣れた部屋で最も多い。実家に帰って最初に見るべきなのは、まず親がいちばん長くいる部屋の床ということになります。

表に浴室が出てこない理由(「浴室は安全」ではありません)

上の表に浴室がないことを「浴室は危なくない」と読まないでください。この表は「ころぶ」事故だけの集計で、浴室で起きた事故の多くは別分類の「おぼれる」として数えられています。同じ東京消防庁の資料では、令和2年からの5年間の集計で、入院が必要な中等症以上と診断された割合は「おぼれる」事故が98.4%と、事故種別のなかでもっとも高くなっています(この98.4%は令和2年からの5年間の数値で、上の表の「令和6年中」とは年次が違います)。浴室は、搬送される人数の順位ではなく、起きたときの重さで見る場所です。

数字を鵜呑みにしないための注意

転倒の場所については、出典によって順位がまるで違う数字が出回っています。たとえば内閣府が2005年(平成17年度)に行った意識調査では、庭26.5%/玄関・ホール・ポーチ19.0%/居間・茶の間・リビング17.0%という順になっています。これは60歳以上の回答者1,886人のうち「自宅内で転倒した経験がある」と答えた200人を母数にした複数回答(回答計124.5%)で、庭など屋外を含みます。2005年のアンケートへの自己申告と、2024年の救急搬送の実数では、母数も年次も数え方も違うので、同じ表に並べて比べることはできません。

この記事では東京消防庁の実数を軸にしています。内閣府の調査は「庭や勝手口といった屋外側でも転倒は起きている」という定性的な補足として、後半のチェックリストに反映しました。「家庭内事故の◯%」という数字を見たときは、何件中の何%なのかを確かめる——この一手間だけで、母数の違う数字を並べて誤った結論を出すことを避けられます。

出典:内閣府「平成17年度 高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査」(www8.cao.go.jp/2026年8月24日参照)。

転倒がその後の生活に与える影響を、数字で確認しておく

介護が必要になった主な原因の3位が「骨折・転倒」

厚生労働省の2022(令和4)年国民生活基礎調査では、介護が必要となった主な原因のうち「骨折・転倒」は総数で13.9%、第3位でした。1位は認知症16.6%、2位は脳血管疾患(脳卒中)16.1%です。

内訳を見ると、位置づけは段階によって変わります。

出典:厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」表17(令和5年7月4日公表/mhlw.go.jp(PDF)/2026年8月24日参照)。調査時点は2022年6月。母数は在宅で介護を受けている要支援者・要介護者(介護票の集計客体5,499人)で、施設入所者・入院者は調査の対象外です。

ただしこれは「在宅の人が挙げた原因」の集計です

この調査の設問は「介護が必要となった主な原因」で、単一回答。介護が必要になったきっかけとして本人・家族が挙げた原因を集計したものであって、転倒したらその後どうなるかという因果関係を測定した調査ではありません。「一度転んだら介護生活が始まる」といった読み方はできませんし、この記事もそういう脅し方はしません。

読み取れるのは、骨折・転倒は、認知症や脳卒中と並んで、介護のきっかけとして名前が挙がりやすいということ。そして認知症や脳卒中と違い、家の環境を変えることで減らせる余地があるということです。だから最初に手をつける対象として割がいい、というのがこの記事の立ち位置です。

※運動の効果について。国民生活センターの資料では、国立長寿医療研究センター理事長特任補佐の鈴木隆雄氏が、筋力・歩行・バランス能力の訓練を続けた高齢者グループの転倒率は約13.6%で、何もしなかったグループの約54%と比べ転倒リスクが約30%減少した研究(Suzuki T, et al. JBMM, 2004)を紹介しています。ただし原著論文は当編集部では未確認で、資料内での紹介にとどまります。この記事では、親に運動をさせる話ではなく、家の環境を変える話に絞ります。

実家に帰ったとき、10分で見るチェックリスト(7か所)

親を質問攻めにする必要はありません。トイレを借りる、お茶を淹れる、荷物を置く——ふだんの動きのついでに、次の7か所を見るだけで10分ほどです。段差の高さなどの数字はメモに残しておくと、あとでケアマネジャーに「いつ・どこで・何cmの段差か」をそのまま伝えられます。

1. 玄関

2. 廊下・階段

3. 居室・寝室(搬送人員がいちばん多い場所)

4. トイレ・洗面所

5. 浴室

6. 台所

7. 屋外(庭・勝手口)

屋外の高所作業は、統計のうえでも見過ごせません。国民生活センターが2020年4月から2025年7月に参画医療機関から収集した65歳以上の家庭内事故923件の分析では、脚立・はしごを使った庭木の剪定や屋根の修理などによる転落が、事故のきっかけ「転落」のうち75歳未満で1位(22件)、75歳以上で2位(27件)を占めました。同資料では、高所からの転落で骨折や頭蓋内損傷などの重大な事故になった割合は、転落事故全体の6割以上とされています。実家の高い所の作業は、業者か子世代が引き取るのが現実的です。

出典:国民生活センター「医療機関ネットワーク事業情報からみた高齢者の家庭内事故」(2025年10月29日公表/kokusen.go.jp(PDF)/2026年8月24日参照)。母数は参画医療機関を受診して報告された65歳以上の家庭内事故923件(75歳未満369件、75歳以上554件)で、全国の事故を網羅した統計ではありません。

お金をかけずに、今日のうちにできること

買い物より先に済ませられることがあります。どれも元に戻せるので、親と揉めにくいのも利点です。

  1. コードを動線から外す。まず試すのは、家具の配置を少し変えてコンセントの近くに寄せることです。それでも床を横切るなら、配線モール(床に貼るカバー)で壁ぎわに寄せます。国民生活センターの資料でも、わずか1〜2cmの敷居や絨毯の端、室内のコードに足を引っかけることが転倒の原因として挙げられ、室内のコードをまとめることが対策に含まれています。
  2. 敷いてあるマットを、固定するか外す。NITE(製品評価技術基盤機構)が公表している事故事例には、床に敷いたカーペット・ラグの上でスリッパを履こうとして滑って転倒したものがあります。対策として挙げられているのは、マットをテープなどで床に固定すること。使っていないマットは、いっそ外すほうが早いこともあります。
  3. 夜の動線に明かりを足す。買う前に確認したいのは、そもそもスイッチの位置です。「起き上がってから手が届く位置にスイッチがあるか」で解決することがあります。届かない場合に、人感センサー付きの足元灯を足します。
  4. 踏み台の使い方を直す。NITEの事例には、階段の踊り場で踏み台を完全に開かずに設置し、天板が山形になってバランスを崩し転倒したものがあります。止め具を確実にかけ、天板の中央に体重をかける。台所や玄関の踏み台も同じです。そもそも高い所の物は下ろしておくのが確実です。

出典:NITE「屋内で起こる高齢者の転倒・転落事故を防ぐ」(2020年5月28日公表/nite.go.jp/2026年8月24日参照)。2010〜2019年度の10年間に高齢者が被害者となった屋内事故790件のうち、転倒・転落事故は130件。ここで確認できるのは「固定していないマットの上で滑る」事例であって、「滑り止めマットの端でつまずく」という事例ではありません。

なお、実家の敷居に対策グッズを付けようとして「角をガードするクッションのようなものも見てみたが、厚みがあるため逆にそこにつまずきそう」と迷う声もあります(Yahoo!知恵袋への投稿。事実認定ではなく、読者と同じ立場の人の感想です)。段差を埋める物は、足の運びと同じ向きに、なだらかにつながっているかを現物で確かめてから決めるほうが確実です。

買って置くもの、場所別に1つずつ

このカテゴリの1本目なので、1つの商品を深掘りするのではなく、場所ごとに「こういう物を探す」という基準を並べます。実際の商品は、下の基準に照らして販売ページの表記を確認してください。

玄関・ベッド脇・トイレ:据え置き型の手すり(工事不要)

床に置くだけで、立ち上がりと方向転換を支えます。見るのは次の4つです。

参考にできる実売例:楽々健「床置き式手すり4段」(型番 ar-092-sd)は税込19,800円、高さ74/76/78/80cmの4段階調整、幅50.4cm×奥行60.4cm、重量12kg、耐荷重100kg(楽天市場の販売ページ/レビュー62件・評価4.48/2026年8月24日時点の価格。価格は変動します)。

居室・寝室:突っ張り型の縦手すり

床と天井の間に突っ張って立てる縦の手すりで、ベッドからの立ち上がりや、方向を変えるときの支えになります。見るのは対応する天井高耐荷重設置面(天井が石膏ボードや点検口の真下でないか、床が畳かフローリングか)。天井の下地がしっかりしていないと突っ張りが効かないので、設置場所は本体のサイズより先に決めます。

製品の例では、幅約60cm×奥行16cm、高さは180〜300cmに対応、重量約4.3kgといったスペックのものがあります。価格は、今回確認できた範囲では2万円台後半の製品がありました(確認できたのは1型番のみで、在庫状況によって表示価格が変わります)。突っ張り型は取り扱う店舗が限られ、在庫切れの出品がそのまま残っていることもあるので、買うときは複数のショップで型番と価格を見比べてください。

浴室:浴槽をまたぐための手すりと、床の滑り対策

浴槽の縁に挟み込んで固定するタイプの手すりは、工事なしでまたぐ動作の支えになります。確認するのは対応する浴槽の壁厚——ここが合わないと、そもそも取り付きません。買う前に、実家の浴槽の縁の厚みを測っておいてください。

参考にできる実売例:幸和製作所(テイコブ)「コンパクト浴槽手すり」(型番 YT01)は税込13,500円、幅16〜21.5cm×奥行27.5cm×高さ24〜26cm、重量2.3kg、耐荷重80kg、対応浴槽壁厚4.5〜13cm(楽天市場の販売ページ/レビュー50件・評価4.62/2026年8月24日時点の価格。価格は変動します)。

床の滑り対策では、洗い場に敷く折りたたみ式のすのこという選択肢があります。足元の冷たさがやわらぐほか、洗い場の床が敷いた厚みの分だけ上がるため、浴槽の縁との高低差が小さくなります(下の参考例の厚みは約2cmです)。またぎやすさが実際に変わるかは浴槽の形状と本人の動作によるので、置いたあとに本人がまたぐところを一度見てから、続けるか決めてください。サイズが合わずに端が浮くと、かえってつまずく原因になりますので、洗い場の実寸を測ってから選びます。

参考にできる実売例:Warm「パタッとすのこNEO ロングサイズ」は税込4,950円、広げた状態で約60×120cm・厚さ約2cm(折りたたむと厚さ約5cm)、素材はEVA樹脂+EPDM樹脂(正規販売店バスリエの販売ページ/2026年8月24日時点の価格。価格は変動します)。楽天市場の同型番の販売ページでも取り扱いがあり、レビュー30件・評価4.30です(同ページには価格が表示されていないため、価格の出典は正規販売店側です)。

廊下・トイレ動線:人感センサー付きの足元灯

夜中にトイレへ行くとき、電気をつけずに歩く親は珍しくありません。何度言ってもつけない、という相談も実際にあります。人が言葉で直せない習慣は、本人が何もしなくても点く仕組みに置き換えるほうが早い。

見るのは電源の取り方(コンセント直挿しか、乾電池式か)、点灯している時間明るさの3つです。廊下にコンセントがなければ乾電池式ですが、電池交換を誰がやるかまで決めておかないと、切れたまま放置されます。明るさは、まぶしすぎると目が慣れず、かえって足元が見えなくなるので、足元だけを照らす程度で足ります。

上がり框・敷居:ミニスロープで段差を埋めるか、段差を見えるようにするか

段差対策には方向が2つあります。スロープで埋めて段差をなくすか、段差はそのままにして、色や明るさで見えるようにするか。すり足で歩く親には前者、段差に気づいていないだけなら後者が向きます。

スロープを選ぶときは段差の高さ・幅と、スロープの長さ・耐荷重を突き合わせます。製品の例では、長さ74cm×幅40.5cm、重量約2.4kg、耐荷重約180kgで2枚を連結して使えるものなどがあります。スロープは、段差の高さに対して長さが足りないほど傾斜が急になります。何cmの段差に何cmの長さが必要かは製品ごとに適合表が示されているので、実家の段差を測ってから、その表に合う長さを選んでください。

以下は順位ではなく、場所ごとの選択肢を3つ並べたものです。編集部は実物を試しておらず、点数付けもしていません。

玄関・ベッド脇
🚪

置くだけで始められる:据え置き型の手すり

工事なし・元に戻せる

向いている実家
  • 立ち上がりのとき、家具や壁に手をついている
  • 親が「工事は大げさ」と嫌がっている
気になる点
  • 土台の分だけ床の面積を取る
  • 畳の上では沈み込むことがある

高さ調整の段数・耐荷重・土台の広さを見て選びます。要支援・要介護の認定があるなら、買う前にケアマネジャーへ。工事を伴わない手すりは福祉用具貸与の対象種目です。

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浴室
🛁

またぐ動作を支える:浴槽の縁に挟む手すり

浴槽の壁厚を測ってから

向いている実家
  • 浴槽に入るとき、縁や壁に手をついている
  • 浴室の工事まではまだ考えていない
気になる点
  • 対応する浴槽の壁厚が合わないと付かない
  • 耐荷重の表示(参考例のYT01は80kg)を必ず確認する。表示を超える使い方はできない

入浴補助用具は介護保険の「特定福祉用具販売(購入費支給)」の対象種目です。ただし個々の商品が給付対象になるかは、購入先や必要性の判断で変わるため、買う前にケアマネジャー・福祉用具専門相談員へ。

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夜の動線
💡

言っても直らない習慣を置き換える:人感センサー足元灯

本人が何もしなくても点く

向いている実家
  • 夜、電気をつけずにトイレへ行く
  • 寝室からトイレまでが遠い・曲がる
気になる点
  • 乾電池式は交換する人を決めておく必要がある
  • 明るすぎると足元が見えにくくなる

電源の取り方・点灯時間・明るさの3点で選びます。介護保険の給付対象種目ではないため、自費での購入になります。

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比較表|場所 × 対策 × 費用の目安 × 介護保険の扱い

どこに何を置けばいいのか、いくらかかるのか、介護保険が絡むのかを1枚にまとめました。上から順にやる必要はありません。チェックリストで気になった場所の行だけを見てください。

場所対策費用の目安介護保険での扱い
玄関据え置き型の手すり1万円台〜2万円台工事なし=福祉用具貸与の対象種目(手すり)
玄関・敷居ミニスロープで段差を埋める数千円〜1万円台工事なし=貸与の対象種目(スロープ)※固定用スロープは貸与と販売の選択制
廊下・階段人感センサー付き足元灯千円台〜数千円対象外(自費)
廊下・階段壁に手すりを取り付ける工事工事費(要見積り)住宅改修(20万円枠)の対象工事
居室・寝室突っ張り型の縦手すり2万円台後半工事なし=貸与の対象種目(手すり)
居室・寝室配線モール・コードの整理0円〜数千円対象外(自費)
居室・寝室マットを床に固定する/外す0円〜数百円対象外(自費)
トイレ据え置き型の手すり1万円台〜2万円台工事なし=貸与の対象種目(手すり)
トイレ和式から洋式便器への取替え工事費(要見積り)住宅改修(20万円枠)の対象工事
浴室浴槽の縁に挟む手すり1万円台入浴補助用具=購入費支給の対象種目
浴室折りたたみすのこ・浴室マット数千円〜1万円台入浴補助用具の種目に当たるかを窓口で確認。当たらなければ自費
浴室・脱衣所滑りにくい床材への変更工事工事費(要見積り)住宅改修(20万円枠)の対象工事
台所高い所の物を下ろす/踏み台を正しく使う0円対象外(自費)
庭・勝手口脚立を使う作業をやめ、人に頼む0円〜依頼費対象外(自費)

※価格は変動します。金額は幅で示しているので、買うときに各ショップの表示を必ず確認してください(本記事の価格情報の参照日:2026年8月24日)。

「介護保険の対象」は商品ではなく種目で決まる

この表の右端の列を、○×で書いていないのには理由があります。介護保険で決まっているのは「種目」——つまり「工事を伴わない手すりは福祉用具貸与の対象種目」「入浴補助用具は特定福祉用具販売の対象種目」という区分までです。個々の商品が給付の対象になるかどうかは、指定を受けた事業者から買ったか、ケアプラン上その人に必要と認められたかなどで変わります。「この商品は介護保険で買えます」と断言できる立場にいるのは、担当のケアマネジャー・福祉用具専門相談員・市区町村の窓口です。

費用を幅で示している理由

介護用品は、同じ型番でも店舗や時期で価格が動きます。実際、この記事の調査中にも、あるモールで在庫切れになっている出品と、別モールの同じ事業者の出品が同じ価格で並んでいる例がありました。円単位の金額を載せているのは、販売ページで直接確認できたものだけで、それ以外はレンジ表記にしています。

住宅改修費20万円枠は、何に使えて何に使えないのか

ここからは工事をする場合の話です。前提として、要支援1以上・要介護1以上の認定を受けていることが必要です。認定を受けていない段階では、住宅改修費も福祉用具の給付も使えません。

使えるのは6種類の工事だけ

厚生労働省の告示・通知(老企第34号)で、住宅改修費の対象は次の6種類に限られています。

  1. 手すりの取付け(廊下・便所・浴室・玄関・玄関から道路までの通路などが対象箇所)
  2. 段差の解消
  3. 滑りの防止および移動の円滑化等のための床または通路面の材料の変更
  4. 引き戸等への扉の取替え
  5. 洋式便器等への便器の取替え
  6. これらの工事に付帯して必要となる住宅改修

裏を返すと、この6種類に当たらない工事——見た目のためのリフォーム、部屋の増築、設備の入れ替えそのもの——は対象外です。「ついでにお風呂も新しくしよう」という話にすると、対象外の部分が混ざります。

金額の考え方

支給限度基準額は20万円です。これは「工事費のうち保険給付の計算対象になる上限」で、20万円を超えた分は全額自己負担になります。また20万円全額が戻るのではなく、自己負担は原則1割で、所得に応じて2割または3割になります。1割負担の人が20万円の工事をした場合、最終的な自己負担は2万円・給付18万円という計算になります。自分(親)が何割負担なのかは、毎年交付される「介護保険負担割合証」に記載されています。判定は市区町村が行うので、割合が分からなければ手元の負担割合証を見るか、介護保険の窓口へ確認してください。

20万円は一度に使い切る必要はなく、限度額の範囲内で複数回に分けて使えます。

工事の日に手元へいくら用意するか(償還払いと受領委任払い)

いま書いた「自己負担2万円」は最終的に残る負担額であって、工事の日に2万円だけ払えばよいという意味ではありません。厚生労働省の通知(老企第42号)では、住宅改修を完了して領収書などの書類を市町村に提出したあとに、市町村が支給を決定する手順になっています。つまりいったん工事費の全額を施工業者へ支払い、あとから保険給付分が払い戻される「償還払い」が原則です。20万円の工事なら、契約の時点で20万円を用意できるかどうかが問題になります。

この一時的な立て替えを避ける仕組みとして、工事のときは自己負担分だけを支払い、残りを市区町村が施工業者へ直接支払う「受領委任払い」を用意している市区町村があります。ただしこれは全国一律の制度ではなく、導入の有無も、対象になる業者が登録済みかどうかも市区町村によって違います。手元にいくら必要になるかは、契約前に実家のある市区町村の介護保険窓口と担当のケアマネジャーへ確認してください。

受領委任払いを設けている市区町村の例:新宿区「介護保険住宅改修費受領委任払いについて」(2026年8月24日参照)。登録事業者・様式・取扱いは市区町村ごとに定められているため、実家のある市区町村のページで確認してください。

順番を間違えると使えない——工事の前に市区町村へ出す

ここは、順番を間違えると20万円枠そのものが使えなくなるところです。厚生労働省の通知(老企第42号)には、「被保険者は、住宅改修を行おうとする前に、以下の申請書又は書類の一部を市町村に提出することとなる」と書かれています。つまり着工前です。良かれと思って先に工事を済ませてしまうと、20万円枠を使えなくなることがあります。

提出することになっているのは、次の内容が分かる書類です。

理由書を書くのは、基本的には居宅サービス計画等を作成する介護支援専門員(ケアマネジャー)や、地域包括支援センターの担当職員です。市町村の福祉用具・住宅改修支援事業などとして相談・助言を行う福祉、保健・医療または建築の専門家が関わることもあります。つまり、家族が自力で書類を整えるのではなく、まずケアマネジャーに「実家に手すりを付けたい」と伝えるところから始まります

※申請書の様式、添付書類の細目、受付窓口は市区町村ごとに定められています。書類名や手順の細かい部分を全国一律のものとして受け取らず、実家のある市区町村の介護保険窓口で確認してください。最終的な判断は、担当のケアマネジャー・地域包括支援センター・市区町村の窓口が行います。

介護保険の申請の流れを見る

工事をしない手すりは、住宅改修ではなく福祉用具貸与の側

「置くタイプの手すりでも補助は出るのか」——これは実際によくある疑問です。答えは制度の入口が違うで、住宅改修ではなく福祉用具貸与(レンタル)の側になります。

なお、これは「レンタルしか選べない」という意味ではありません。認定を受けていない場合や、給付を使わずに自分で買う場合は、同じ種類の手すりを自費で購入できます(この記事で実売価格を挙げているのは、その自費購入を想定した例です)。給付を使ってレンタルするか、自費で買うかは、使う期間と費用を見てケアマネジャーと相談して決めてください。

分かれ目は、工事をするかどうか

厚生労働省の告示・通知(老企第34号)では、福祉用具としての手すりは「取付けに際し工事を伴わないもの」に限られ、居宅の床に置くなどの方法で転倒予防や移動・移乗の動作に役立てるものが対象種目とされています。一方、床や壁への固定工事を伴う手すりの設置は、住宅改修の側です。

どちらの制度になるかは、工事をするかどうかで自動的に決まります。「同じ手すりなのに窓口が違う」と混乱したときは、工事をするかどうかだけを見れば整理できます。

手すり・スロープは、要支援の段階でも原則としてレンタルの対象

福祉用具貸与には、要支援1・2と要介護1の「軽度者」は原則として借りられない種目があります(車椅子や介護ベッドなど)。ただし手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえの4種目は、軽度の段階でも原則としてレンタルの対象とされています。「まだ要支援だから何も使えない」と思い込む必要はありません。

ただし個別の可否は、担当のケアマネジャーや福祉用具専門相談員の判断によります。いずれにしても要支援1以上・要介護1以上の認定が前提である点は変わりません。

入浴・排泄まわりの用具は「買う」扱いになる

浴槽用の手すりやシャワーチェアなどの入浴補助用具、ポータブルトイレなどの腰掛便座は、レンタル(福祉用具貸与)ではなく特定福祉用具販売(購入費支給)の対象種目として区分されています。購入費にも上限があるので、金額の枠は市区町村の窓口で確認してください。

貸与と販売の切り分け、費用の相場、軽度者の扱いは歩行器・車椅子は買うのとレンタル、どっちが得?で詳しく整理しています。

迷ったら誰に聞くか

親が「まだいらない」と言ったときの進め方

手すりを提案して断られた、という話はよく聞きます。断り文句は、だいたい2つに分かれます。

工事をしない物から始める

後者(費用への抵抗)には、置くだけ・貼るだけの物から入ると、費用が数千円〜数万円で済み、外せば元に戻せるという点で親の懸念とかみ合います。工事をしないものは、気に入らなければ外して元に戻せる——この一点が、親にとっては「取り返しがつく」という意味を持ちます。壁に穴を開ける話をいきなり持ち出すと、話の重さが変わります。

「転ばないため」ではなく「うちが安心したいから」と言い換える

「転ぶと危ないから」は、どう言い換えても「あなたはもう危ない人だ」と聞こえます。主語を自分に移すほうが、親が「自分が責められている」と感じにくく、話を受け入れやすくなります。「こっちが心配で仕事が手につかないから、自分のために付けさせてほしい」。実際、離れて暮らしていると、転んだことを親が言わなければ、次に電話するまで分かりません。心配しているのは事実なので、嘘をつく必要もありません。

親の家であることを動かさない

置き場所や色を親に選んでもらう、いくつか候補を見せて決めてもらう——決めるのは本人という前提を崩さないほうが、結局は早く進みます。子が良かれと思って勝手に設置すると、使われないまま部屋の隅に寄せられることがあります。

それでも動かないときは、無理に押し切らず、0円でできること(コード・マット・明かり)だけ先に済ませておくのが現実的です。物を増やさないので、反対されにくい。

まだ認定を受けていない段階でやっておくこと

要介護認定を受けていないと、住宅改修費も福祉用具の給付も使えません。とはいえ、今できる準備が2つあります。

地域包括支援センターの場所を調べておく

実家のある市区町村の名前と「地域包括支援センター」で調べれば、担当エリアのセンターが分かります。離れて暮らしていても、電話で状況を伝えれば相談に乗ってもらえます。認定の申請から関わってくれるので、「そろそろかもしれない」という段階で連絡先だけ控えておくと、いざというときに探さずに済みます。

ヒヤリとした出来事を、日付と状況でメモしておく

要介護認定の調査では、日常生活でどこにどう困っているかが具体的に伝わるかどうかで、調査員が記録する内容や認定の結果が変わってきます。親は調査の場では気丈に振る舞いがちで、実際より元気に見えることも珍しくありません。

だから、気づいたときに残しておきます。「◯月◯日、玄関で靴を履くとき下駄箱に手をついてよろけた」「◯月◯日、夜中にトイレで転んで肘を打ったと電話で言っていた」。日付・場所・そのときの動作の3点だけで十分です。チェックリストで見た段差の高さや写真も、同じメモに入れておくと、ケアマネジャーに状況を渡すときにそのまま使えます。

認定の申請の流れは親の介護、何から始める?最初の手続きまとめにまとめています。

よくある質問

実家に帰ったとき、まずどこを見ればいいですか?

親がいちばん長くいる部屋(居室・寝室)の床です。東京消防庁管内・令和6年中のデータでは、住宅内で「ころぶ」事故により搬送された高齢者42,180人のうち、居室・寝室での発生が29,783人と、2位の玄関・勝手口等3,900人を大きく上回っています。ベッドや布団から起き上がって最初の3歩の先に、コードやめくれたマットの端がないかを見てください。

介護保険の住宅改修費20万円は、いつ申請すればいいですか?

工事の前です。厚生労働省の通知には「住宅改修を行おうとする前に」申請書または書類を市町村に提出することとなる、と書かれています。先に工事を済ませてしまうと、支給を受けられないことがあります。提出内容は、改修の内容・箇所・規模、費用の見積もり、必要と認められる理由が記載されたもの、予定の状態が確認できるもの。理由書は基本的にケアマネジャーや地域包括支援センターの職員が作成します。様式や窓口は市区町村ごとに定められているので、実家のある市区町村の介護保険窓口で確認してください。

置くだけの手すりも、介護保険の対象になりますか?

制度の入口が変わります。工事を伴わない手すり(据え置き型・突っ張り型)は、住宅改修ではなく福祉用具貸与=レンタルの対象種目です。壁や床に固定する工事をする手すりが、住宅改修(20万円枠)の側になります。分かれ目は工事をするかどうかだけです。なお、個々の商品が給付対象になるかは購入先やケアプラン上の必要性で変わるため、ケアマネジャー・福祉用具専門相談員に確認してください。

親が手すりを嫌がります。どう進めればいいですか?

工事をしない物から始めるのが現実的です。置くだけ・貼るだけなら、気に入らなければ外して元に戻せます。伝え方も、「転ぶと危ないから」だと「あなたはもう危ない人だ」と聞こえがちなので、「こちらが心配だから、自分のために付けさせてほしい」と主語を自分に移すと、親が「自分が責められている」と感じにくくなります。置き場所や色は本人に選んでもらい、決めるのは本人という前提を崩さないでください。動かないときは、コードの整理・マットの固定・夜の明かりなど0円でできることだけ先に済ませる手もあります。

まだ要介護認定を受けていません。何もできませんか?

介護保険の住宅改修費も福祉用具の給付も、要支援1以上・要介護1以上の認定が前提なので使えません。ただし、自費でできる対策(コードを動線から外す、マットを固定する、夜の動線に明かりを足す、置くだけの手すり)は今日からできます。並行して、実家のある地域の地域包括支援センターの連絡先を調べておき、ヒヤリとした出来事を日付・場所・動作の3点でメモしておくと、認定の申請や調査のときに状況をそのまま伝えられます。

浴室は転倒が多い場所ではないのですか?

上位5位の表に浴室が出てこないのは、その表が「ころぶ」事故だけの集計だからです。浴室の事故の多くは別分類の「おぼれる」として数えられています。同じ東京消防庁の資料では、令和2年からの5年間の集計で、入院が必要な中等症以上と診断された割合は「おぼれる」事故が98.4%と事故種別のなかでもっとも高くなっています。浴室は、搬送人数の順位ではなく、起きたときの重さで見る場所です。

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