工事なしで置ける手すり。据え置き型と突っ張り型、どっちを選ぶか
賃貸で壁に穴を開けられない、親が工事を嫌がる。そんな事情がある人へ

PR本ページはプロモーション(広告)を含みます。製品の評価・順位は収益で変えていません。運営・選定方針

実家に手すりを付けたいけれど、賃貸だから壁に穴を開けられない。親が「工事は大げさだ」と嫌がる。そういう事情で、置くだけ・突っ張るだけの手すりを探している人は多いはずです。そして最初に引っかかるのは、たいてい「置いただけの手すりに、親が体重を預けて大丈夫なのか」という一点でしょう。ここでは、その問いに構造から答えます。据え置き型と突っ張り型は支え方がまったく違い、そのせいで置ける場所も、うまくいかないときの壊れ方も違います。メーカーが取扱説明書に書いている条件と、公的資料に書かれている範囲を確認しながら、どちらをどこに置くか、何を見て選ぶかを順に整理します。

先に結論

順序としては、まず工事で付ける手すり(住宅改修)が検討の対象です。厚生労働省の選定の判断基準が、その順序を指定しています。そのうえで賃貸・親の抵抗・急ぎ・状態が変わりそう、といった事情があるときに、工事なしの手すりを選びます。

工事なしの手すりは床に置く「据え置き型」天井と床で突っ張る「突っ張り型」の二択。据え置き型は使う人がベースを踏んで押さえる構造なので、置く床の状態と隙間の取り方が要点になります。突っ張り型は天井の条件が合わないとそもそも立たず、取り付けを販売店の作業として指定している製品もあります。要支援・要介護の認定があるなら、買う前にケアマネジャーへ。 → 用途別の候補を見る

手すりは本来、工事で付けるもの。それでも工事をしない選び方がある

検索して最初に目に入るのは「工事不要」という言葉ですが、公的な基準側の順序は逆になっています。ここを取り違えたまま商品を選ぶと、あとで「やっぱり壁に付けた方がよかった」と戻ることになるので、はじめに順序を確認しておきます。

厚労省の選定基準は「まず住宅改修の手すりを検討したうえで」と書いている

厚生労働省の『介護保険における福祉用具の選定の判断基準』は、手すりの項でこう書いています。手すりの貸与にあたっては、安全性を高める観点から住宅改修における「手すりの取り付け」について検討した上で、利用者の状態変化の可能性や、利用者の住環境における設置可否などを踏まえて選定する。さらに、貸与する場合であっても長期間の利用が考えられる、あるいは長期間となっている場合は、住宅改修における「手すりの取り付け」に移行することなども検討する、と続きます。

つまり、置く・突っ張るタイプは工事の手すりを検討したうえで選ぶものという位置づけです。「工事がいらないから手軽で安心」という順番ではありません。以下も、その順番で並べます。

それでも工事をしない事情がある

とはいえ、現実には工事の手すりを選べない・選びたくない事情があります。よくあるのは次のようなところです。

4つ目の「状態が変わりそう」は、実は基準側も想定しています。選定の判断基準が「利用者の状態変化の可能性」を選定の材料に挙げているのは、その意味です。逆に、状態が落ち着いて長く使うと分かった時点では、工事の手すりへ移すことが検討事項になります。工事なしの手すりは、工事の代わりであると同時に、工事までのつなぎにもなるという書き方が、制度の想定に近いはずです。

実家のどこが危ないかをまだ絞り込めていないなら、まず実家の転びやすい場所7つと、帰省時10分チェックリストで場所を決めてから、この記事に戻ってくると選びやすくなります。

工事なしの手すりは「置く」か「突っ張る」かの二択

名前はメーカーによって違います(据え置き型/床置き型、突っ張り型/垂直型など)。ただし支え方で分ければ、次の2通りしかありません。

据え置き型は、使う人がベースを踏んで押さえる構造

床に平たいベースプレートを置き、そこから手すりが立っている形です。ここで誤解されやすいのが「本体が重いから倒れない」という理解です。

モルテンの床置き型手すり「ルーツ」の取扱説明書は、安定性の説明としてこう書いています。ルーツはベースプレートの上に人が乗るなどして、荷重を加えた状態で使用する床置き型手すりです、と。自重で立っているのではなく、使う人自身がベースを踏むことで押さえている設計だ、という説明です。

そう読むと、同じ取扱説明書が並べている禁止事項が、一続きの理屈としてつながります。マットレスやクッションなど柔らかい物の上で使わないのは、踏んでも沈んでベースが効かないから。段差のある床や滑りやすい床で使わないのは、ベースが全面で床に当たらないから。手すりを横から引っ張るとベースプレートが持ち上がり、床とのすき間に足の指をはさむおそれがある、という警告が入っているのは、踏んでいない側が浮きうるからです。

本体重量が無関係というわけではありませんが、重さは主に「動かしにくさ」の指標です。安定の主因はベースの寸法と、そこに荷重がかかる置き方かどうかにあります。

突っ張り型は、天井と床の間で突っ張って支える構造

床から天井まで届く柱を立て、上下に押し広げる力で固定します。壁に頼らないので、部屋の真ん中でもベッドの脇でも立てられるのが利点です。ただし成立条件が天井側にあります

モルテンの垂直型手すり「バディー」は、対応天井高さ1.9〜2.8m、税込55,660円(税抜50,600円)、介護保険福祉用具貸与品としてメーカーが公表しています。取扱説明書では最大利用者体重100kgです。この「対応天井高さ」に上限だけでなく下限もあるところが、突っ張り型を選ぶときの最初の関門になります。天井が低すぎても、その製品は成立しません。

もうひとつ、同じバディーの取扱説明書には、取り付け・取り外しおよび設置場所の移動は販売店で行ってください、お客様による取り付け・取り外し・移動はしないでください、という指示が入っています。メーカーの製品ページは「工事不要の簡単設置」と説明していますが、それは工事を伴わないという意味であって、購入者が自分で組み立ててよいという意味とは限りません。突っ張り型には、そもそも自分で設置する前提で作られていない製品があるということです。後述の「用途別の候補」で突っ張り型に購入枠を置いていないのは、この指示があるからです。

支え方が違うので、置ける場所も失敗の仕方も違う

2つの違いを、選ぶときに効く順に並べると次のようになります。

見るところ据え置き型(床置き型)突っ張り型(垂直型)
何が支えているか床に置いたベース。使う人が踏んで押さえる天井と床を押し広げる力
成立の条件平らで硬い床と、ベースを置くだけの面積対応する天井高さと、突っ張りに耐える天井
向く置き場所トイレ、玄関、ベッド脇、いすの脇ベッド脇、部屋の中ほど、向きを変える場所
うまくいかない置き方畳・カーペット・マットレスの上、段差や傾斜のある床下地のない天井、斜め天井、点検口や照明のそば
足元ベースの段差につまずくことがある床の接地面だけなので足元は広い
設置自分で置ける製品が多い販売店の設置を指示している製品がある
置き直し比較的やりやすい(重量による)気軽に動かす前提ではない

場所別・据え置き型と突っ張り型のどちらが向くか

置き場所を決める材料として、まず「どこで転んでいるのか」を見ます。東京消防庁が公表している救急搬送データでは、令和6年中に「ころぶ」事故で救急搬送された高齢者は73,500人。うち住宅等居住場所の42,180人を場所別に見ると、屋内での発生が39,053人で9割以上を占め、内訳は居室・寝室等が29,783人、玄関・勝手口等が3,900人、廊下・縁側・通路が2,653人、トイレ・洗面所が1,229人、台所・調理場等が1,079人でした。

※東京消防庁が令和2年から令和6年の救急搬送データとして公表しているもののうち、令和6年中の数値です。集計対象は東京消防庁管内(稲城市、島しょ地区を除く)で、全国の統計ではありません。

上位に来るのは居室・寝室、玄関、廊下、トイレ。手すりを置く場所を考える順番も、だいたいここに沿います。

場所向くタイプ先に測るもの注意
玄関の上がり框据え置き型(框をまたぐ形状)上がり框の高さ、土間の広さ固定方法によって介護保険の扱いが変わることがある
トイレ据え置き型(便器を囲む形)便器の幅、便座からの高さ、扉の開き介助者が横に立つ余地を残す
ベッド脇・立ち上がりどちらも候補になるベッドとの隙間の指定、対応天井高さ隙間の扱いが事故に直結する
居室で向きを変える場所突っ張り型天井高さ、天井の下地模様替えのたびに動かせる製品とは限らない
廊下・階段工事の手すりを先に検討手すりが要る区間の長さ連続した長さが要る場所は工事側が本来の解
浴室・浴槽まわり制度の区分が別浴槽の縁の厚み入浴補助用具は購入費支給の側

玄関の上がり框

玄関は、先ほどのデータで居室・寝室の次に多い3,900人の場所でした。段差をまたぎながら靴を脱ぐという、片足立ちに近い動作が入るからでしょう。

上がり框用の手すりには、置くだけのタイプと、固定板を框や床にネジで留めるタイプがあります。見た目は似ていますが、この違いは介護保険の扱いにまで効きます(後述)。買う前に、その製品がどちらなのかを商品ページの設置方法の欄で確認してください。

置くだけのタイプについては、手すり工事を請け負う業者側の記事でも、重いボードを上がり框の上に置くだけのものは踏んだときに動いてしまい、その隙間につまずく恐れがあるという指摘が出ています。土間側は水や砂が上がる場所でもあるので、床が平らで滑らないかも確認してください。

トイレ

トイレの手すりは、便器を囲んで据え置く形が一般的です。介護保険の通知でも、この形は「便器又はポータブルトイレを囲んで据え置くことにより、座位保持、立ち上がり又は移乗動作に資することを目的とするもの」として、床に置くタイプとは別に書き分けられています。それだけ定番の形だということです。

見るのは幅の調整範囲と、扉が内開きのときに干渉しないか。親に介助が要るなら、介助者が横に立てる余地が残るかも一緒に見ます。手すりを入れた結果、介助者が入れなくなるのでは意味がありません。

ベッド脇・立ち上がり

起き上がって、足を下ろして、そこから立つ——ベッド脇は動作が3つ重なる場所です。据え置き型も突っ張り型も候補になりますが、ここは据え置き形手すりとベッドのすき間に体が挟まれる死亡事故のシナリオが、NITEの報告書で挙げられている場所でもあります。隙間の扱いだけは自己流で決めないでください。後の章で、なぜ「隙間をなくせばいい」と書けないのかを説明します。

廊下・階段は、工事の手すりを先に検討する場所

廊下や階段に要るのは、連続した長さのある手すりです。工事なしの手すりは1本ずつ独立して立つので、必ず途切れます。途切れた先に手をつくところがない状態は、何もない廊下より危ないこともあります。ここは住宅改修の「手すりの取付け」が本来の解で、20万円の支給限度基準額と着工前申請の順番は柱記事の該当節に整理しています。

浴室・浴槽まわりは扱いが別になる

浴槽の縁に挟む手すりやシャワーチェアは、福祉用具貸与ではなく特定福祉用具販売(購入費支給)の側です。直接肌に触れる用具はレンタルになじまないためと説明されることが多いのですが、これは二次情報の解説であって、厚生労働省の資料が区分の理由まで書いているわけではありません。選ぶときに見る数値も、浴槽の壁厚など別のものになります。浴室は親の入浴が心配になったら|動作別の道具ガイドにまとめているので、そちらへ。

突っ張り型が設置できない天井と床

突っ張り型が「買ったのに使えない」となる原因のひとつが、天井側の条件です。メーカーが公表している設置条件から順に見ていきます。

対応天井高さには上限と下限がある

上で触れたバディーの対応天井高さは1.9〜2.8mでした。高すぎても低すぎても対象外になります。実家の天井高を測るのは、商品を選ぶ前です。メジャーが届かないなら、床から鴨居や建具の高さを測って、そこから上を足す方法でも見当はつきます。

天井の下地がないところには突っ張れない

天井板は、それ自体で人を支えるための部材ではありません。福祉用具事業者の解説でも、天井には梁が縦横にめぐっていて、そこに突っ張り棒の天井部分がかかるように設置することでしっかり固定される、ただし天井の強度が高くない場合は設置ができないケースがある、と説明されています。

下地の確認は飛ばさないでください。突っ張り型は天井側の強度で成立している構造なので、天井の条件が満たされていない状態でも、立てた時点でぐらつきが出るとは限りません。メーカーの取扱説明書も、天井の下地と対応天井高さを設置の前提条件として挙げています。設置を業者に頼む場合でも、天井の下地と対応天井高さを確認したうえでの設置かどうかを、その場で聞いてください。

斜めの天井、柔らかい床、段差のある床は避ける

「取り付け・取り外し・移動は販売店で」と書かれている製品がある

繰り返しになりますが、バディーの取扱説明書は取り付け・取り外し・設置場所の移動を販売店の作業として指定しています。突っ張り型を検討するときは、まずその製品を自分で設置してよいのかを取扱説明書で確認してください。ここを読まずに通販で買うと、届いてから設置できないことに気づく順番になります。

販売店の設置が前提の製品なら、購入するより貸与で相談したほうが話が早く進みます。福祉用具貸与では、搬入・設置・調整までを事業者が行うのが一般的です。ただし、どこまでを事業者が行うかは契約によって変わります。設置を誰がするのかは契約の前に確認してください。

賃貸で気にすべきは穴ではなく「設置跡」

「工事をしないから賃貸でも大丈夫」というのは、半分だけ当たっています。

突っ張り型手すりの取扱説明書には、天井材や床材の種類によっては設置跡や油分が残る場合があります、必ず利用者様の同意を得て使用してください、という警告が入っています。跡が残ることは、メーカー側の想定内だということです。「穴が開かない」と「跡が残らない」は別の話でした。

では退去のときの費用はどうなるのか。国土交通省の原状回復ガイドラインの分担表には、突っ張り棒や突っ張り型手すりという項目そのものがありません。書けるのは一般原則までです。借主の負担側に挙げられているのは、重量物をかけるためにあけた壁のくぎ穴・ネジ穴で下地ボードの張替えが必要な程度のものや、賃借人が天井に直接つけた照明器具の跡など、通常の使用による損耗を超える損傷です。突っ張り跡がそこに当たるかどうかは、契約の内容と損傷の程度によって変わります。

行動に落とすと、順番はこうなります。

  1. 設置の前に、貸主か管理会社へ「床から天井まで突っ張る手すりを立てたい」と伝えて相談する。口頭だけでなくメールなど記録の残る形で。
  2. 設置予定の天井と床を、設置前の状態で写真に撮っておく。日付が残る撮り方で、天井側と床側の両方を。
  3. 賃貸借契約書の原状回復の条項を読む。特約が付いていて、ガイドラインの一般原則と違う分担になっていることがあります。

※退去費用の負担がどちらになるかは、Q&Aサイトに断定的な回答が並んでいますが、それは根拠になりません。最終的な線引きは契約内容と損傷の程度によって変わるため、賃貸借契約書の確認と、貸主・管理会社への相談が必要です。

据え置き型で見る数値と、ベッド脇の隙間

ベースの寸法・重量・最大使用者体重・高さ調整範囲

据え置き型の商品ページで見るのは、この4つです。

実際の数値の例を挙げます。トイレ用の据え置き型であるアイリスオーヤマ「TRT-64A」は、幅56〜66cm(5段階調節)×奥行44.5cm×高さ64.5cm、最大使用者体重100kg、素材はスチールとポリプロピレン。楽天市場の販売ページでは税込8,550円・在庫ありの表示でした(暮らし健康ネット館/2026年8月25日時点)。同じ型番でも販売店によって価格が違うので、買うときは自分が開いているページの金額を見てください。

ベッドとの隙間は、その製品の取扱説明書の指定に合わせる

ここは一般論で書けない部分です。公表資料とメーカーの取扱説明書が、逆の方向を向いているように読めるからです。

製品評価技術基盤機構(NITE)は、事業者向けの提言として、ベッド脇の据え置き形手すりについて、手すりをベッドへ固定する器具の取り付け、または手すりが動かないような対策を挙げています。一方、モルテンの床置き型手すり「ルーツ」の取扱説明書は、ベースプレートや手すりをベッドに固定しないでください(はさみ込みによりケガのおそれ)と書き、そのうえで手すりとベッド側面との間のすき間を2〜12cmに設定して使用してください、密着させた状態やすき間を空け過ぎた状態で使用しないでくださいと指定しています。

ここから読み取れるのは2つです。密着も空けすぎも、どちらも禁止されていること。そして正解の数値は製品ごとに違うこと。「隙間をなくせば安全」と一般化しないでください。自己流で詰めるのも、余裕をみて離すのも、その製品の指示から外れます。

ベッド脇に手すりを置くなら、取扱説明書の該当ページを写真に撮って親の部屋に貼っておく方法があります。シーツ交換や掃除で一度どかしたときに、指定されたすき間の寸法を忘れたまま元に戻してしまうことも起こりえます。

置く床と、足元の動線

公表資料が言っていること(事故と注意喚起)

手すりの事故について、数字を出せる公表資料は多くありません。ここでは確認できた範囲だけを書きます。件数が少ないことと、危険が小さいことは別です。

NITEの手すり事故分析

NITEは2022年6月に「手すりの事故防止対策報告書」を公表しています。NITEに集まった事故情報47,361件から、60歳以上の手すり・はしご類の事故199件(人的被害があったもの196件)を抽出し、そのうち手すりが32件。さらに、テクノエイド協会の福祉用具ヒヤリハット情報371件から手すり関連の20件を抽出して用途別に整理したところ、床置き型が最も多かったと報告されています。

件数より重いのは、事故の起き方です。報告書が典型として挙げているのは、据え置き形手すりとベッドの間の隙間に体が挟まれる経緯で、危害の程度は最も重い区分(死亡)として評価されています。もう一方の転倒側は、固定部が破損して手すりごと倒れ、骨折に至る経路です。手すりを引っ張るように体重を預けて立ち上がろうとする使い方が、その入口のひとつとして挙がっています。

どちらも「置き方」と「使い方」の話です。製品の善し悪しより先に、どこにどう置いて、どう使うかが結果を分けている、と読めます。

規格に書かれていない範囲がある

NITEは、据え置き形手すりのJIS(T9281)にも、BL(優良住宅部品)規格にも、ベッドとの隙間を作らないことや安全マットの併用を求める記載はないと指摘しています。規格が禁止事項の細部まで決めているわけではない、ということです。

だから、その製品固有の条件はメーカーの取扱説明書を読むしかありません。ネットの一般論と取扱説明書が食い違ったら、取扱説明書が優先です。

介護ベッドの柵・サイドレールの事故とは別の話

検索すると、介護ベッドと柵の間に首などが挟まれる事故の注意喚起が出てきます。消費者庁は、事故情報データバンクに2015年1月から2020年7月末までに31件が寄せられ、うち19件が死亡事故、9件が治療期間1か月以上の重傷事故だったとしています。

ただしこれは介護ベッドに付属する柵・サイドレールの話で、工事なしの置き型・突っ張り型手すりとは製品の区分が違います。混ぜて読まないでください。ベッド周りに人が入り込める隙間ができるという構図が似ているだけです。

突っ張り型に絞った事故件数は、公表資料が見つからない

突っ張り型(天井支持型)の手すりに絞った事故件数を公表している資料は、NITE・消費者庁・国民生活センターのいずれにも見つけられませんでした。件数がないことは、安全であることの証明ではありません。突っ張り型についてメーカーの取扱説明書の禁止事項を引いているのは、それが確認できる一次資料だからです。

なお、厚生労働省の選定の判断基準は、手すりの参考情報として日本福祉用具・生活支援用具協会がまとめた「『突っ張り型手すり』を安全にお使いいただくために」という資料を挙げています(このリンク先は現在開けず、中身は確認できていません)。行政側が突っ張り型を手すりの一種として扱っている、という事実の確認まではできます。

用途別の候補

用途別に並べます。順位ではありません。編集部は実物を試しておらず、点数も付けていません。価格・在庫は、その金額が実際に表示されている販売ページの2026年8月25日時点の表示です。

用途先に見る数値確認した価格
トイレ便器を囲む据え置き型幅の調整範囲、便座からの高さ税込8,550円
(確認した1製品=アイリスオーヤマ TRT-64A/2026年8月25日時点)
立ち上がり・ベッド脇床に置く据え置き型ベース寸法、最大使用者体重、隙間の指定税込13,800円
(確認した1製品=「らくらくたっち」/2026年8月25日時点)
ベッド脇(レンタル前提の本格タイプ)ベースプレートの大きい床置き型ベッドとの隙間の指定、最大利用者体重税込67,518円
(モルテン ルーツ サイドタイプ MNTPLBR/メーカー公表)
居室で向きを変える突っ張り型(垂直型)対応天井高さ、天井の下地税込55,660円
(モルテン バディー/設置は販売店)
玄関の上がり框框をまたぐ形(置くだけ/ネジ留め)上がり框の高さ、固定方法掲載を保留
(固定方法と価格を確認できた製品がないため)

※玄関の上がり框用は、置くだけのタイプとネジで留めるタイプで介護保険の扱いが変わるため、固定方法まで販売ページで確認できた製品だけを載せる方針にしています。現時点で条件を満たす製品を確認できていないので、この枠は空けてあります。ベッド脇の本格タイプ2つは本体価格が5万〜6万円台で、購入よりレンタルで相談する価格帯です。

トイレ
🚽

便器を囲んで据え置く:トイレ用サポート手すり

税込8,550円/最大使用者体重100kg

向いている実家
  • 便座から立つとき、壁や紙巻器に手をついている
  • トイレの床が平らなフローリングかクッションフロア
気になる点
  • 便器の左右にベースの面積を取る。扉が内開きだと干渉することがある
  • 介助者が横に立つ余地が残るかは、実際に測って確認が要る

アイリスオーヤマ TRT-64A。幅56〜66cm(5段階調節)×奥行44.5cm×高さ64.5cm、素材はスチールとポリプロピレン。介護保険の通知でも「便器又はポータブルトイレを囲んで据え置く」形は貸与の対象種目として書かれていますが、個々の製品が給付対象になるかはケアマネジャー・福祉用具専門相談員へ確認してください。

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立ち上がり・ベッド脇
🛏️

床に置いて立ち上がりを支える:立ち上がり補助手すり

税込13,800円/最大使用者体重100kg

向いている実家
  • ベッドやいすから立つとき、家具の角に手をついている
  • 床がフローリングで、置くだけの面積を取れる
気になる点
  • ベッド脇に置くなら、その製品の取扱説明書が指定する隙間に合わせる必要がある
  • 販売ページにメーカー名・メーカー型番の記載がなく、型番で一意に特定できない

商品名「らくらくたっち」。販売ページの記載は幅約47〜69×奥行約38.5〜47×高さ80cm、重量約5.2kg、最大使用者体重100kg、原産国は中国。メーカー名・メーカー型番の欄が空欄のため、メーカーは特定せず、販売ページに書かれている数値だけを載せています。ベッド脇に置く場合は、隙間の指定がある製品かどうかを取扱説明書で確認してください。

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突っ張り型
📋

突っ張り型は「買う」より「レンタルで相談する」

商品枠は置いていません

レンタルで相談する理由
  • 取り付け・取り外し・移動を販売店の作業として指定している製品がある
  • 天井の下地と天井高さの確認を、専門相談員が現場で行える
それでも自分で買うなら
  • まず天井高さを測り、対応範囲に入っているかを確認する
  • 取扱説明書を読み、自分で設置してよい製品かを確かめてから注文する

突っ張り型の購入枠は置いていません。前述のとおり、取扱説明書が取り付け・取り外し・移動を販売店の作業として指定している製品があるからです。メーカー公表の本体価格も5万円台です。工事を伴わない手すりは福祉用具貸与の対象種目なので、要支援・要介護の認定があるなら、まずケアマネジャーか福祉用具専門相談員に「天井に突っ張るタイプを検討している」と伝えてください。

レンタルと購入、どっちが得か 介護保険の申請から見る

介護保険の扱い

制度の全体像は柱記事に書いてあるので、ここは工事なしの手すりに固有の2点だけにします。

「工事」にはネジ等で家に取り付ける簡易なものも含まれる

福祉用具貸与の対象になる手すりを定めた厚生労働省の通知(平成12年 老企第34号)は、対象を次の2つに限っています。ひとつは、居宅の床に置いて使用すること等により、転倒予防もしくは移動または移乗動作に資することを目的とするもので、取付けに際し工事を伴わないもの。もうひとつは、便器またはポータブルトイレを囲んで据え置くことにより、座位保持、立ち上がりまたは移乗動作に資することを目的とするもので、やはり取付けに際し工事を伴わないもの。

そのうえで同じ通知は、取付けに際し工事(ネジ等で居宅に取り付ける簡易なものを含む。)を伴うものは除かれるとしています。ここが見落とされやすいところです。壁を壊すような工事だけが「工事」なのではなく、ネジ1本で家に留めれば、それはもう工事の側という書かれ方をしています。そして、工事を伴う場合であって住宅改修告示の「手すりの取付け」に該当するものは、住宅改修としての給付の対象になる、と続きます。

玄関の上がり框用の手すりに、置くだけのタイプと框や床にネジで留めるタイプがあると書いたのは、この線引きに直接かかるからです。同じ「上がり框用」でも、固定方法によって介護保険の入口が変わることがあります。

借りられるかどうかは、製品ごとの判断になることがある

「工事なしなら必ずレンタルできる」とは書けません。告示・通知が定めているのは種目の範囲で、個々の製品が給付の対象になるかどうかには保険者(市区町村)の判断が入ります。実際、手すり以外の機能を併せ持つ製品(踏み台が一体になったものなど)について、手すり以外の機能を含むとして対象外と判断された例があります。

ですから、判断はここで止めます。その製品が借りられるかどうかを決められるのは、担当のケアマネジャー・福祉用具専門相談員・市区町村の窓口です。買う前に一度聞いてください。レンタルなら、合わなかったときに替えられます。

制度の入口(工事なし=福祉用具貸与/工事あり=住宅改修20万円枠)と、要支援の段階でも手すりが原則レンタルの対象になる理由は実家の転びやすい場所7つと、帰省時10分チェックリストに整理しています。レンタルと購入の損得は歩行器・車椅子は買うのとレンタル、どっちが得?へ。まだ要介護認定を受けていないなら、順番としては申請が先です。

介護保険の申請の流れを見る

買う前・借りる前に確認する5つ

  1. 親が実際に手をつく高さ:カタログの数値より先に、親が今つかまっている場所の高さを測ります。壁についた手あと、家具の角、冷蔵庫の取っ手。そこが答えに近いことが多いです。
  2. 握れる太さかどうか:手が小さい、握力が落ちているという親には、太い手すりは握れません。既存の手すりが太すぎて交換になる例もあります。直径の記載があればそれを、なければ「親指と人差し指で輪が作れるか」を目安に。
  3. 動線の邪魔にならないか。手すりを1本置くと、その周りの通り道が確実に狭くなります。夜、暗いなかで通る道に置くなら、ベースの張り出しまで含めて考えてください。
  4. 床と天井の条件。据え置き型なら床が平らで硬いか、突っ張り型なら天井高さと下地。ここが合わなければ、製品の良し悪し以前に設置できません。
  5. 誰が設置するのか。自分で置ける製品か、販売店が付ける製品か。取扱説明書に書いてあります。注文する前に読むところです。

この5つを埋めてから商品ページを開くと、候補が一気に減ります。逆に、商品を先に決めてから実家を測ると、たいてい合いません。

まとめ:工事なしの手すりは「工事の代わり」であり「工事までのつなぎ」でもある

置いただけの手すりに体重を預けて大丈夫か、という最初の問いに戻ります。答えは条件付きです——据え置き型は、使う人がベースを踏んで押さえているぶんだけ支えます。突っ張り型は、天井が条件を満たしているぶんだけ支えます。どちらも「置けば支える」ではなく、条件が揃ったときに支える道具で、その条件は製品ごとに取扱説明書に書かれています。

そして順序としては、工事の手すりが先に検討対象。工事なしの手すりは、事情があって工事を選べないときの選択肢であり、状態が落ち着くまでのつなぎでもあります。長く使うと分かった時点で工事の手すりへ移すことは、厚生労働省の選定の判断基準にも検討事項として書かれています。今日置いた手すりが最終形である必要はありません。

要支援・要介護の認定があるなら、買う前にケアマネジャーへ。転倒予防まわりの道具は転倒予防の道具をまとめて見る、歩くこと自体が不安になってきたなら歩行・移動の道具(杖・歩行器)も合わせてどうぞ。

よくある質問

置くだけの手すりに、体重を全部預けても大丈夫ですか?

各製品には最大使用者体重(耐荷重)と、取扱説明書が指定する使い方の範囲が定められています。まずその範囲内で使うことが前提になります。ただし据え置き型は、使う人がベースプレートを踏んで押さえることを前提に設計されている製品があり、ベースを踏まずに横から引っ張るような使い方をするとベースが持ち上がることがある、と取扱説明書に警告が入っています。手すりは引っ張るのではなく、上から荷重をかけて使うものだと考えてください。体重の預け方や置き場所によって条件は変わるので、その製品の取扱説明書と、担当の福祉用具専門相談員に確認してください。

突っ張り型は、自分で設置できますか?

製品によります。取扱説明書で「取り付け、取り外しおよび設置場所の移動は販売店で行ってください」と指定している製品があります。買う前に取扱説明書を確認してください。また、天井の下地の有無と、対応天井高さ(例として1.9〜2.8mという製品があります)の範囲に入っているかを確かめる必要があります。斜めの天井、点検口の真下、照明器具のそば、柔らかい床や段差のある床は避けます。

賃貸ですが、突っ張り型を立てても退去のときに請求されませんか?

断定はできません。国土交通省の原状回復ガイドラインの分担表には、突っ張り棒や突っ張り型手すりという項目そのものがないためです。一般原則として借主の負担側に挙げられているのは、重量物をかけるためにあけた壁のくぎ穴・ネジ穴で下地ボードの張替えが必要な程度のものや、賃借人が天井に直接つけた照明器具の跡など、通常の使用による損耗を超える損傷です。なお、突っ張り型手すりの取扱説明書自体に、天井材や床材の種類によっては設置跡や油分が残る場合があるという警告が入っています。設置の前に貸主・管理会社へ相談し、設置前の天井と床の状態を写真で残しておいてください。負担の線引きは契約内容と損傷の程度で変わるため、賃貸借契約書の確認も必要です。

据え置き型をベッドの脇に置くとき、隙間はなくした方がいいですか?

「なくす」と一般化しないでください。ある床置き型手すりの取扱説明書は、ベースプレートや手すりをベッドに固定しないよう指示したうえで、手すりとベッド側面とのすき間を2〜12cmに設定して使用し、密着させた状態も空け過ぎた状態も避けるよう書いています。密着も過大な隙間も禁止で、指定される寸法は製品ごとに違います。その製品の取扱説明書に従ってください。自己流で詰めるのも離しすぎるのも、指示から外れます。

工事なしの手すりなら、介護保険で必ず借りられますか?

必ずとは言えません。厚生労働省の通知は、貸与対象の手すりを「床に置いて使用するもの」「便器等を囲んで据え置くもの」で、取付けに際し工事を伴わないものに限っています。そのうえで、ネジ等で居宅に取り付ける簡易なものも「工事」に含まれるとしています。さらに、手すり以外の機能を併せ持つ製品が対象外と判断された例もあります。借りられるかどうかは製品ごとの判断になることがあるため、担当のケアマネジャーや福祉用具専門相談員に確認してください。

玄関の上がり框用の手すりは、置くだけのものを選べばいいですか?

上がり框用には、置くだけのタイプと、固定板を框や床にネジで留めるタイプがあります。厚生労働省の通知はネジ等で居宅に取り付ける簡易なものも「工事」に含めているため、ネジで留めるタイプは福祉用具貸与ではなく住宅改修の側になりうる、という違いが出ます。どちらが親に合うかは動作を見て決める話ですが、介護保険の扱いが変わることがある点は知っておいてください。判断はケアマネジャー・福祉用具専門相談員へ。

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