実家が空き家になったらどうする
売る・貸す・置いておく、それぞれにかかるお金と手間
親が施設に入って、実家に誰もいなくなった。あるいは親が亡くなり、遠くの実家だけが残った。最初のうちは郵便物を見に行く程度で済みます。けれども、固定資産税の通知が届き、庭の草が伸びるうちに、兄弟の話し合いは進まないまま時間だけが過ぎていくことがあります。この記事では、誰も住まなくなった実家を売る・貸す・しばらく置いておくの3つに分けて、それぞれにかかるお金と手間、置いておくと起きること、売るときの税の特例、相続登記の期限を、国税庁・法務省・国土交通省などの公表資料で確かめられた範囲で説明します。税や登記の個別の判断は、税務署・税理士・司法書士・実家のある市区町村の窓口で確認してください。
先に結論
売る・貸す・置いておくのどれを選んでも、最初にやることは家の名義と相続登記の状態を確かめることです。相続で家を取得した人には、3年以内に相続登記を申請する義務があります。置いておくなら、固定資産税に加えて、通う交通費や草木の手入れなど管理の手間と費用を1年単位で見積もります。売るなら、相続した実家の3,000万円特別控除(1981年5月31日以前に建てられた家などの条件あり)には、2027年12月31日と、相続が始まった日から3年を経過する日の属する年の12月31日の早いほうという期限があり、置いておく期間が長いと使えなくなります(2026年10月時点の国税庁の案内)。どれにするか迷ったら、実家のある市区町村で空き家を担当している課(空き家の相談窓口を設けている自治体もあります)に相談してください。 → 3つの道を表で比べる
売る・貸す・置いておくを表で比べる
3つの道を先に並べます。金額は家の広さや地域、状態で大きく変わるので、表には書いていません。かかるお金の種類、向いている状況、税と期限を見比べてください。
| 道 | かかるお金 | 手間 | 向いている状況 | 税と期限 |
|---|---|---|---|---|
| 売る | 不動産会社に頼むなら仲介の手数料、片付けや解体の費用、利益が出たときの税 | 片付け、不動産会社選び、売れるまでの管理、相続人の合意 | 家族に住む予定の人がいない、相続人の考えがそろっている、通って管理するのが難しい | 相続した実家の3,000万円控除が使える場合がある。期限は令和9年(2027年)12月31日と、相続から3年を経過する日の属する年の12月31日の早いほう |
| 貸す | 修繕や設備の費用、管理会社への委託費、固定資産税(家賃の収入はある) | 入居者探し、修繕の対応、契約と家賃の管理(管理会社に任せる形もある)。貸している間は売ったり家族が使ったりしにくい | 直せば住める状態、借りる人がいそうな場所、いずれ家族が使うかもしれない | 貸すと3,000万円控除の条件から外れるおそれ。家賃の収入があると所得の申告が関わる |
| 置いておく | 固定資産税・都市計画税、光熱費の基本料金、保険料、通う交通費、草刈りなど | 定期的な見回り、郵便物、近所への気配り | 親が戻る見込みがある、相続人で話し合っている途中、相続放棄を考えている | 勧告を受けると住宅用地の特例が外れる。相続登記(3年)と3,000万円控除の期限は置いておく間も進む |
※国税庁・法務省・国土交通省・総務省の公表資料をもとに編集部が整理したものです。税や登記の個別の判断は、税務署・税理士・司法書士・実家のある市区町村の窓口で確認してください(最終更新:2026-10-15)。
詳しくは各章へ:置いておくと何が起きるか/売るときに知っておくこと/貸すときに知っておくこと
置いておくと何が起きるか
親が施設から戻るかもしれない、兄弟の意見がまとまらない、思い出が多くてまだ決められない。しばらく置いておくのは、理由があっての選び方です。ただ、誰も住んでいなくても、持ち主としての管理の責任と税金は続きます。置いておく間に起きることを、管理の手間、市区町村の手続き、税の順に挙げます。
管理の手間と近所への影響
人が住まない家は、窓を開けたり水を流したりする人がいないぶん湿気がこもりやすく、雨漏りや傷みに気づくのも遅れます。外まわりでは、庭木や雑草が伸びて隣の敷地や道路にはみ出したり、郵便受けにチラシがたまって留守だと分かったりします。置いておくと決めたら、次のことを家族で取り決めておきます。誰が見に行くかが決まっていないと、何か月も誰も見に行かないままになることがあります。
- 誰が、どのくらいの間隔で見に行くか。交通費を誰が出すか。
- 郵便物がたまらないように、転送の手続きができるかを郵便局で確かめる。
- ブレーカーやガスの元栓、水道をどうしておくか。見回りのときに使うなら止めずに残す。
- 遠くて通えない場合に、地元の不動産会社や空き家の管理サービスに見回りや草刈りを頼むか。
- 火災保険に入っているか、空き家になった場合の扱いはどうなるかを、加入している保険会社か代理店に確認する。
「管理不全空家」「特定空家」と、指導から勧告までの流れ
空き家の扱いを定めているのが「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家法)です。2023年12月13日に施行された改正で、「管理不全空家」という区分が加わりました。このまま放っておくと「特定空家」になるおそれがある空き家を、市区町村が早い段階で指導できるようにしたものです。特定空家は、倒壊のおそれがあるなど周りへの影響が大きい状態だと市区町村が判断した空き家です。判断の目安は国土交通省がガイドラインで示していて、実際に判断するのは市区町村です。
勧告で住宅用地の特例が外れる場合も、いきなり勧告が来るわけではありません。空家法では、管理不全空家には市区町村がまず指導を、特定空家にはまず助言または指導をし、それでも状態が改善されないときに勧告できる、という順番が決められています(第13条・第22条)。国土交通省の調査では、改正法の施行から2024年3月末までに、全国の市区町村が管理不全空家に対して行った指導は1,091件でした(2024年3月31日時点)。これは指導の件数で、勧告まで進んだ件数ではありません。
出典:e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」第13条・第22条(指導・助言から勧告までの順番)、国土交通省「改正空家法施行 空き家対策に新たな動き」(報道発表。施行日と指導1,091件)(いずれも2026-10-15参照)
勧告を受けると、住宅用地の特例が外れる
家が建っている土地は「住宅用地の特例」で、固定資産税の課税標準(税額を計算するもとになる額)が200平方メートル以下の部分は6分の1、200平方メートルを超える部分は3分の1に減らされています。市区町村から「管理不全空家」または「特定空家」として勧告を受けると、この特例が外れます。
特例が外れるのは、その年の1月1日(賦課期日)の時点で勧告を受けている場合です。勧告のあとで必要な修繕などをして勧告が撤回されれば、特例はまた使えるようになります。
税額がどれだけ増えるかは、土地の広さや評価額で変わります。たとえば静岡市は「土地の固定資産税と都市計画税が約4倍の額になる」と案内しています(土地の規模などで異なる、との注記つき)。よく言われる「6倍」は、課税標準を6分の1にする軽減がなくなることを指した言い方で、税額がそのまま6倍になるとは限りません。実家の土地でいくらになるかは、実家のある市区町村の税務課で確かめられます。
出典:国土交通省「住宅:空き家対策 特設サイト」、静岡市 公式サイトの住宅用地特例の解除に関する案内、総務省 固定資産税課長通知(平成27年5月26日)(いずれも2026-10-15参照)
取り壊すと、その土地は特例の対象から外れる
勧告とは別に、家を取り壊した場合も税の扱いが変わります。家を取り壊すと、その土地は住宅用地の特例の対象ではなくなります。固定資産税はその年の1月1日の状態で決まるため、取り壊したあとの1月1日に家が建っていなければ、その年度から特例のない税額になります。「更地にしても1年以内に売れれば大丈夫」という決まりではありません。建て替え中などの扱いは市区町村によって異なる場合があるので、取り壊す前に実家のある市区町村の税務課で確かめてください。売るために取り壊すなら、相続した実家の3,000万円特別控除の条件とも合わせて考えます。
売るときに知っておくこと
売る場合、手元に残るお金を左右するのは売れた値段だけではありません。不動産会社に頼むなら仲介の手数料、中を空にする費用などがかかり、売って利益が出れば税金もかかります。どんな費用がいくらかかるかは、不動産会社に見積もりで確かめてください。相続した実家には、売ったときの税金を軽くする特例があります。
相続した実家の3,000万円特別控除
親が住んでいた家を相続して売ったとき、条件を満たせば、売って出た利益(譲渡所得)から最高3,000万円を差し引ける特例があります。国税庁は「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」として案内しています。2024年(令和6年)1月1日以後に売った場合で、相続人が3人以上いるときは、上限が2,000万円になります。主な条件は次のとおりです(国税庁 No.3306、2026年10月時点の内容)。
- 家が1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられたものであること
- マンションなどの区分所有の建物として登記されていないこと
- 相続が始まる直前に、親のほかに住んでいる人がいなかったこと
- 相続してから売るまでの間に、事業や人に貸すこと、誰かが住むことに使っていないこと
- 売った代金が1億円以下であること
- 親子や夫婦など、特別の関係がある人に売るのではないこと
- 家を残したまま売るなら、売るときに一定の耐震基準を満たしていること。2024年1月1日以後の売却では、売った年の翌年2月15日までに耐震改修か取り壊しを済ませる形も認められます。先に家を取り壊して土地を売る形にも、別の条件があります
この特例を使うには、実家のある市区町村から「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を受け、申告の書類に添える必要があります。
売る時期には期限が2つあります。この特例は、①令和9年(2027年)12月31日までに売ったものが対象で、かつ②相続が始まった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。①と②のうち早いほうが期限です。たとえば令和7年に相続が始まった場合、②は令和10年12月31日ですが、①の令和9年12月31日が先に来ます。令和9年(2027年)12月31日という期限は、2026年10月時点で国税庁が示している内容です。
インターネット上には、この特例の期限を「住まなくなってから3年」と説明しているものがあります。それは持ち主本人が自分の住まいを売るときの別の特例(国税庁 No.3302)の期限で、相続した実家の特例は相続が始まった日から数えます。取り壊して更地で売る場合の扱いや、実家がこの条件に当たるかどうかは、売る前に税務署か税理士に確認してください。
親が老人ホームに入っていた場合
親が亡くなる前に老人ホームなどへ入っていた場合も、条件を満たせば、入所する直前まで親が住んでいた家が対象になり得ます。条件は、入所の直前に要介護認定・要支援認定などを受けていたこと、入所後も家を親の物の保管などに使い、人に貸したり親以外の人が住んだりしていないこと、などです。細かな条件は国税庁の「被相続人が老人ホーム等に入所していた場合」(No.3307)に載っています。該当するかどうかは、税務署か税理士に確認してください。
親が存命のうちに売る場合
相続した空き家の特例(3,000万円控除)は、親が亡くなって相続したあとに売る場合の特例で、親が存命のうちに売る場合は対象になりません。親本人が売る場合は、親自身の「マイホームを売ったときの特例」の対象になり得ます。その場合、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件の一つです。国税庁のこの案内には老人ホームに入所した場合の扱いが書かれていないため、親が施設に入っていても対象になるか、期限をどう数えるかは、税務署か税理士に確認してください。
家の名義が親なら、売るかどうかを決めるのは親本人で、手続きにも親本人の意思が要ります。親が認知症などで判断が難しくなっている場合は、成年後見の制度を使う話になることがあります。誰がどんな手続きをすれば売れるのかは家ごとに違うので、家庭裁判所や司法書士・弁護士に相談してください。
親本人のところに不動産会社が訪ねてきて、家の売却を持ちかけられることもあります。国民生活センターは2021年6月に「高齢者の自宅の売却トラブルに注意」を公表しました。自宅を不動産業者に売った場合はクーリング・オフができないことを挙げ、契約の内容を理解しないまま契約しないよう呼びかけています。困ったときは消費者ホットライン188に相談できます。
売る前に、中を空にする
仲介で売る場合や人に貸す場合は、家の中を片付けてから進めることが多くなります。業者に頼む場合の費用の目安は「遺品整理の費用相場と見積もりの取り方」で、家族で片付ける順番は「遺品整理を自分でやる手順と道具」で説明しています。相続放棄を考えている場合は、片付けや売却の前によくある質問の相続放棄の項を読んでください。
実家が遠くて、片付けの業者を自分で何社も探す時間が取れない場合は、複数の業者に一度に見積もりを頼めるサービスを使う方法もあります。たとえば「ぽいみつ」は、不用品回収・遺品整理・空き家の片付けなどの見積もりを、全国の業者にまとめて依頼できる無料のサービスです(運営は株式会社ロイド)。申し込むと、対応できる業者から電話があり、実家まで見積もりに来ます。契約は業者と直接結ぶ形なので、見積書の内訳と追加料金が出る条件は、業者ごとに確かめてください。
買い手が見つからないとき
建物が古い、交通の便がよくないなどの理由で、更地にしても買い手が見つからない家もあります。そうなったら、実家のある市区町村で空き家を担当している課に、空き家バンクへの登録ができるか、地元で相談できる先はどこかを聞いてください。不動産会社に相談するときは1社で決めず、何社かに査定と売り方の説明を聞いて比べると、会社ごとの査定額や売り方の違いが分かります。土地を国に引き取ってもらう「相続土地国庫帰属制度」もありますが、建物がある土地は申請できません。
貸すときに知っておくこと
貸せば家賃が入り、人が住むことで家の傷みにも気づきやすくなります。その代わり、貸す前の修繕や設備の入れ替え、借りる人を探して契約や家賃を管理する手間がかかり、固定資産税はこれまでどおり払い続けます。貸すかどうかを決める前に、次の点を不動産会社や市区町村に聞いておきます。
- どこまで直すか:水回りや屋根など、人に住んでもらうための修繕をどこまでするかで、かかる費用も貸せる家賃も変わります。直す範囲と家賃の見込みは、セットで聞いてください。
- 遠方で通えないなら、入居者の募集から家賃の受け取り、故障の連絡までを地元の管理会社に任せる形があります。任せる範囲と委託の費用は会社ごとに違います。
- 空き家バンクで借りたい人を探せる自治体もあります。登録の条件や改修の補助があるかは、実家のある市区町村で確認してください。
- 一度貸すと、借りている人がいる間は売ったり家族が使ったりしにくくなります。貸す期間や契約の形(普通の賃貸借か、期間を区切る契約か)は、不動産会社に相談してください。
- 家賃の収入があると、所得の申告が関わってきます。申告が要るかどうかは税務署か税理士に確認してください。
税の特例との関係にも気をつけます。親が施設に入っている間に実家を人に貸すと、亡くなったあとに売るときの3,000万円控除の条件(入所後も家を親の物の保管などに使い、人に貸していないこと)から外れるおそれがあります。相続したあとに貸した場合も、「相続してから売るまで人に貸していないこと」という条件に当たらなくなります。貸すか売るかで迷っている段階なら、貸す前に税務署か税理士に確認してください。
名義と相続登記
売るにも貸すにも、まず誰の名義の家なのかが分かっていないと話が進みません。名義は、法務局で確かめられます。取り方が分からなければ法務局か司法書士に聞いてください。親の名義のままか、親が亡くなったあと相続登記が済んでいるか、さらに前の代の名義のまま残っていないかを見ます。
相続した家の登記には3年の期限がある
相続で不動産を取得した人は、相続の開始と取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります(2024年4月1日施行)。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象です。過料は、法務局から催告を受けても正当な理由なく申請しなかった場合に、裁判所が判断する流れです。期限を過ぎても申請の義務はなくならないので、間に合わないときは早めに法務局か司法書士に相談してください。
2024年4月より前に相続した家で登記がまだのものも対象で、原則2027年3月31日までに申請が必要です。家の名義が親のままになっていないか、相続の登記が済んでいるかが分からないときは、司法書士か法務局に相談してください。遺産分割がまとまらない間は「相続人申告登記」で基本的な義務を果たせます。分割がまとまったあとは、その内容に沿った登記が別に必要です。
出典:法務省「相続登記の申請義務化について」(2026-10-15参照)
名義が親のままのとき
親が存命で名義が親のままなら、売るのも貸すのも親本人の判断です(親が存命のうちに売る場合)。親が元気なうちに、家の名義と権利証の置き場所を聞いておくと、あとで探し回らずに済みます。何をどう聞いておくかは「親が元気なうちに聞いておくこと」にまとめています。
家を手放すときに迷いやすいのが仏壇です。供養の頼み方や、小さな仏壇に移す方法は「実家の仏壇・位牌の処分方法」で説明しています。死亡届や相続放棄など、ほかの相続の手続きの期限は「終活の始め方」の相続の章で扱っています。
決める順番と相談先
売る・貸す・置いておくのどれにするかは、家の状態と家族の事情で変わります。決める前に、次の順番で材料をそろえると、兄弟や親と話すときに同じものを見ながら話せます。
- 名義と親の状況を確かめる:法務局で名義を確かめ、親が存命か、施設から戻る見込みがあるか、自分で判断できる状態かを整理します。
- 兄弟など相続人の間で、窓口になる人と、置いておく間の費用の分け方を決めます。
- 置いておく場合の1年分の費用を書き出します。固定資産税の納税通知書、光熱費の基本料金、保険料、通う交通費、草刈りなどを並べると、置いておくと1年にいくらかかるかが金額で分かります。
- 期限を並べる:相続登記の3年、3,000万円控除の期限(令和9年12月31日と、相続から3年を経過する日の属する年の12月31日の早いほう)、相続放棄を考えているなら3か月を、カレンダーに書き込みます。
- 窓口に相談します。どこに何を聞くかは下の表のとおりです。
| 聞きたいこと | 相談先 |
|---|---|
| 実家をどうするか全般、空き家バンク | 実家のある市区町村で空き家を担当している課 |
| 固定資産税と住宅用地の特例 | 実家のある市区町村の税務課 |
| 売る・貸すときの値段と進め方 | 不動産会社(何社かに聞いて比べる) |
| 名義、相続登記、相続人申告登記 | 法務局、司法書士 |
| 売ったときの税、3,000万円控除 | 税務署、税理士 |
| 相続放棄、遺産分割がまとまらない | 家庭裁判所、弁護士、司法書士 |
| 親が存命で、判断が難しくなっている | 家庭裁判所、司法書士、弁護士 |
| 介護保険、施設のこと | 担当のケアマネジャー、地域包括支援センター |
介護保険の申請や、最初にどこへ電話するかは「親の介護は何から始める?」で説明しています。
介護保険や介護の窓口との関係
実家を売る・貸す・置いておくための手続きは、介護保険とは別の窓口で進めます。ただ、介護の状況とつながる場面が2つあります。
- 親が亡くなる前に老人ホームなどに入っていた場合、3,000万円控除の条件に「入所の直前に要介護認定・要支援認定などを受けていたこと」が入っています。認定の通知や介護保険の被保険者証など、認定の時期が分かる書類は、市区町村に返したり処分したりする前にコピーを取って残しておいてください。この特例を使うときは、実家のある市区町村から「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を受ける必要があります。交付の申請で、入所前の状況をどの書類で示すかは、実家のある市区町村に確認してください。
- 親が施設から実家に戻る見込みがあり、住まいの改修を考えるなら、介護保険の住宅改修が使えるかどうかを、担当のケアマネジャーか市区町村に確認してください。家の名義が親本人でないときに要る書類も含めて、申請の流れは「介護保険の住宅改修の申請の流れと書類」で説明しています。
要介護認定をまだ受けていない、施設や在宅の相談先が分からない場合は、「親の介護は何から始める?」で最初の電話先と手続きを説明しています。
よくある質問
親が施設にいる間に、実家を売れる?
家の名義が親なら、売るかどうかを決めるのは親本人で、手続きにも親本人の意思が要ります。相続した空き家の3,000万円控除は相続したあとに売る場合の特例なので、親が存命のうちに売る場合は対象になりません。親本人が売る場合は、親自身の「マイホームを売ったときの特例」の対象になり得ます。その条件の一つが、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることです(国税庁 No.3302)。親が施設に入っていても対象になるか、期限をどう数えるかは、税務署か税理士に確認してください。親が認知症などで判断が難しい場合は成年後見の話になることがあるので、家庭裁判所や司法書士・弁護士に相談してください。
兄弟で意見が分かれたら?
まず、置いておく間の費用を誰がどう負担するかと、いつまでに方針を決めるかを話します。相続登記の3年や3,000万円控除の期限を表にして見せると、方針を決めないまま過ごしていても期限は進んでいくことを共有しやすくなります。遺産分割がまとまらない間も、相続登記の基本的な義務は「相続人申告登記」で果たせます。話し合いがつかないときは、弁護士や家庭裁判所に相談してください。兄弟で費用を分けるときの決め方は、葬儀費用を例にした「親の葬儀費用は誰が払う?」の精算表が参考になります。
とりあえず置いておくと損?
損か得かは、家の状態や家族の事情で変わるので一律には言えません。はっきりしているのは3点です。1つ目は、置いておく間も固定資産税と管理の費用がかかり続けること。2つ目は、市区町村から勧告を受けると住宅用地の特例が外れること。3つ目は、相続した実家の3,000万円控除と相続登記には期限があることです。控除は、令和9年12月31日と、相続から3年を経過する日の属する年の12月31日の早いほうが期限なので、置いておく期間が長いと使えなくなります。置いておくなら、期限をカレンダーに書き込んでおいてください。
空き家バンクとは?
空き家バンクは、空き家を売りたい・貸したい人の情報を自治体が募る仕組みとして各地にあります。登録できる条件、費用、改修の補助があるかどうかは自治体ごとに違い、老朽化が著しい家や相続登記が済んでいない家は登録できない場合があります。実家のある市区町村で空き家を担当している課に確認してください。
相続放棄すれば、実家を手放せる?
相続放棄は家だけを選んで放棄することはできず、預貯金なども含めた相続全体を放棄することになります。期限は相続の開始を知った時から原則3か月以内です。また、放棄した時点で実家を「現に占有」している人は、次の相続人などに引き渡すまで家を保存する義務が残ります(民法940条・2023年4月施行の改正後)。国土交通省と総務省は、家に自分の荷物を置いている、鍵を持っている場合は占有者に当たる可能性があるとしています。占有に当たるかどうかは個別の事情で判断されます。放棄を考えているうちは、家を売ったり取り壊したりしないでください(相続を認めたとみなされるおそれがあります)。判断に迷うときは、家庭裁判所や司法書士・弁護士に相談してください。