親に運転をやめてほしいとき|免許返納の切り出し方と、車を手放したあとの移動手段

話を切り出す前の準備から、返納の手続き、買い物と通院の足まで

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帰省して実家の車を見たら、バンパーの角にこすった跡が増えている。スーパーの駐車場で、枠に収めるまでに何度も切り返している。「そろそろ運転はやめたら」と言いたいけれど、怒るのが目に見えていて、車が無くなったら買い物や通院をどうするのかも決まっていない。この記事は、子が親に運転の話を切り出し、返納の手続きを済ませ、車のない暮らしの移動手段を用意するまでの順番を書いたものです。免許更新の検査や返納の手続きは警察庁・都道府県警察の資料で確認し、出典と参照日を末尾に付けました。運転を続けられるかどうか、認知症かどうかを、この記事や家族の見立てで決めることはできません。

先に結論

車を手放したあとの移動手段を見る

70歳・75歳からの免許更新で何があるか

70歳を過ぎると、免許を更新するたびに受ける講習や検査が増えます。親がいま何を受けているのか、次の更新がいつなのかを知っておくと、運転の話を切り出すきっかけにもなります。下の表は警察庁の資料で確認した内容です(2026年10月22日参照)。

更新のときに受ける講習・検査

名前対象内容知っておきたいこと
高齢者講習免許の更新時に70歳以上の方講義、運転適性検査器材による指導、実車指導の計2時間75歳以上の方は、このほかに認知機能検査も受けます
認知機能検査更新期間が満了する日に75歳以上の方「手がかり再生」と「時間の見当識」の2項目。結果は「認知症のおそれがある」か「認知症のおそれがない」の2区分対象の方には、満了日の6か月前までに警察から通知が届きます
運転技能検査75歳以上で、更新前の3年間に信号無視・速度超過など一定の違反歴がある方運転の技能をみる検査。第一種免許は70点以上が基準基準に達しないと免許は更新されません。2022年(令和4年)5月13日施行
臨時認知機能検査75歳以上で、信号無視など特定の交通違反をした方更新の時期でなくても受ける認知機能検査結果によっては、臨時の高齢者講習や医師の診断に進みます

出典:警察庁の高齢運転者対策の概要(PDF)、認知機能検査・運転技能検査の案内ページ、令和2年改正道路交通法の案内ページ(いずれも2026年10月22日参照・URLは末尾の出典一覧)。運転技能検査の対象となる違反の種類は、警察庁の資料ごとに数え方が違うため、この記事では種類の数を書いていません。

なお、2026年9月に警察庁は、運転技能検査に課題を加えるなどの見直しの方向性を公表しました(有識者検討会の報告書)。実施時期は決まっておらず、今後内容が変わる可能性があります。親の更新が近いときは、通知の書面と親が住む都道府県の警察の案内で、その時点の内容を確かめてください。

検査で「認知症のおそれがある」とされた場合の流れ

  1. 臨時適性検査を受けるか、医師の診断書を提出するよう命じられ、医師の診断を受けます。
  2. 医師が認知症と診断した場合は、聴聞などの手続を経て、免許の取消しまたは停止になります。

警察庁は、認知機能検査は医師の診断に代わるものではない、と注意書きしています。検査で「おそれがある」と出ても、それだけで認知症と決まるわけではありません。反対に「おそれがない」と出ても、家族が普段の運転で気になっていることがあるなら、検査の結果とは切り離して本人と話し合ってかまいません。

子が見ておく運転の変化

帰省のときに車の外側を一周見る、近所の買い物に助手席で同乗させてもらう。それだけでも、電話では分からない変化に気づくことがあります。下は家族が気づきやすい変化の例です。

気づいたことは、日付と場所をつけて短く書き留めておきます。あとで本人と話すときや、かかりつけ医・相談窓口に伝えるときに、「なんとなく危ない」ではなく起きた出来事で話せるようになります。

これらの変化だけで、運転を続けられるかどうかや、認知症かどうかは判断できません。判断するのは医師です。物忘れなど運転以外の変化も気になる場合は、「親が認知症かもしれないとき」で、何科を受診するかと受診の誘い方を説明しています。

切り出し方の順番

「免許を返して」から話を始めると、本人が自分の運転を否定されたと受け取ることがあります。車が買い物や通院の足になっている家庭では、返納は暮らし方が変わる話でもあります。話す前の準備と、話す順番を分けて書きます。

車が無いと困る用事を書き出し、代わりの手段を先に用意する

まず、親が車で出かけている用事を家族の側で書き出します。本人に聞く前に、分かる範囲で埋めておくと、話の途中で「じゃあ買い物はどうするんだ」と聞かれたときに答えられます。

用事行く頻度いまの行き方代わりの手段の候補
食料品の買い物週2回車で10分のスーパー宅配・移動販売で回数を減らす/家族の送迎/コミュニティバス
通院月1回車で20分の病院タクシー/路線バス/要介護認定があればケアマネジャーに相談
銀行・役所月1〜2回車買い物や通院の日にまとめる/家族の帰省の日に合わせる
趣味・集まり週1回車で公民館へ家族の送迎/デマンド型交通/コミュニティバス

※表の頻度・行き方は書き方の例です。代わりの手段が親の住む地域にあるかどうかは、移動手段の章の「どこに聞くか」の窓口で確認できます。

書き出してみると、車でしか行けない用事がいくつ残るかが見えます。そこが話し合いの中心になります。配偶者を車で送っている、農作業に使っているなど、本人以外の暮らしも車に頼っている場合は、その分も書いておきます。

本人の運転への自信と生活の不安を先に聞く

話を切り出すときは、こちらの心配より先に、本人が運転をどう感じているかを聞きます。「最近、運転していて疲れることはある?」「夜の運転はどう?」のように、答えやすい質問から始めます。本人が「まだ大丈夫」と言っても、その場で言い返さずに聞き切ります。

そのうえで、車が無くなったら何に困るかを本人の口から聞きます。家族が書き出した用事と比べると、本人が一番手放したくない用事が分かることがあります。その用事の代わりの手段を一緒に探すところから話せば、免許の話より先に、これからの暮らし方の相談ができます。

1回の話し合いで結論を出そうとしないことも大切です。最初の会話は、本人が運転のことを考えるきっかけになれば十分です。

家族以外から話してもらう

家族だけで話が進まないときは、かかりつけ医や警察の相談窓口など、家族以外の人に入ってもらう方法があります。相手の例は次のとおりです。

離れて暮らしている場合、#8080は発信場所の警察につながるため、子が自分の住む地域からかけると、親が住む地域とは別の窓口につながることがあります。親の地域の窓口に相談したいときは、親が住む都道府県警察の安全運転相談窓口の番号を調べて直接かけてください。

避けたい言葉と、言い換えの例

避けたい言葉言い換えの例考え方
「もう年なんだから運転はやめて」「最近、運転していて疲れることはない?」年齢で決めつけず、本人の感じ方を先に聞く
「事故を起こしたらどうするの」「運転のことで、私が少し心配になっていて」相手を責めずに、自分が心配していることを伝える
「この傷、ぶつけたんでしょ」「車に傷があったけど、どこかでこすった?けがはなかった?」起きた出来事を確かめる。本人の体を気づかう言葉を先にする
「免許を返して」(いきなり)「車がなくても買い物と病院に行ける方法、一緒に調べてみない?」返納より先に、困る用事の代わりを話題にする
「みんな返納してるよ」「どうしたいか、先に聞かせてほしい」決めるのは本人だと示す。その場で返事を迫らない

車の鍵を隠す、本人に無断で車を処分する、事実と違う理由を言って返納させる、といったやり方はこの記事では勧めません。本人の信頼を失うと、その後の通院や介護の相談まで進めにくくなります。危ない場面が続いていて家族だけでは話が進まないときこそ、#8080やかかりつけ医に相談してください。

すぐ返納しない選択肢

返納するか、今まで通り乗るか、の二択だけで話す必要はありません。間に置ける段階として、次の2つがあります。

運転する時間帯・道を限る

夜間や雨の日は運転しない、高速道路や遠出はしない、行き先は近所のスーパーとかかりつけ医だけにする、といった約束を家族で決める方法です。家族の間の約束なので、守れているかは帰省のときに一緒に振り返ります。範囲を狭めてみることで、車が無くても困らない用事がどれか、本人にも見えてきます。

サポートカー限定免許

運転に不安を覚える方が、返納だけでなく、衝突被害軽減ブレーキなどを備えた安全運転サポート車に限って運転を続ける、という中間の選択肢です。本人の申請によって免許に条件を付けるもので、2022年(令和4年)5月13日に始まりました。後付けの装置を取り付けた車は対象になりません。

いま乗っている車が対象かどうかは車の型式で決まるため、販売店かメーカーで確認します。申請の窓口は、親が住む都道府県の警察(運転免許センターなど)です。

返納の手続きと運転経歴証明書

窓口と、本人申請・代理申請

自主返納は、正式には「申請による運転免許の取消し」といい、都道府県警察の運転免許センターや警察署で申請します。窓口、受付時間、必要な書類は都道府県によって違うので、親が住む都道府県の警察のページか電話で確認してください。行政処分を受けている最中の方や、処分の基準に当たる方は、自主返納ができません。

申請は原則として本人が窓口に行きます。本人が窓口に行けない事情がある場合に、家族などの代理申請を受け付けている都道府県もあります。たとえば神奈川県警察は、本人が窓口に行くのが難しい場合に限って代理申請を受け付け、委任状や確認書、代理人の本人確認書類で本人の意思を確認しています。どの場合も、本人が返納を決めていることが前提です。

運転経歴証明書

運転経歴証明書は、免許を返納したあとも、運転してきた経歴があることを公的に示せる書類です。自主返納(すべての免許の取消し)をした日、または免許が失効した日から5年以内なら申請できます。5年を過ぎた方や、違反などで免許を取り消された方は受けられません。一部の免許だけを返納して、ほかの免許が残る場合も交付されません。

2012年(平成24年)4月1日以降に交付された運転経歴証明書は、運転免許証の代わりの公的な本人確認書類として使えます。免許証を身分証として使ってきた場合も、返納のあとに困ることが一つ減ります。2025年(令和7年)3月からは、マイナンバーカードに経歴を記録する「マイナ経歴証明書」も選べるようになりました。

手数料は都道府県ごとに決まっています。例として東京都(警視庁)の場合、運転経歴証明書だけなら1,150円、マイナ経歴証明書だけなら900円、両方なら1,250円です(令和7年3月24日の改定後の額。2026年10月22日参照)。親が住む都道府県の額は、その都道府県の警察の案内で確認してください。返納の手続きのときに続けて申請できるかどうかも、窓口に聞いておくと二度手間を防げます。

免許を返納したあとの支援

地域によっては、免許を返納した方や運転経歴証明書を持っている方に向けた支援があります。警察庁の資料では、バス・タクシーの運賃の割引、鉄道料金の割引、交通系ICカードの交付、食材の配達料金の割引、電動車いすの購入の割引、自動車の廃車手続きの無料化といった例が挙げられています。

支援の有無や内容は自治体や事業者ごとに違い、返納すれば必ず受けられるものではありません。親が住む市区町村の窓口か、全日本指定自動車教習所協会連合会の「高齢運転者支援サイト」で、親の地域の支援を確認してください。

車の処分

返納しても、車をすぐ手放す必要はありません。家族が運転して送迎に使う、しばらく置いて本人の気持ちが落ち着くのを待つ、という選び方もあります。車を残す場合は、免許を返したあとに本人が運転すると無免許運転になることを本人と確かめておき、家族が運転するなら、任意保険で運転できる人の範囲を保険会社に確認してください。

手放す場合の売却や廃車の手続き、自動車保険・税金の扱いは、販売店や保険会社、それぞれの手続き先の窓口で確認します。警察庁の資料には、免許を返納した方への支援の例として、自動車の廃車手続きの無料化も挙がっています(地域によって違います)。

車は本人の持ち物で、長く乗ってきた思い入れもあります。売るか廃車にするか、いつ手放すかは本人と一緒に決め、手続きの日も本人に伝えておきます。

車を手放したあとの移動手段

車の代わりになる手段は、一つに絞らずに組み合わせて考えます。下の表は、手段ごとに使える条件と、どこに聞けば親の地域の情報が分かるかをまとめたものです。運賃や本数、対象年齢は地域ごとに違うため、この記事には書いていません。

手段使える条件どこに聞くか
路線バス・コミュニティバスバス停まで歩ける。運行している地域であること親が住む市区町村の交通担当、地域包括支援センター
デマンド型交通予約して乗る乗り合いの交通。運行している地域で、電話などで予約ができること親が住む市区町村の交通担当、地域包括支援センター
タクシー乗り降りが自分でできる。費用の負担を家族で話しておく地元のタクシー会社。免許を返納した方への割引の有無は、タクシー会社と親が住む市区町村の両方で確認
介護タクシー・福祉車両座席への乗り移りが難しくなった方担当のケアマネジャー
通院等乗降介助(介護保険)要介護認定を受けていて、ケアプランで必要と認められた方担当のケアマネジャー
シニアカー(電動カート)判断力・操作に不安がなく、長い距離を歩くのがつらい方(認知機能に不安がある場合は先に相談)福祉用具の販売店・福祉用具専門相談員。要介護認定があれば担当のケアマネジャー
シルバーカー・歩行車自分で歩けて、買い物の荷物を運びたい方福祉用具の販売店。介護保険での扱いは「シルバーカーと歩行車、どう違う?」で説明しています
家族・近所の方の送迎近くに頼める人がいる家族で曜日と担当を決める。頼む相手の負担も話しておく

買い物は、宅配や移動販売を使って出かける回数そのものを減らす方法もあります。車を手放したあとに歩いて一人で出かけることが増え、道に迷うのが心配になった場合は、「親が一人で出かけて帰れなくなる前に」で、先にできる備えと見守りの端末を説明しています。

介護保険で通院の移動を相談する場合

要介護認定を受けた方は、訪問介護の「通院等乗降介助」をケアプランに入れて使える場合があります。ヘルパーが運転する車への乗り降りの介助と、その前後の移動や受診の手続きの介助を受けるものです。移送そのもの、つまり車が走っている時間は介護保険の対象外で、運賃は介護保険とは別に利用者が払います。

使えるのは、ケアプランで必要と認められた場合に限られ、このサービスを提供していない事業所もあります。使えるかどうかは担当のケアマネジャーに相談してください。要介護認定をまだ受けていない場合は、「親の介護は何から始める?」で申請の流れを、「要支援1から要介護5まで、うちの親はどれ?」で区分の目安を説明しています。乗り移りが難しくなってきた場合の介護タクシーや福祉車両、家族の車に積む車椅子については「通院用の軽量折りたたみ車椅子の選び方」でも触れています。

シニアカー・シルバーカーを使う場合

シニアカー(電動カート)は、長さ120cm・幅70cm・高さ120cm以内で、最高速度が時速6km以下のものは歩行者として扱われ、運転免許はいりません。ただし、座って操作し、道路の状況を見て判断できることが前提です。認知機能に不安がある場合は、本人と家族だけで決めずに、かかりつけ医・ケアマネジャー・福祉用具専門相談員に相談してください。選び方と、買う前に確認することは「シニアカー(電動カート)の選び方」で説明しています。

介護保険でシニアカーを借りられるのは、要介護2以上が目安です。要支援1・2と要介護1の方は原則として対象外で、例外が認められる場合もあります。借りられるかどうかは、同じく担当のケアマネジャーに確かめます。

まだ歩けて、買い物の荷物を運ぶのがつらいという段階なら、シルバーカーや歩行車も候補になります。違いと介護保険での扱いは「シルバーカーと歩行車、どう違う?」、途中で座って休みたい場合は「座れるシルバーカーの選び方」、杖や車椅子も含めて全体から選ぶなら「杖・歩行器・車椅子の使い分け早見表」で比べられます。

よくある質問

家族が代わりに返納の手続きをできますか

返納の申請は原則として本人が窓口に行います。本人が窓口に行けない事情がある場合に、家族などの代理申請を受け付けている都道府県もあり、その場合は委任状などで本人の意思を確認します。条件は都道府県によって違うので、親が住む都道府県の警察で確認してください。本人に無断で返納することはできません。

運転経歴証明書は身分証になりますか

2012年(平成24年)4月1日以降に交付された運転経歴証明書は、運転免許証の代わりの公的な本人確認書類として使えます。申請できるのは、自主返納または免許の失効から5年以内です。手数料は都道府県ごとに違い、東京都(警視庁)の場合は運転経歴証明書だけで1,150円です(2026年10月22日参照)。

免許を返納すると特典がありますか

地域によっては、バス・タクシーの運賃の割引などの支援があります。内容は自治体や事業者ごとに違い、返納すれば必ず受けられるものではありません。親が住む市区町村の窓口か、全日本指定自動車教習所協会連合会の「高齢運転者支援サイト」で確認してください。

認知症と診断されたら、免許はどうなりますか

認知機能検査で「認知症のおそれがある」とされると、臨時適性検査を受けるか医師の診断書を出すよう求められ、医師の診断を受けます。医師が認知症と診断した場合は、聴聞などの手続を経て、免許の取消しまたは停止になります。「おそれがある」という検査結果だけで免許が取り消されるわけではありません。家族が手続きを考える前に、都道府県警察の安全運転相談窓口(全国共通の「#8080」)に相談できます。#8080は電話をかけた場所の警察につながるので、親が住む地域の窓口に相談したいときは、その都道府県警察の窓口の番号に直接かけてください。

親が「絶対に嫌だ」と言って話を聞いてくれません

1回の話し合いで決めようとせず、時間を置いてください。返納か今まで通りかの二択ではなく、夜や雨の日は運転しない、行き先を近所に限る、サポートカー限定免許にする、といった段階を提案する方法もあります。家族だけで話が進まないときは、かかりつけ医や安全運転相談ダイヤル「#8080」、地域包括支援センターに相談し、家族以外の人から話してもらうことも考えてください。

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