要支援1から要介護5まで、うちの親はどれ?
区分の目安と、結果に納得できないときにできること

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「要介護2」。結果通知に書いてあるのは、たいていその一行だけです。この区分がどこから出てきたのか、要介護1や要介護3と何が違うのか、親のいまの様子と釣り合っているのか。紙を見ても分かりません。検索すると「要介護3は自分では立てない状態」といった説明が並びますが、制度が要介護度を決めている物差しは、体の状態そのものではありません。この記事は、厚生労働省の資料と告示・条文で確認できるところまで遡って、7つの区分が何で分かれているのか、区分が変わると何が変わるのか、結果に納得できないときに何ができるのかを整理したものです。申請の手順や結果が届くまでの日数は「親の介護は何から始める?」にまとめてあるので、ここでは扱いません。

先に結論

要介護度を決めているのは、病名でも症状でもなく「介護の手間」の量

要介護度は、身体の状態で説明されることがよくあります。「立ち上がりに支えが要るなら要介護1」「ひとりで座っていられないなら要介護4」といった書き方です。読む側にとっては分かりやすいのですが、制度の側はその決め方をしていません。

厚生労働省が介護認定審査会の委員向けに出しているテキストには、審査は原則として「要介護認定等基準時間」と呼ばれる介護の手間の判断によって行われる、と書かれています。つまり物差しは、病名でも症状でもなく、介護にどれだけ手間がかかるかの推計値です。だから制度上は「自分で歩けるのに要介護4」も「見た目は元気なのに要介護3」もありえます。

一次判定|認定調査74項目と主治医意見書から、コンピュータが基準時間を推計する

申請すると、調査員が親のところへ来て、決められた74項目に沿って心身の状況を確認します。この結果と主治医意見書の一部が一次判定ソフトに入力され、要介護認定等基準時間が推計されます。ここは人が判断する場面ではなく、統計データをもとにした機械的な計算です。

推計に使われるのは、親の「能力」、「介助の方法」、「(障害や現象の)有無」だとテキストは説明しています。「何ができないか」だけでなく、実際にどういう介助が行われているかが入力の材料になる、という点が、症状だけを見る説明との一番の違いです。

二次判定|介護認定審査会は、状態像ではなく「介護の手間」の観点から判定する

一次判定のあと、保健・医療・福祉の専門家で構成される介護認定審査会が、認定調査の特記事項と主治医意見書を見て要介護度を決めます。ここでも見る角度は同じです。テキストは委員に対して、状態像を議論して要介護度を認定するのではなく、特別な介護の手間が発生しているか、要介護認定等基準時間は妥当であるかという観点から認定しなければならない、と求めています。

この一文が意味するのは、審査会の議論は「この人はどのくらい弱っているか」ではなく「この人の介護にどれだけ手間がかかっているか」で進む、ということです。認定調査の特記事項に、家族が普段やっている介助が具体的に書かれているかどうかで、審査会が突き合わせる「介護の手間」の材料が変わります。

基準時間は、実際にかかっている介護時間そのものではない

もうひとつ、読み間違えやすいところがあります。要介護認定等基準時間は分単位で表示されますが、テキストは「これらの時間は、実際のケア時間を示すものではありません」と断っています。統計データから推計した介護の手間を、分という単位で表示したものです。

ですから「要介護2なら1日50分の介護で足りる」という読み方は成り立ちません。基準時間は、統計から推計した介護の手間を区分に振り分けるための目盛りであって、家庭で実際にかかっている時間を測ったものではないからです。

出典:厚生労働省「改訂版 令和3年4月 介護認定審査会委員テキスト」(mhlw.go.jp(PDF)/2026年8月31日参照)。要介護認定等基準時間による審査の原則、審査会が状態像ではなく介護の手間の観点から認定すること、基準時間が実際のケア時間を示すものではないことは、いずれも同テキスト本文の記述です。認定の判定を行うのは市区町村と介護認定審査会です。この記事は判定の見込みを示すものではありません。

申請から結果が届くまでに何が動いているか、認定調査に家族が立ち会う意味は、「親の介護は何から始める?最初の電話と要介護認定の手続き」のステップ3・4で扱っています。

7段階の区分と、区分ごとの基準時間の目安

認定の結果は、非該当(自立)、要支援1・2、要介護1〜5のいずれかです。非該当を入れると8つ、区分が付くのは7つになります。それぞれに対応する要介護認定等基準時間の範囲は、厚生労働省のテキストに表として示されています。

区分と要介護認定等基準時間の対応

区分要介護認定等基準時間
非該当(自立)25分未満
要支援125分以上32分未満
要支援2/要介護132分以上50分未満
(同じ範囲。分かれ方は下の項へ)
要介護250分以上70分未満
要介護370分以上90分未満
要介護490分以上110分未満
要介護5110分以上

出典:厚生労働省「改訂版 令和3年4月 介護認定審査会委員テキスト」の「図表11 要介護状態区分等と要介護認定等基準時間との関係」(mhlw.go.jp(PDF)/2026年8月31日参照)。この時間は実際にかかる介護の時間ではなく、統計から推計した「介護の手間」のものさしです(同テキスト本文の説明)。

要支援2と要介護1は、基準時間の範囲が同じ。分かれ目は2つの要件

表を見ると、要支援2と要介護1が同じ32分以上50分未満に入っています。同じ範囲に2つの区分が並ぶのは、この表でここだけです。テキストは、基準時間がこの範囲のとき、次の2つの要件のいずれかに該当すれば要介護1、いずれにも該当しなければ要支援2になる、と説明しています。

  1. 認知機能や思考・感情等の障害により、予防給付等の利用に係る適切な理解が困難である場合(目安として、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上)。
  2. 短期間で心身の状態が変化することが予測され、それに伴い要介護度の重度化も短期的に生ずるおそれが高く、概ね6か月程度以内に要介護状態等の再評価が必要な場合。

この2つに該当する見込みは、一次判定ソフトが過去の全国の判定結果をもとに推計し、介護認定審査会の資料に載ります。ただしテキストは、ここで示される結果は統計に基づく推計値であるため、すべてのケースで必ずしも実態と整合するとは限らないとも書いています。最終的には審査会が、認定調査の特記事項と主治医意見書を突き合わせて判定します。

※(1)の「認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上」は、同テキストが示す目安です。テキストには、認知症以外の精神疾患等によって予防給付の利用が困難な場合を排除する意味ではない、という趣旨の説明も添えられています。出典は上記の介護認定審査会委員テキスト(2026年8月31日参照)。

「手間が多いほうが要介護1」ではない、とテキストが明記していること

この点について、同じテキストは次のように書いています。「『要支援2』よりも手間が多くかかる、または、状態が悪いものが『要介護1』になるものではありません。要介護認定等基準時間を要支援2、要介護1の振り分けの根拠に用いることはありません」。

つまり、更新で要支援2から要介護1に変わったとしても、それは「悪くなったと判定された」とは限りません。予防給付の利用について理解が難しくなった、あるいは状態が短期間で変わりそうだと見られた、という判断が入っている可能性があります。逆の動きも同じで、区分の上下だけを見て親の状態を読み取ろうとすると、実際の判定理由から離れていきます。

区分が変わると、実際には何が変わるのか

区分そのものより、家族が困るのは「それで何が変わるのか」のほうです。制度の側で変わるのは、大きく4つあります。

ひと月に保険で使える上限(区分支給限度基準額)

介護保険では、区分ごとにひと月に保険で使えるサービスの上限が決められています。これが区分支給限度基準額で、金額ではなく単位数で定められています。上限の中で使う分は1〜3割の自己負担で済み、上限を超えて使った分は全額自己負担になります。

区分区分支給限度基準額(1か月あたりの単位数)
要支援15,032単位
要支援210,531単位
要介護116,765単位
要介護219,705単位
要介護327,048単位
要介護430,938単位
要介護536,217単位

出典:厚生労働省告示「居宅介護サービス費等区分支給限度基準額及び介護予防サービス費等区分支給限度基準額」(平成12年2月10日厚生省告示第33号。介護保険法第43条第2項及び第55条第2項に基づくもの。最終改正=平成31年3月28日厚生労働省告示第101号、令和元年10月1日適用)。厚生労働省の法令等データベースで全文を確認(mhlw.go.jp/2026年8月31日参照)。告示の原文は漢数字で書かれています。単位数は介護報酬の改定にあわせて見直されることがあります。ここに載せたのは2026年8月31日時点で確認できた告示の内容です。最新は厚生労働省の告示と、実家のある市区町村の公表を確認してください。なお、この上限は在宅で使う居宅サービス等についてのもので、施設に入所している場合の費用は別の考え方になります。
自己負担の割合は原則1割で、一定以上の所得がある人は2割または3割です。厚生労働省老健局「介護保険制度の概要」(令和7年7月)の「介護保険制度における利用者負担」の図は、給付が9割(8割・7割)、自己負担が1割(2割・3割)であることと、2割・3割になる合計所得金額・年金収入等の要件を示しています(mhlw.go.jp(PDF)/2026年8月31日参照)。親の割合は介護保険負担割合証に記載されているので、手元の証で確認してください。

単位を円に置き換えるときの注意(1単位=10円とは限らない)

「要支援1は月に約50,320円まで」といった円表記をよく見かけます。これは単位数に一律10円を掛けた値で、告示にその金額が書いてあるわけではありません。1単位あたりの金額は、地域区分とサービスの種類によって変わります。同じ要介護2でも、住んでいる市区町村と使うサービスの組み合わせによって、円に直したときの上限は動きます。

円で覚えるなら「1単位を10円として計算した場合の目安」という但し書きごと覚えるしかありません。親のケースでひと月いくらまで使えるのかは、担当のケアマネジャーが計算して示してくれます。自己負担割合や高額介護サービス費を含めたお金の話は、「親の介護は何から始める?」のお金の全体像の章にまとめています。

使える制度の枠組みが変わる(要支援=予防給付・総合事業/要介護=介護給付)

要支援1・2と要介護1〜5では、そもそも使う制度の入り口が違います。要介護なら介護給付、要支援なら予防給付と市区町村が行う介護予防・日常生活支援総合事業を使います。総合事業として行われる訪問型・通所型のサービスについては、単価と利用者負担を市区町村が定めることになっています。全国どこでも同じ、とは限りません。

更新で要介護から要支援に変わったときに、それまでのケアマネジャーが担当から外れる場合があります。理由や引き継ぎの進め方、次に誰が担当になるかは、地域包括支援センターと市区町村の窓口に確認してください。

出典:厚生労働省告示「介護予防・日常生活支援総合事業の適切かつ有効な実施を図るための指針」(令和6年3月29日厚生労働省告示第168号/mhlw.go.jp/2026年8月31日参照)。同指針は、サービス・活動事業の単価について市町村が厚生労働大臣の定める基準の単価を勘案して定めること、利用者負担の割合または額について市町村が定めることを示しています。親が使えるサービスの種類と負担額は市区町村ごとに違います。担当のケアマネジャーか市区町村の窓口で確認してください。

福祉用具貸与には「軽度者」の制限がある

福祉用具のレンタル(福祉用具貸与)には、軽い区分の人には原則として給付されない種目があります。要支援1・要支援2・要介護1の人について、原則として給付の対象外とされているのは次の8種目です。

このほか自動排泄処理装置(尿のみを自動的に吸引する機能のものを除く)は、要支援1・2に加えて要介護1〜3でも原則として対象外とされています。尿のみを吸引するタイプは、この原則対象外の種目には含まれていません。

ただし、これは一律に借りられないという意味ではありません。例外的に給付が認められる状態像が、厚生労働省の告示「厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等」(平成27年3月23日厚生労働省告示第94号)に定められています。例外にあてはまるかどうかの判断と、必要な書類や市町村の確認の手順は自治体ごとに運用が違います。実際に借りられるかは、担当のケアマネジャーと市区町村の窓口で確認してください。

出典:厚生労働省告示「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成12年2月10日厚生省告示第19号)別表の福祉用具貸与費の注(mhlw.go.jp/2026年8月31日参照)。同注は、要介護1の者に車いす・車いす付属品・特殊寝台・特殊寝台付属品・床ずれ防止用具・体位変換器・認知症老人徘徊感知機器・移動用リフトの貸与を行った場合は福祉用具貸与費を算定しないとし、自動排泄処理装置(尿のみを自動的に吸引する機能のものを除く。)については要介護1・要介護2・要介護3の者について算定しないとしています。厚生労働省「要支援・要介護1の者に対する福祉用具貸与について」(mhlw.go.jp(PDF)/2026年8月31日参照)にも、自動排泄処理装置は要介護2・要介護3の者も原則給付の対象外である旨の注記があります。対象外となる区分は種目ごとに違います。親の区分でどの用具が使えるかは、担当のケアマネジャーと市区町村の窓口で確認してください。

一方で、手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえは、いま挙げた原則対象外の種目に含まれていません。軽度の区分でも原則として貸与の対象になる種目です。転倒が心配な段階でまず手を付けるのはこのあたりになるので、家の中のどこから直すかは実家の転びやすい場所7つと、帰省時10分チェックリスト、借りるか買うかの比べ方は「歩行器・車椅子は買うのとレンタル、どっちが得?」を参考にしてください。

特別養護老人ホームは原則要介護3以上。要介護1・2の特例入所という道

施設の入所要件も、区分によって線が引かれています。厚生労働省の通知「指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について」は、平成27年4月1日以降の特別養護老人ホームへの入所が原則要介護3以上の人に限定されるとしています。要介護1・2の段階で申し込みを考えていた家族が、ここで足止めされることがあります。

同じ通知には、要介護1・2でも入所できる特例入所の「やむを得ない事由」が4つ挙げられています。

出典:厚生労働省「指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について」(平成26年12月12日 老高発1212第1号/mhlw.go.jp/2026年8月31日参照)。特例入所を認めるかどうかは、市区町村と施設が個別に判断します。要介護1・2で入所を考えている場合は、担当のケアマネジャーか市区町村の窓口に相談してください。この記事では、条番号ではなく通知名で出典を示しています(介護保険法の該当条文は改正により項番号が動いているため)。

早見表|区分・基準時間・限度額・制度の枠

ここまでの数字を1枚にまとめます。「こういう状態なら要介護◯」という列は作っていません。理由は表のあとに書きます。

区分要介護認定等基準時間ひと月の上限(単位数)制度の枠
非該当(自立)25分未満—介護保険の給付はなし(総合事業を使えるかは市区町村が判断)
要支援125分以上32分未満5,032単位予防給付・総合事業
要支援232分以上50分未満10,531単位予防給付・総合事業
要介護132分以上50分未満16,765単位介護給付/福祉用具貸与は軽度者の制限あり
要介護250分以上70分未満19,705単位介護給付/自動排泄処理装置は原則対象外
要介護370分以上90分未満27,048単位介護給付/自動排泄処理装置は原則対象外/特別養護老人ホームの新規入所は原則ここから
要介護490分以上110分未満30,938単位介護給付
要介護5110分以上36,217単位介護給付

出典:基準時間=「要介護認定等に係る介護認定審査会による審査及び判定の基準等に関する省令」(平成11年厚生省令第58号)第1条第1項・第2条第1項(e-Gov法令検索/2026年8月31日参照)。同省令が区分ごとの分数の範囲を定めています。表の形は厚生労働省「改訂版 令和3年4月 介護認定審査会委員テキスト」図表11(mhlw.go.jp(PDF))にもあります。単位数=「居宅介護サービス費等区分支給限度基準額及び介護予防サービス費等区分支給限度基準額」(平成12年2月10日厚生省告示第33号、最終改正 平成31年3月28日厚生労働省告示第101号/mhlw.go.jp)。特別養護老人ホームの要件=厚生労働省通知「指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について」(平成26年12月12日 老高発1212第1号)。福祉用具貸与の軽度者の制限=「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成12年2月10日厚生省告示第19号)別表の福祉用具貸与費の注。総合事業の枠=「介護予防・日常生活支援総合事業の適切かつ有効な実施を図るための指針」(令和6年3月29日厚生労働省告示第168号)。いずれも2026年8月31日参照。要支援1・2の要介護認定等基準時間は「要支援状態区分」に対応するもので、単位数は介護予防サービス費等の区分支給限度基準額です。

表の読み方(「この状態なら◯」という表ではない)

状態像の列を作らなかったのは、判定するのが市区町村と介護認定審査会だからです。厚生労働省の介護保険制度に関するQ&Aも、要介護度別の状態像はあくまで目安であり、実際の心身の状態と一致しない場合があるとしています。同じような状態でも、認定される区分は変わります。

では自分の親がなぜこの区分になったのかを知る手がかりがないのかというと、そうでもありません。認定調査でどう答えたか、特記事項に何が書かれたか、主治医意見書に何が記載されたかが判定の材料です。これらの写しを本人や家族が受け取れるかどうかは市区町村ごとに手続きが違うので、窓口に問い合わせてみてください。担当のケアマネジャーがいれば、認定結果をどう読むか、いまのプランで枠のどのくらいを使っているかを一緒に確認するのが近道です。

出典:厚生労働省「介護保険制度に関するQ&A」(mhlw.go.jp/2026年8月31日参照)。要介護度別の状態像が目安であること、認定に納得がいかない場合は市町村や地域包括支援センターへ相談することが示されています。

結果に納得できないとき、できることは3つ

「状態は変わっていないのに、更新したら要介護3から要介護2に下がった」。同じ状態のつもりでも区分が動くことがあるのは、判定が介護の手間の推計で行われているからです。取れる道は3つありますが、それぞれ争っている対象が違います。

その前に、まずケアマネジャーか地域包括支援センターに相談する

手続きに入る前にやることがあります。担当のケアマネジャーがいれば、まずその人に結果を見せてください。要支援ならば地域包括支援センターが窓口です。認定調査の内容を確認したうえでないと、どの手続きが状況に合うのかを決められません。前回の調査のときに伝え漏れていたことがあるのか、状態が実際に変わっているのか、判定の手続き自体に疑問があるのかで、選ぶものが変わります。厚生労働省のQ&Aも、認定に納得がいかない場合の相談先として市町村と地域包括支援センターを挙げています。

① 区分変更の認定を申請する(状態や必要な介護の量が変わったとき)

介護保険法第29条第1項は、要介護認定を受けた被保険者が「その介護の必要の程度が現に受けている要介護認定に係る要介護状態区分以外の要介護状態区分に該当すると認めるとき」に、区分変更の認定の申請ができるとしています。この条文が申請の要件にしているのは介護の必要の程度が今の区分と違うと認めることで、有効期間の満了を待つことは要件になっていません。実際に出せるかどうかと必要な書類は、市区町村の窓口で確認してください。

ここで押さえておきたいのは、この手続きが状態の変化を前提にしたものだという点です。介護保険法施行規則第42条第1項第2号は、申請書に「心身の状況の変化その他の当該申請を行う原因となった事由」を記載することとしています。「結果が不満だから出し直す」ための手続きとして制度が設計されているわけではありません。

もうひとつ、区分は上がる方向だけに動くものでもありません。介護保険法第30条第1項は、市町村の側から、介護の必要の程度が低下したと認めるときに要介護状態区分の変更の認定ができるとしています。申請すると認定調査と主治医意見書からやり直しになり、新しい有効期間が設定されます。何か月になるかは市区町村が決めるので、出す前に窓口で確認してください。

② 審査請求(介護保険審査会への不服申し立て)

認定結果は行政の処分なので、処分そのものに不服があるときは審査請求ができます。介護保険法第183条第1項は、要介護認定・要支援認定に関する処分を含む保険給付に関する処分に不服がある者は介護保険審査会に審査請求ができる、としています。その介護保険審査会は各都道府県に置かれます(同法第184条)。

期限は、介護保険法第192条が「処分があったことを知った日の翌日から起算して三月以内に、文書又は口頭でしなければならない」と定めています。同じ条文のただし書きには、正当な理由により期間内に審査請求ができなかったことを疎明したときはこの限りでない、という例外も置かれています。あわせて、行政不服審査法では処分があった日の翌日から1年を過ぎると原則として審査請求ができないとされています(同法第18条第2項。こちらにも正当な理由がある場合の例外があります)。原則は3か月以内です。例外にあてはまるかどうかを判断するのは都道府県の介護保険審査会なので、実際の期限と出し方はその窓口で確認してください。

審査請求で得られるものは、区分の付け替えではありません。行政不服審査法第46条第1項は、審査請求に理由があるときは審査庁が裁決で処分の全部または一部を取り消し、または変更するとしたうえで、ただし書に「審査庁が処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない場合には、当該処分を変更することはできない」と定めています。審査会がするのは処分(認定結果)の取消しで、審査会が要介護度そのものを別の区分に決め直す手続きではない、と案内している都道府県があります。大阪府の介護保険審査会のページは、審査会は処分を取り消すことはできるが、介護度の変更や介護保険料の額の変更などはできない、と明記しています。「審査請求を出せば要介護3にしてもらえる」という手続きではない、ということです。実家のある都道府県の介護保険審査会が何をするところなのか、取り消されたあとに手続きがどう進むのかは、その窓口で確認してください。

出典:介護保険法第183条第1項・第192条(e-Gov法令検索)、行政不服審査法第18条第2項・第46条第1項(e-Gov法令検索)。いずれも2026年8月31日参照。審査会が処分の取消しはできるが介護度の変更はできないことは、大阪府「審査請求について」(pref.osaka.lg.jp/ページ更新日2025年5月15日/2026年8月31日参照)に記載されています。都道府県によって案内の書き方が異なります。審査請求をするかどうか、条文がどう適用されるかの判断は、都道府県の介護保険審査会や専門家にご確認ください。

③ 次の更新認定を待つ

3つ目は、争わずに次の更新に備える道です。地味に見えますが、区分変更も審査請求も結局は認定調査からやり直しになるので、やることの中身は3つとも同じになります。前回の調査のあとに起きたことを、日付とともに記録しておくことです。

記録に残しておくと次の調査で役に立つのは、次のようなことです。

認定調査の日に家族が何をするか、調査員に渡すメモに何を書くかは、「親の介護は何から始める?」のステップ4で詳しく扱っています。この記事の内容と重ねて使ってください。

3つの違いを一覧で

手続き何を争うのかどこに出すのか結果として何が変わりうるか期限
区分変更の認定いまの介護の必要の程度が、現在の区分と違うこと市区町村認定をやり直し、新しい区分と有効期間が設定される条文に申請期限の定めはない(提出できる時期と必要書類は市区町村の窓口で確認)
審査請求処分(認定結果)そのものの違法・不当都道府県の介護保険審査会処分の取消し。審査会が区分を変更することはできない処分があったことを知った日の翌日から3か月以内
次の更新を待つ争わない市区町村(更新申請)更新時の認定調査と審査で区分が見直される有効期間の満了日の60日前から満了日まで

※根拠は、区分変更=介護保険法第29条第1項・介護保険法施行規則第42条第1項第2号、審査請求=介護保険法第183条第1項・第192条および行政不服審査法第18条第2項、更新申請=介護保険法施行規則第39条(いずれもe-Gov法令検索/2026年8月31日参照)。どれを選ぶかは、親の状態が実際に変わっているのか、それとも判定の手続きそのものに疑問があるのかで変わります。判断の前に、担当のケアマネジャーか地域包括支援センターに一度相談してください。

認定には有効期間がある

認定は一度取れば終わりではありません。有効期間が定められていて、期間が過ぎたあとも介護保険のサービスを使い続けるには、更新の認定を受ける必要があります。更新の案内を見落としたまま期間が過ぎると、その間の利用が保険給付の対象外になることがあります。満了後の取扱いは市区町村によって案内が異なるので、期限が過ぎたことに気づいた時点で、担当のケアマネジャーか市区町村の窓口へ早めに連絡してください。

新規・更新・区分変更で期間が違う

期間の幅は介護保険法施行規則が定めています。新規の認定は6か月間が原則で、市町村が介護認定審査会の意見に基づいて特に必要と認める場合には、3か月間から12か月間までの範囲で月を単位として市町村が定める期間になります(同規則第38条第1項第2号。この場合の6か月間は除かれます)。

更新の認定は12か月間が原則です。特に必要と認める場合は3か月間から36か月間までの範囲になり、さらに更新前後で要介護状態区分が同一である場合には48か月間まで設定できます(同規則第41条第2項による読替え)。要支援の更新認定も同じ構造です(同規則第55条第2項)。48か月という上限が使われる条件は「前回と同じ判定だったこと」ではなく、条文上は要介護状態区分が同一であることです。

区分変更の認定を受けたあとの有効期間が何か月になるかは、この記事では書きません。条文で確認できなかったためです。実際に何か月になるかは市区町村が決めます。認定結果の通知書に書かれている有効期間を確認してください。

更新申請は有効期間の満了日の60日前から出せる

更新の申請には、出せる期間が決まっています。介護保険法施行規則第39条は、要介護更新認定の申請を「当該要介護認定の要介護認定有効期間の満了の日の六十日前から当該要介護認定有効期間の満了の日までの間」に行うものとしています。逆にいえば、それより前には出せません。

市区町村から更新の案内が届く時期は自治体によって違います。案内が来ないまま満了日が近づいている場合は、市区町村の窓口へ問い合わせてください。申請の窓口や持ち物、代行してもらえる相手は「親の介護は何から始める?」のステップ2にまとめています。

出典:介護保険法施行規則第38条第1項第2号(新規)、第39条(更新申請の期間)、第41条第2項(更新認定の有効期間の読替え)、第55条第2項(要支援更新認定)。いずれもe-Gov法令検索/2026年8月31日参照。省令は改正されることがあります。最新の内容と、実際に設定される期間は市区町村の窓口で確認してください。

やりがちな誤解を3つ

「区分が上がると得」ではない

要介護度が重くなると区分支給限度基準額は増えます。ただし、増えるのは保険を使って利用できる枠であって、もらえるお金ではありません。同じ枠の中でサービスを多く使えば、その1〜3割の自己負担も増えます。逆に、枠があってもサービスを使わなければ費用は発生しません。上限は請求される金額ではないからです。

一方で、区分が軽いと、必要だと思うサービスが枠に収まらないことがあります。上限を超えた分は全額自己負担になるので、そこで自己負担額がそのまま増えます。つまり損得の話ではなく、必要な介護の量と区分が釣り合っているかという話です。釣り合っていないと感じるなら、その根拠として記録が要ります。

「同じ状態なら同じ区分になる」わけではない

基準時間の推計に使われるのは、認定調査での回答と特記事項、そして主治医意見書です。調査員が親を見るのは、原則としてその訪問の1回だけ。他人の前ではしっかりして見える人がいる、という要素も加わります。同じ生活をしている二人が違う区分になることは、制度の作りからしてありえます。

家族にできることは限られていて、しかもはっきりしています。普段の様子を、日付と動作で記録して伝えることです。評価ではなく、起きたことを書きます。

区分は、親の価値をはかる数字ではない

ここまで書いてきたとおり、制度が測っているのは介護の手間の推計値で、しかもそれは実際のケア時間ですらありません。行政が給付の枠を決めるための目盛りです。にもかかわらず、通知に書かれた数字が、そのまま親の「弱り具合の点数」のように受け取られることがあります。

本人が結果を見て気にしている場合はなおさらです。区分が上がったことを本人の前で残念そうに話すと、自分が重い荷物になったという受け取られ方をします。区分は、使える制度の入り口を決める事務上の記号でしかありません。家族が見るべきなのは数字ではなく、いま何に手が要るかのほうです。介護が始まる前に話しておきたいお金や契約のことは、元気なうちに聞いておくことにまとめています。

よくある質問

要介護2と要介護3の違いは何ですか

制度上の違いは、要介護認定等基準時間の範囲です。要介護2は50分以上70分未満、要介護3は70分以上90分未満とされています(厚生労働省「改訂版 令和3年4月 介護認定審査会委員テキスト」図表11)。この時間は実際にかかる介護時間ではなく、統計から推計した介護の手間のものさしです。給付の面では、ひと月の区分支給限度基準額が19,705単位から27,048単位に変わります。また、特別養護老人ホームへの新規入所が原則要介護3以上とされている点も違います(厚生労働省通知「指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について」)。ただし「この状態なら要介護3」という決まった線引きはありません。判定するのは市区町村と介護認定審査会です。

要支援2から要介護1になりました。悪くなったということですか

そうとは限りません。要支援2と要介護1は要介護認定等基準時間の範囲が同じ32分以上50分未満で、分かれ目は2つの要件です。厚生労働省の介護認定審査会委員テキストは「要支援2よりも手間が多くかかる、または、状態が悪いものが要介護1になるものではありません」と明記しています。振り分けに使われるのは、認知機能や思考・感情等の障害により予防給付等の利用に係る適切な理解が困難かどうか(目安として認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上)と、短期間で心身の状態が変化することが予測され概ね6か月程度以内に再評価が必要かどうかです。何がどう評価されたのかは、担当のケアマネジャーか市区町村の窓口に確認してください。

認定が思ったより軽いです。区分変更と審査請求のどちらを出せばいいですか

制度上の性質が違うので、どちらが先という順番はありません。区分変更の認定は、介護保険法第29条第1項が「その介護の必要の程度が現に受けている要介護認定に係る要介護状態区分以外の要介護状態区分に該当すると認めるとき」に申請できるとしていて、申請書には心身の状況の変化などの事由を書きます(同法施行規則第42条第1項第2号)。審査請求は、処分そのものの違法・不当を都道府県の介護保険審査会が審理する手続きです。親の状態が実際に変わっているのか、それとも判定の手続きそのものに疑問があるのかで選ぶものが変わります。出す前に、担当のケアマネジャーか地域包括支援センターに相談してください。

審査請求をすると、要介護度を上げてもらえますか

審査請求は、審査会に要介護度を別の区分へ付け替えてもらう手続きではありません。行政不服審査法第46条第1項のただし書は「審査庁が処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない場合には、当該処分を変更することはできない」と定めています。大阪府の介護保険審査会のページも、審査会は処分を取り消すことはできるが介護度の変更などはできない、と記載しています。都道府県によって案内の書き方が異なるので、実家のある都道府県の介護保険審査会で確認してください。期限は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内です(介護保険法第192条)。正当な理由がある場合の例外が条文に置かれていますが、あてはまるかどうかを判断するのは都道府県の介護保険審査会です。実際の期限と出し方は、その窓口で確認してください。

認定の有効期間が切れそうです。更新はいつから申請できますか

介護保険法施行規則第39条は、要介護更新認定の申請を「要介護認定有効期間の満了の日の六十日前から満了の日までの間」に行うものとしています。それより前には出せません。市区町村から更新の案内が届く時期は自治体で異なるので、案内が来ないまま満了日が近づいている場合は窓口へ問い合わせてください。有効期間そのものも、新規は原則6か月間、更新は原則12か月間で、市町村が特に必要と認める場合の幅が省令に定められています。実際に何か月になるかは市区町村が決めるため、手元の認定結果通知書に書かれている有効期間を確認しておくと、いつ動けばよいかが分かります。

要介護1でも介護ベッドは借りられますか

特殊寝台(介護ベッド)と特殊寝台付属品は、要支援1・要支援2・要介護1では原則として福祉用具貸与の給付対象外とされている種目です。ただし例外があり、給付が認められる状態像は厚生労働省の告示「厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等」(平成27年3月23日厚生労働省告示第94号)に定められています。例外にあてはまるかどうかの確認と手続きは市区町村ごとに運用が違うので、担当のケアマネジャーと市区町村の窓口で確認してください。なお、手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえは、この原則対象外の種目には含まれていません。

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