介護保険で福祉用具を買うとき:申請の流れと書類
ポータブルトイレ・入浴用いす・杖・歩行器など。買う前の確認から支給まで、先にネットで買ってしまったときの扱いも
シャワーチェアやポータブルトイレは、介護保険では借りるのではなく買う品目です。ただ、どこで買い、どこに何を出せば負担が1〜3割で済むのかは、分かりにくい手続きです。介護保険で福祉用具を買う仕組み(特定福祉用具販売)は、指定を受けた事業者から買い、買った後に市区町村へ申請して、代金の9割(所得によって8割・7割)を受け取る形が基本です。先にネット通販やホームセンターで買ってしまうと、原則として支給の対象になりません。この記事は、買うと決まった後の手続きを、家族が動く順に並べたものです。借りるか買うかの判断は「歩行器・車椅子は買う?借りる?」で、手すりを工事で付ける場合は「介護保険の住宅改修の申請の流れと書類」で説明しています。書類の名前や細かい運用は市区町村によって違うので、国の法令・通知に書かれている中身と、市区町村の案内の例を分けて書きます。
先に結論
- 先にネット通販やホームセンターで買わないでください。対象になるのは、都道府県などの指定を受けた事業者から、福祉用具専門相談員と相談して買った物です。
- ケアマネジャーがいる場合は、買う前に必ず相談します。ケアプランに入れることを求める市区町村もあります。
- 支給の枠は、毎年4月から翌年3月までの購入額10万円です(市区町村が条例で上乗せしている場合あり)。同じ年度に同じ種目をもう一度買っても、原則として支給は受けられません。
- 原則は、いったん全額を払ってあとで9〜7割が戻る償還払いです。はじめから1〜3割だけを払う受領委任払いが使えるかは、市区町村と販売事業者によって違います。 → 全体の順番を見る
まず全体の順番
国の省令(介護保険法施行規則第71条)が定めているのは、用具を買ったあとに、申請書に領収証などを添えて市区町村に出す形です。書類を出すのは買ったあとですが、支給の対象外になる主な理由(指定を受けていない店で買う、認定の申請前に買う、同じ年度に同じ種目をもう一度買う)は、どれも買う前に確かめれば避けられます。
- ケアマネジャーに相談する。要支援の場合は、介護予防のケアプランの担当者に相談します。担当者が分からなければ、実家の地域の地域包括支援センターか市区町村に聞いてください。浴室で立ち上がれない、夜中のトイレに間に合わない、といった困っている場面を伝えます。
- 指定を受けた販売事業者の福祉用具専門相談員と、用具を選ぶ。親の体格や、浴室・寝室の広さに合うかを一緒に確かめます。
- その事業者から買って、代金を払う。領収書の宛名の注意は書類の章に書いています。
- 実家のある市区町村の介護保険の担当に、申請書・領収証・パンフレットなどを出す。
- 市区町村が内容を確かめて支給を決め、給付分が振り込まれる。
受領委任払い(お金の流れの章)を使う場合は、代金の払い方と書類の出し方がこれとは少し変わります。
家族がやることと、頼む相手
| 段階 | 家族がやること | 頼む相手・出す先 |
|---|---|---|
| 相談 | 困っている動作と場所を伝える。帰省したときに撮った浴室やトイレの写真があれば見せる | 担当のケアマネジャー(要支援なら介護予防のケアプランの担当者) |
| 選ぶ | 親の体格、家の段差や広さを伝えて、候補を出してもらう | 指定を受けた販売事業者の福祉用具専門相談員 |
| 買う | 代金を払い、親本人の名前あての領収書と、用具のパンフレットを受け取る | 同じ販売事業者 |
| 申請 | 申請書に書類を添えて出す | 実家のある市区町村の介護保険の担当 |
| 支給 | 振込先の口座を確かめておく | 市区町村 |
出典:介護保険法(e-Gov法令検索)第44条、介護保険法施行規則(e-Gov法令検索)第71条、いずれも2026年10月17日参照。書類を窓口へ誰が持っていくか、郵送や電子申請ができるかは市区町村によって違います。
住宅改修との違い
手すりを壁に取り付ける、段差をなくすといった工事は、福祉用具の購入ではなく住宅改修の扱いになります。住宅改修は工事の前に申請する決まりで、施行規則第75条に「あらかじめ」申請するという文言があります。福祉用具の購入の申請を定めた第71条にはこの文言がなく、原則は買った後に申請します。同じ介護保険の手続きでも順番が逆になるので、工事の手続きは「介護保険の住宅改修の申請の流れと書類」で説明しています。
ただし、市区町村によっては、買う前の相談や申請を求める場面があります。杉並区は、同じ品目をもう一度買う場合と、排泄予測支援機器を買う場合に、事前の協議を求めています。亀岡市は、壊れたり体の状態が変わったりして買い直す場合に、事前の申請が必要だとしています。受領委任払いを使う場合に、購入前の手続きを求める市区町村もあります。買う前に、実家のある市区町村の介護保険担当へ「この品目は購入前の申請や協議が要りますか」と電話で聞いてください。
出典:介護保険法施行規則第71条・第75条、杉並区「居宅介護(介護予防)特定福祉用具購入費の支給」、亀岡市の福祉用具購入に関する通知(PDF・令和6年7月18日付)、いずれも2026年10月17日参照。
買う前に確認する3つ
販売事業者に連絡する前に、確かめておくことが3つあります。どれかを確かめないまま買うと、支給されなかったり、枠を超えた分が自己負担になったりします。
1. 要介護・要支援の認定を受けているか
福祉用具の購入費は、要支援1・2の方も要介護1〜5の方も対象で、要介護度によって買える品目が変わることはありません(介護保険法第44条が要介護、第56条が要支援の規定)。要支援の方の場合、制度の名前は「特定介護予防福祉用具販売」になります。区分ごとの違いは「要支援1〜要介護5の目安と区分の違い」にまとめています。
気をつけたいのは、認定と買った日の前後関係です。要介護認定は、申請のあった日にさかのぼって効力が生じます(法第27条第8項)。このため、認定を申請する前に買った物は対象外です。申請中、結果が出る前に買った物の扱いは、市区町村の案内で分かれます。上尾市の手引きは「認定されれば支給、非該当なら支給しない(全額自己負担)」としていますが、名古屋市は「要介護・要支援認定を受ける前に福祉用具を購入した場合は、支給を受けることができません」と案内しています。申請中に買ってよいかは、買う前にケアマネジャーか市区町村に確認してください。
まだ認定を申請していない場合は、「親の介護は何から始める?」で申請の順番を説明しています。
2. 買う店が、指定を受けた事業者か
介護保険法第44条は、都道府県などの指定を受けた特定福祉用具販売の事業者の「事業所において販売される」用具を買ったときに支給する、と定めています。指定を受けていない店、たとえば一般のネット通販やホームセンターで買った物は対象外です。岡山市は「指定事業者以外のホームセンターやインターネットなどで購入した用具は対象外」、船橋市は「指定を受けていない事業所から購入した場合は対象外」と案内しています。
指定事業者で買えば、どんな買い方でもよいわけではありません。上尾市と杉並区は、指定事業者であっても、福祉用具専門相談員の助言を受けずにインターネットや通信販売で買った場合は対象外と案内しています。介護保険を使うなら、指定を受けた事業者で、福祉用具専門相談員と相談して買うことが条件です。事業者の探し方に迷ったら、ケアマネジャーか市区町村の窓口に聞いてください。
3. その年度の枠がいくら残っているか
支給の対象になる購入額の上限(支給限度基準額)は10万円で、厚生省(現在の厚生労働省)の告示(平成12年厚生省告示第34号)で決まっています。保険から出る額は、このうち9割(所得により8割・7割)です。数える期間は、毎年4月1日からの12か月(4月から翌年3月まで)です(施行規則第72条)。要介護度に関係なく同じ額で、要支援のときに買った分も同じ10万円の枠から差し引かれます(同第73条)。
同じ年度にすでに何か買っていれば、残りの枠はその分だけ少なくなります。4月にシャワーチェアを買っていれば、秋にポータブルトイレを買うときに使えるのは、10万円からシャワーチェアの代金を引いた額です。その年度に買った物があるか分からなければ、市区町村の窓口に問い合わせておきます。市区町村が条例で上限を上乗せしている場合もある(介護保険法第44条第6項)ので、実家のある市区町村の窓口で確認してください。
自己負担の割合(1割・2割・3割)は、市区町村から届いている介護保険負担割合証に書かれています。
ケアマネジャーを通さないと買えないのか
国の省令(施行規則第71条)では、申請書に「その用具が必要な理由」を書く欄があります。ケアプラン(居宅サービス計画)か特定福祉用具販売計画を添えて、その記載で必要だと分かれば、理由の欄は書かなくてよいと省令に書かれています。
一方で、京都市のように、ケアマネジャーがケアプランに位置づけていることを原則の要件にしている市区町村もあります。ケアプランへの記載が必要かどうかは市区町村によって違うので、ケアマネジャーがいる場合は、買う前に必ず相談してください。担当のケアマネジャーがいない場合は、地域包括支援センターか市区町村の窓口に相談してください。
出典:介護保険法(e-Gov法令検索)第27条第8項・第44条・第56条、介護保険法施行規則第71条〜第73条、平成12年厚生省告示第34号(PDF)、名古屋市「福祉用具の購入費の支給」、上尾市「介護保険 福祉用具購入の手引き」(PDF・令和5年5月作成)、岡山市「福祉用具購入費支給申請Q&A」(PDF・令和8年3月)、船橋市「福祉用具購入費の支給」、杉並区、京都市の福祉用具購入の案内(PDF)、いずれも2026年10月17日参照。
介護保険で買える9つの品目
購入の対象になる品目は厚生労働大臣の告示で決まっていて、いまは9品目です。排泄予測支援機器は2022年(令和4年)4月1日から、固定用スロープ・歩行器・歩行補助つえの3つは2024年(令和6年)4月1日から加わりました。「5品目」と書いている解説は、これらが加わる前の内容です。
| 品目(告示の名称) | 主な中身と条件 | 関連記事 |
|---|---|---|
| 腰掛便座 | 和式便器の上に置いて腰掛式にするもの、洋式便器の上に置いて高さを補うもの、立ち上がりを助ける電動式・スプリング式のもの、居室で使える移動式の便器(ポータブルトイレ)。設置にかかる費用は対象外 | ポータブルトイレの選び方、「親の排泄ケア、何から始める?」 |
| 自動排泄処理装置の交換可能部品 | 交換して使う部品。装置の本体はレンタル(貸与)の対象 | 当サイトに記事なし |
| 排泄予測支援機器 | 2022年4月1日から対象。購入前の協議を求める市区町村がある(杉並区) | 当サイトに記事なし |
| 入浴補助用具 | 入浴用いす、浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台、浴室内すのこ、浴槽内すのこ、入浴用介助ベルト。入浴用いすは、座面の高さがおおむね35cm以上か、リクライニング機能があるもの | シャワーチェアの選び方、浴槽をまたげない方に(バスボード・浴槽台)、「親の入浴が心配になったら」 |
| 簡易浴槽 | 空気式や折りたたみ式などで、容易に移動できるもの。硬い材質でも、使わないときに立て掛けるなどして収納できるものを含む。居室で必要なときに入浴できるものに限る | 当サイトに記事なし |
| 移動用リフトのつり具の部分 | 体に合っていて、移動用リフトにつなげられるもの。リフト本体はレンタル(貸与)の対象 | スライディングボードの選び方(移動用リフトの節) |
| 固定用スロープ | 2024年4月1日から対象。取付けに工事が要らず、頻繁に持ち運ばないもの。工事を伴う段差の解消は住宅改修になる | スロープの選び方の記事はまだありません。工事を伴う場合は「介護保険の住宅改修の申請の流れと書類」 |
| 歩行器(歩行車を除く) | 2024年4月1日から対象。脚がすべて杖先ゴムなどで床に着く固定式・交互式のもの。車輪やキャスターの付いた歩行車は除く | 屋内用歩行器の選び方、杖・歩行器・車椅子の使い分け早見表 |
| 歩行補助つえ(松葉づえを除く) | 2024年4月1日から対象。カナディアン・クラッチ、ロフストランド・クラッチ、プラットホームクラッチ、多点杖に限る | 自立式の杖(4点杖)の選び方、T字杖と4点杖の違いは? |
出典:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「特定福祉用具販売」(9品目と選択制)、老高発0315第6号(令和6年3月15日)「介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて」の一部改正(PDF)(スロープ・歩行器・歩行補助つえの定義)、平成12年1月31日老企第34号(mhlw.go.jp)(腰掛便座・入浴用いす・簡易浴槽・つり具の条件)、東京都福祉局「特定福祉用具販売・特定介護予防福祉用具販売」(排泄予測支援機器の追加)、いずれも2026年10月17日参照。
同じ品目でも、付属機能の部分は扱いが分かれることがあります。岡山市のQ&Aは、温水洗浄便座の機能やリモコンなどの付加価値の部分を対象外としています。温水洗浄などの付属機能のある型を選ぶときは、対象になる範囲を事前に確認してください。
杖・歩行器・スロープは、借りるか買うかを選べる
2024年(令和6年)4月1日から、固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、単点杖(松葉づえを除く)、多点杖の4つは、レンタルと購入のどちらかを選べるようになりました(厚生労働省のページの記載)。ここでいう単点杖は、カナディアン・クラッチ、ロフストランド・クラッチ、プラットホームクラッチの3種類に限られます(通知の定義)。
よく見かけるT字杖(一本杖)は、通知の定義に名前が出てきません。購入の対象にも、レンタルの対象にも入っていません。また、松葉づえは購入の対象外で、レンタルの対象にだけ入っています。お使いの杖が対象になるかは、ケアマネジャーか福祉用具専門相談員に確認してください。
借りるか買うかは、使い続ける期間の見込みや、体の状態の変わり方で向き不向きが変わります。考え方は「歩行器・車椅子は買う?借りる?」の介護保険の章で説明しています。レンタルと購入のどちらが合うかは、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員の提案を聞いて決めてください。
出典:厚生労働省「福祉用具・住宅改修」(選択制)、老高発0315第6号(PDF)別添第一の1(10)(貸与の歩行補助つえ)・2(9)(販売の歩行補助つえ)、いずれも2026年10月17日参照。
申請にそろえる書類
どこの市区町村でも共通するのは、省令(施行規則第71条)で決まっている次の3つです。
| 書類 | 書く・載っている中身 | 受け取り先と気をつける点 |
|---|---|---|
| 支給申請書 | 種目、商品名、メーカー名、販売事業者名、金額、購入日、その用具が必要な理由 | 様式は市区町村のもの。ケアプランか特定福祉用具販売計画を添えて必要だと分かれば、理由の欄は書かなくてよい |
| 領収証 | 代金を払ったことを示すもの | 販売事業者から受け取る。宛名は親本人のフルネーム |
| パンフレットなど | 用具の内容が分かる書類 | 販売事業者から受け取る。値段の分かるカタログの写しを求める市区町村もある(船橋市) |
市区町村で加わる書類の例
このほかに求められる書類は、市区町村ごとに違います。
- 杉並区は、販売計画書の写しを求めています。
- 港区は、福祉用具サービス計画書と、必要に応じて口座変更届を挙げています。
- 仙台市は、ケアプランの写し(ある場合)、特定福祉用具販売計画の写し、負担割合証などの写しを挙げていて、マイナポータルの「ぴったりサービス」から電子申請もできると案内しています。
- 江東区は、償還払いなら口座振替依頼書、受領委任払いなら委任状を求めています。
- 京都市は、ケアプランの写し(要介護1〜5の場合)や、福祉用具の購入が必要な理由書を求めています。
実際にそろえる書類は、実家のある市区町村のページか窓口で確認してください。排泄予測支援機器や浴室内すのこのように、品目によって別の書類が付く市区町村もあります。
領収書の宛名は親本人のフルネームに
子が代金を払った場合でも、領収書の宛名は親本人(介護保険の被保険者)のフルネームにしてもらいます。上尾市の手引きは「上様」や家族の名前の領収書は使えないとしていて、世田谷区も宛名を本人の氏名にするよう案内しています。世田谷区は、5万円以上の領収証には収入印紙が必要だとも書いています。帰省できずに子が電話で手配する場合も、宛名は親の名前にするよう販売事業者に先に伝えておきます。
出典:介護保険法施行規則第71条、船橋市「福祉用具購入費の支給」(ページ更新日2026年3月12日)、杉並区、港区「介護保険居宅介護(介護予防)福祉用具購入費の支給について」、仙台市「特定福祉用具購入費の支給」、江東区「特定福祉用具購入費の支給」、京都市(PDF)、上尾市(PDF)、世田谷区「福祉用具購入費の支給」、いずれも2026年10月17日参照。
お金の流れ:償還払いと受領委任払い
介護保険から出るのは、かかった費用の9割です(介護保険法第44条第3項)。所得によっては8割または7割になります。上限の10万円まで買った場合、保険から出る額は、1割負担の方で9万円、2割負担の方で8万円、3割負担の方で7万円です。10万円を超えた分は全額自己負担です。
| その年度に買った額と負担割合 | 自己負担 | 保険から出る額 |
|---|---|---|
| 3万円・1割負担 | 3,000円 | 2万7,000円 |
| 3万円・2割負担 | 6,000円 | 2万4,000円 |
| 10万円・1割負担 | 1万円 | 9万円 |
| 10万円・3割負担 | 3万円 | 7万円 |
| 12万円・1割負担 | 3万円 (10万円の1割の1万円+超えた2万円) | 9万円 |
出典:介護保険法第44条第3項・第4項、平成12年厚生省告示第34号(PDF)、名古屋市「福祉用具の購入費の支給」(1割・2割・3割負担ごとの支給の上限)、いずれも2026年10月17日参照。表の金額は、この割合と上限から編集部が計算した例です。
償還払い:いったん全額を払い、あとで給付分が戻る
原則は償還払いです。販売事業者に代金の全額を払い、申請のあとで9割(8割・7割)が市区町村から振り込まれます。3万円の用具なら、1割負担の方でも、買う日には3万円を用意することになります。支給までにどのくらいかかるかは、申請のときに窓口で聞いておくと、立て替える期間の見通しが立ちます。
受領委任払い:はじめから1〜3割だけを払う
受領委任払いは、親が自己負担分(1〜3割)だけを販売事業者に払い、残りを市区町村が事業者に直接払う方法です。市区町村が独自に行っているもので、実施していないところもあります。実施しているところでも、市区町村に登録した事業者に限る例があります。江東区は区に登録された受領委任払い取扱事業者に、仙台市は市に登録した販売事業者に限っています。杉並区は、新規の認定申請中・区分変更の申請中・入院中ではないことを条件にしています。
受領委任払いを使いたい場合は、事業者を決める前に、販売事業者と市区町村の窓口の両方に、使えるかどうかを確認してください。登録事業者に限る市区町村もあるので、その事業者が登録しているかも、このとき確かめます。介護保険のほかのお金の枠との関係は、「親の介護は何から始める?」のお金の章で説明しています。
出典:杉並区「居宅介護(介護予防)特定福祉用具購入費の支給」、江東区「特定福祉用具購入費の支給」(更新日2026年2月4日)、仙台市「特定福祉用具購入費の支給」、いずれも2026年10月17日参照。受領委任払いがあるかどうか、使える事業者の条件は市区町村によって違います。
つまずきやすい場面
先にネットや店で買ってしまった
原則として支給の対象になりません。介護保険法第44条が、指定を受けた事業者の事業所で販売された用具を対象にしているためです。上尾市と杉並区は、福祉用具専門相談員の助言を受けずにネットや通信販売で買った物も対象外としています。
すでに買ってしまった場合、返品の受付には期限が設けられていることもあるので、まず購入先の返品条件を確かめ、その期限内に、レシートや注文画面の記録を手元に残して市区町村の窓口に相談してください。同じ品目を指定事業者で買い直すかどうかも、ケアマネジャーと相談して決めます。
同じ品目をもう一度買いたい
購入した日が属する年度(4月から翌年3月まで)に、同じ種目をすでに買って支給を受けていれば、原則として支給されません(施行規則第70条第2項)。例外は、すでに買った用具が壊れた場合、介護の必要の程度が大きく上がった場合、その他特別の事情があって市区町村が必要と認めた場合です。厚生労働省のQ&A(令和6年度介護報酬改定に関するQ&A Vol.1 問98)は、ロフストランド・クラッチやスロープのように、種目の性質から複数を使うことが想定される場合も、この「特別の事情」に含むとしています。
条文(施行規則第70条第2項)が支給しないとしているのは同じ年度の買い直しです。ただ、年度が変わっても、支給は「日常生活の自立を助けるために必要と認められる場合に限る」(同条第1項)とされているので、まだ使える物の買い替えは認められにくく、港区と江東区は、同じ品目は原則1回と案内しています。買い直しが認められるかは、購入する前に市区町村の窓口かケアマネジャーに聞いてください。
古くなった、部品が壊れた
壊れたのか、使ううちにすり減っただけなのかで扱いが変わり、その線引きは市区町村ごとに違います。岡山市のQ&A(令和8年3月)は、壊れて使えないときに市が必要と認めれば再購入や部品の購入を対象とし、カビなどの汚れや、使ううちのすり減りは対象外、修理の工賃も対象外としています。これは岡山市の扱いで、全国共通の基準ではありません。買い直す前に、壊れた部分の写真を撮ってから窓口に相談してください。
入院中・施設に入所中に買った
購入費の対象は、在宅で暮らす要介護・要支援の方です(介護保険法第44条の「居宅要介護被保険者」)。江東区は、入院中や施設に入所中など自宅にいない日に買った物を対象外としています。岡山市は、入院中に使う福祉用具を対象外としています。退院後に使うつもりでも、入院中の日付で買うと支給されない市区町村があるため、退院前に用意したい場合は、買う前に病院の相談員かケアマネジャーを通して市区町村に確認してください。
申請を忘れていた
介護保険の給付を受ける権利は、「行使することができる時から二年」で時効になります(介護保険法第200条)。数え始めの日は案内ごとに違い、江東区は「購入日の翌日から2年」、岡山市は「領収日から2年」、港区は「購入日から2年以内に申請」としています。領収書の日付から2年以内を目安に、買ったらすぐ申請します。代金を後払いや分割にした場合の数え方は、市区町村の窓口で確認してください。
出典:介護保険法第44条・第200条、介護保険法施行規則第70条、厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」(PDF)問98、上尾市(PDF)、杉並区、港区、江東区、岡山市(PDF)、いずれも2026年10月17日参照。
よくある質問
ネットで買った物は、後から申請できますか?
原則として支給の対象になりません。介護保険の購入費は、指定を受けた事業者から、福祉用具専門相談員と相談して買った物が対象です。すでに買ってしまった場合は、まず購入先の返品条件と期限を確かめ、その期限内に、レシートや注文の記録を手元に残して市区町村の窓口に相談してください。
要支援でも使えますか?
使えます。要支援1・2の方も要介護1〜5の方も対象で、要介護度によって買える品目は変わりません。要支援の方の場合は「特定介護予防福祉用具販売」という名前になり、10万円の枠は共通で、要支援のときに買った分もその枠から差し引かれます。
10万円を超えたらどうなりますか?
その年度(4月から翌年3月まで)に10万円を超えた分は全額自己負担です。1割負担の方が12万円分を買うと、10万円の1割の1万円と、超えた2万円を合わせた3万円が自己負担になります。市区町村が条例で上限を上乗せしている場合もあるので、実家のある市区町村の窓口で確認してください。
壊れたら買い直せますか?
すでに買った用具が壊れた場合や、介護の必要の程度が大きく上がった場合などは、市区町村が必要と認めれば、同じ年度でも例外として支給されることがあります。汚れや、使ううちのすり減りは対象外とする市区町村もあります(岡山市)。買い直す前に、壊れた部分の写真を撮ってから、市区町村の窓口かケアマネジャーに相談してください。
レンタルと購入を選べる品目はどれですか?
2024年4月1日から、固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、単点杖(松葉づえを除く。カナディアン・クラッチ、ロフストランド・クラッチ、プラットホームクラッチ)、多点杖の4つが選べるようになりました。一般的なT字杖(一本杖)は、購入の対象にもレンタルの対象にも入っていません。どちらが合うかは、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員の提案を聞いて決めてください。
ケアマネジャーに頼まないと買えませんか?
国の省令では、ケアプランは申請書の「必要な理由」の代わりになる書類という扱いです。一方で、ケアプランに位置づけていることを原則の要件にしている市区町村もあります(京都市)。ケアマネジャーがいる場合は、買う前に必ず相談してください。いない場合は、地域包括支援センターか市区町村の窓口に相談してください。
申請はいつまでにすればいいですか?
給付を受ける権利は2年で時効になります(介護保険法第200条)。数え始めの日は市区町村の案内によって、購入日、購入日の翌日、領収日と違います。領収書の日付から2年以内を目安に、買ったらすぐ申請してください。