認知症の親のお金を守る|成年後見・任意後見・家族信託の違いと、元気なうちに決めること
親の物忘れが気になり始めた方、施設の費用や実家の売却で手続きが進まなくなった方に

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通帳と印鑑を持って銀行へ行っても、本人でないと払い出せないと言われることがあります。施設の費用のために実家を売りたくても、親が書類の意味を理解できなければ進められません。親の判断能力が下がると、お金はあるのに使えない状態になることがあります。最高裁判所の統計でも、成年後見の申立ての動機は預貯金等の管理・解約が93.4%でした(令和7年)。この記事では、そうなったときに家族がお金や実家を扱うための3つの仕組み、法定後見・任意後見・家族信託を、始められる時期・誰が決めるか・家庭裁判所の関わり方で比べます。どれを使うべきかは決めません。合うものは親の状態と財産の中身、家族の事情で変わるからです。代わりに、親が元気なうちに家族で決めておくことと、相談先を挙げます。

先に結論

※2026年10月22日時点の現行制度で説明しています。成年後見制度を見直す改正法がすでに公布されていますが、施行日は決まっていません(改正で変わる点)。

3つの制度の比較表を見る

親の判断能力が下がると止まること

判断能力が下がっても、親の財産がなくなるわけではありません。進められなくなるのは、本人の意思を確かめないと先へ進めない手続きです。最高裁判所の統計では、令和7年に終わった成年後見関係の事件42,674件の申立ての動機(1件で複数あり)は、預貯金等の管理・解約が39,871件(93.4%)でいちばん多く、身上保護(生活や介護の手配)が31,655件(74.2%)、介護保険契約が19,502件(45.7%)、不動産の処分が15,502件(36.3%)と続きます。

出典:最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(令和7年1月〜12月)」(courts.go.jp・PDF/2026年10月22日参照)。割合の母数は終局事件の総数で、1件に複数の動機があるため合計は100%になりません。

預金の引き出し・定期預金の解約

銀行で預金を払い出すには、預金者本人の意思確認が必要です。全国銀行協会が2021年2月18日に公表した「金融取引の代理等に関する考え方」は、家族であっても本人の預金を払い出すことはできない、という原則に立っています。同じ文書では、本人の判断能力が低下した場合は成年後見制度などの利用を求めるのが基本、とされています。

全銀協の文書は、例外にも触れています。後見人等がいない親族による払出しは「極めて限定的な対応」で、成年後見制度の利用を求めるのが基本としたうえで、本人が以前なら自分で払っていたはずの医療費を親族が代わりに払うなど、本人の利益に適合することが明らかな場合に限り応じることが考えられる、としています。判断能力の喪失を確かめる方法としては、面談、診断書、担当医へのヒアリングなどが挙げられています。後見人等が選ばれたあとは、後見人等以外の家族からの払出しには応じないのが基本です。

親が元気なうちに本人が銀行へ代理人を届け出ておけば、その代理人と取引できる場合がある、とも書かれています。ただし、代理人届を扱っているか、親の判断能力が下がったあとも代理人が取引を続けられるかは銀行ごとに違うので、届け出るときに確認してください。

検索すると「口座凍結」という言葉がよく出てきます。実際には、本人の意思が確認できないため、家族が代わりに払い出しや解約を進められなくなることを指しています。全銀協の文書は会員各行の参考として示された考え方で、銀行がより厳しく対応する場合や取引を断る場合もあると脚注で断っています。親の取引先の銀行で、どう扱われるかを確認してください。

出典:全国銀行協会「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方」公表版(zenginkyo.or.jp・PDF/2026年10月22日参照)。親族からの払出しに応じるかどうかは、各金融機関の判断です。

実家の売却・賃貸と施設の契約

実家を売る・貸す、介護サービスや施設の契約を結ぶ、といった手続きも、契約の当事者は親本人です。本人が契約の内容を理解できなければ、家族が代わりに署名して進めることはできません。上の申立ての動機にも、預金と並んで介護保険契約(45.7%)と不動産の処分(36.3%)が出てきます。後見が始まったあとに実家を売るときの決まりは、法定後見の章で説明しています。

亡くなったあとの口座の話とは別

ここまでの話は、親が存命で判断能力が下がった場合のことです。亡くなったあとの口座の扱いは相続の手続きになり、別の話です。その流れは「親が元気なうちに聞いておくこと」の口座の章と、「親が亡くなったら相続で最初に調べること」で説明しています。

3つの制度を1枚で比べる

法定後見・任意後見・家族信託の違いを、始められる時期、支える人を誰が決めるか、家庭裁判所の関わり、介護や施設の契約を扱えるか、実家の売却、途中でやめられるか、かかる費用で並べました。どれかを勧める表ではありません。

比べる点法定後見
後見・保佐・補助
任意後見家族信託
民事信託
始められる時期親の判断能力が下がったあと。家庭裁判所に申し立てる契約は親の判断能力があるうちに結ぶ。動き出すのは、判断能力が下がって家庭裁判所が任意後見監督人を選んでから親が契約の内容を理解できるうちに契約を結ぶ。理解できなくなってからは結べない
支える人を誰が決めるか家庭裁判所が審判で選ぶ。申立書に書いた候補者が選ばれるとは限らない親が公正証書の契約で任意後見受任者を決め、契約は登記される。動き出すには家庭裁判所が任意後見監督人を選ぶ必要がある親が信託契約(信託法3条1号)で受託者(子など)を決める
家庭裁判所の関わり後見人等を選び、監督する任意後見監督人を選ぶ。監督人が任意後見人を監督する家庭裁判所へ定期的に報告する仕組みはない。チェック役(信託監督人など)を置くかも契約で決める
介護・施設の契約(身上保護)後見人等に与えられた権限の範囲で扱える場合がある。範囲は区分と審判の内容によるため、家庭裁判所・専門家に確認契約で決めた代理権の範囲で扱える信託の対象にならない
実家の売却成年後見人が本人の住む(住んでいた)家を売るには家庭裁判所の許可が要る(民法859条の3)契約で決めた代理権の範囲で扱う。範囲は公証役場・専門家に確認信託に入れられるか、受託者がどこまで売れるかは契約の内容で変わる。弁護士・司法書士に確認
途中でやめられるか現行制度では原則やめられない(判断能力の回復などで開始の原因がなくなった場合は取消し)契約の定めと法律の手続きによる。専門家に確認契約の定めによる。専門家に確認
かかる費用申立手数料800円・登記手数料2,600円(収入印紙)、郵便切手、必要なら鑑定費用。後見人等の報酬は家庭裁判所が決め、親の財産から払う公証人手数料13,000円・収入印紙2,600円・登記嘱託手数料1,600円など。動き出したあとは任意後見監督人への報酬がかかる場合がある。額や要否は家庭裁判所・専門家に確認契約づくりを頼む専門家への費用など。内容と依頼先で変わるため、この記事では相場を書かない

※2026年10月22日時点の現行法(民法・任意後見契約に関する法律・信託法)と、裁判所・法務省・日本公証人連合会の案内をもとに編集部が整理しました。金額の出典はそれぞれの章に書いています。

2026年6月成立の改正法で変わる点

成年後見制度を見直す民法等の改正法(令和8年法律第45号)が2026年6月に成立し、6月24日に公布されました。法務省掲載の法律案要綱によると、施行後は後見と保佐の審判が廃止されて補助に一本化され、必要がなくなれば家庭裁判所が審判を取り消せるようになる見込みです。任意後見も「任意後見開始の審判」で効力が生じる形に変わる見込みです。

施行は公布から2年6か月以内の政令で定める日で、この記事を書いた2026年10月22日時点では施行日は決まっていません。すでに後見などを使っている方の扱いは経過措置で定められますが、この記事では中身を扱いません。施行日と移行の扱いは、法務省・家庭裁判所の案内で確認してください。

出典:法務省「民法等の一部を改正する法律(成年後見制度の見直し)」(moj.go.jp)、法務省掲載の法律案要綱(PDF)/いずれも2026年10月22日参照。

法定後見(後見・保佐・補助)の流れと注意

3つの区分と、申し立てる人・申し立てる先

法定後見は、判断能力の程度によって3つに分かれます(2026年10月22日時点の現行民法)。

それぞれの審判をするのは家庭裁判所です(民法7条・11条・15条)。どの区分に当たるかは、申立ての際に家庭裁判所の案内や専門家に確認してください。申し立てられるのは本人・配偶者・四親等内の親族・検察官などで(民法7条ほか)、身寄りがない場合などには市区町村長が申し立てることもあります。最高裁判所の統計では、令和7年の申立人は本人が約24.8%、市区町村長が約23.7%、本人の子が約18.5%の順でした(申立人が複数いる事件は重ねて数えています)。申し立てる先の家庭裁判所は、親の住所地などによって決まります。どこになるかは、最寄りの家庭裁判所に確認してください。

令和7年に終わった事件のうち、約71.1%が2か月以内、約93.8%が4か月以内に終わっています。期間は事件ごとに違うので、目安として見てください。

出典:e-Gov法令検索「民法」(laws.e-gov.go.jp)、最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(令和7年)」(PDF)/いずれも2026年10月22日参照。

申立ての費用

全国共通で書ける額は2つです。申立手数料が収入印紙800円(保佐・補助で代理権付与や同意権付与を加えると、それぞれ800円ずつ増えます)、審判のあとの登記手数料が収入印紙2,600円です。このほかに連絡用の郵便切手代と、戸籍謄本などの書類を取る費用がかかります。郵便切手の額は裁判所ごとに違うため、申立て先の家庭裁判所の「郵便切手」の案内で確認してください。

医師による鑑定は、すべての事件で行われるわけではありません。令和7年に鑑定が行われたのは終わった事件の約3.4%で、鑑定した事件の費用は5万円以下が43.7%、10万円以下まで含めると約85.8%でした。法務省のQ&Aも「ほとんどの場合10万円以下」としています。鑑定が要るかどうかと費用は、事案と裁判所によって違います。

出典:厚生労働省「成年後見制度 利用の費用」(guardianship.mhlw.go.jp)、法務省「成年後見制度Q&A(Q21〜Q25)」(moj.go.jp)、最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(令和7年)」(PDF)/いずれも2026年10月22日参照。郵便切手代・鑑定料・書類の取得費は、申立て先の家庭裁判所の案内で確認してください。

後見人に家族が選ばれるとは限らない。報酬は家庭裁判所が決める

申立書に家族を候補者として書くことはできますが、誰を選ぶかは家庭裁判所が本人の事情を見て決めます。令和7年に後見等の開始と同時に選ばれた成年後見人等のうち、親族は7,014件(約16.4%)、親族以外は35,718件(約83.6%)でした。親族以外の内訳は、司法書士11,966件、弁護士8,903件、社会福祉士7,280件、市民後見人390件などです。

後見人等が親の財産から報酬を受け取るには報酬付与の申立てが必要で、額は家庭裁判所が審判で決めます。インターネット上には月額の目安を載せた記事もありますが、裁判所の現行の資料で金額を確認できなかったため、この記事では額を書きません。

家庭裁判所は、後見人等の不正にも対応しています。令和7年に家庭裁判所が対応を終えた不正は178件で、そのうち弁護士・司法書士などの専門職によるものは26件、残りは専門職以外でした。被害額は全体で約7億9千万円(うち専門職約1億6千万円)です。件数は平成26年の831件が最も多く、令和3年以降は169〜191件の間で推移しています。件数は「その年に家庭裁判所が対応を終えたもの」で、不正がその年に行われた件数ではありません。数値は概数で今後訂正されることがあり、報告対象の定義が途中で変わっているため単純な年ごとの比較はできない、と資料に注記があります。

出典:最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(令和7年)」(PDF)、同「後見人等による不正事例(実情調査)」(PDF)、法務省「成年後見制度Q&A(Q21)」(moj.go.jp)、東京家庭裁判所後見センター「成年後見人・保佐人・補助人ハンドブック(令和7年4月)」(PDF)/いずれも2026年10月22日参照。

途中でやめられるか

2026年10月22日時点の現行制度では、成年後見制度は利用を始めると途中でやめられません(厚生労働省「成年後見はやわかり」)。後見開始の審判が取り消されるのは、本人の判断能力が回復したなど、開始の原因がなくなった場合です(民法10条)。申立ての段階でも、後見開始の申立ては、審判の前であっても家庭裁判所の許可がなければ取り下げられません(家事事件手続法121条)。一度申し立てると取り下げにも許可が要り、始めてからやめることもできません。だからこそ、申し立てる前に、費用や進め方を家庭裁判所や専門家に確かめておくことが大切です。

2026年6月に成立した改正法では、家庭裁判所が必要がなくなったと認めたときに、補助の審判を取り消せる規定が設けられます。どんな場合に取り消せるのか、すでに後見を使っている方にどう適用されるのかは、施行前の現時点では決まっていません。

出典:厚生労働省「成年後見はやわかり」(guardianship.mhlw.go.jp)、e-Gov法令検索「民法」「家事事件手続法」(laws.e-gov.go.jp)、法務省「民法等の一部を改正する法律(成年後見制度の見直し)」(moj.go.jp)/いずれも2026年10月22日参照。

実家を売るには家庭裁判所の許可が要る

成年後見人が本人に代わって、本人が住む(住んでいた)家や土地を売る・貸す・抵当権を設定するには、家庭裁判所の許可が要ります(民法859条の3)。保佐人・補助人が代理権を持つ場合も、同じ規定が準用されます(民法876条の5第2項・876条の10第1項)。施設に入ったあとの実家が「居住用」に当たるかどうかや、許可の見込みは、家庭裁判所・弁護士・司法書士に確認してください。

売る・貸す・置いておく、の費用と税の比べ方は「実家が空き家になったらどうする」で説明しています。

出典:e-Gov法令検索「民法 第859条の3」(laws.e-gov.go.jp)/2026年10月22日参照。

任意後見の流れ

公正証書で契約し、登記される

任意後見は、親が元気なうちに「判断能力が下がったら、この人にこの範囲を任せる」と決めておく契約です。任意後見契約は公正証書で結ぶ必要があり(任意後見契約に関する法律3条)、結んだ契約は登記されます。任意後見契約は、親が元気なうちに結んでおく必要があります(契約を結べる判断能力の目安は公証役場に確認してください)。公証役場での作り方の流れは「親が元気なうちに聞いておくこと」の冒頭の章にも書いています。

監督人が選ばれてから代理権を使える

契約を結んでも、すぐに任意後見人が動けるわけではありません。親の判断能力が不十分になったあと、本人・配偶者・四親等内の親族・任意後見受任者のいずれかが請求し、家庭裁判所が任意後見監督人を選びます(同法4条1項)。監督人が選ばれた時から、任意後見人は契約で決めた代理権を使えます(同法2条1号)。

任意後見契約が登記されていると、法定後見の開始は、本人の利益のため特に必要があると家庭裁判所が認めた場合に限られます(同法10条)。元気なうちに親が決めた人と範囲が、原則として優先される仕組みです。なお、令和7年の任意後見監督人選任の申立ては881件で、後見開始の申立て29,233件と比べると少数です。

出典:e-Gov法令検索「任意後見契約に関する法律」(laws.e-gov.go.jp)、最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(令和7年)」(PDF)/いずれも2026年10月22日参照。改正法の施行後は「任意後見開始の審判」で効力が生じる形に変わります(改正で変わる点)。

公正証書の費用

日本公証人連合会の案内では、任意後見契約公正証書の作成手数料は1契約につき13,000円です(証書が3枚を超えると、超える1枚ごとに300円加算)。ほかに法務局に納める収入印紙2,600円、登記嘱託手数料1,600円、書留郵便料、正本・謄本の交付手数料(書面の場合は1枚300円)がかかります。法務省のQ&A(Q22)も同じ額です。

契約の個数で費用が変わる点にも気をつけてください。任せる相手(受任者)を複数にすると、その数だけ契約の個数が増えます(権限を共同で使う定めがあれば1契約)。元気なうちの財産管理を頼む通常の委任契約を同時に結ぶ場合は、委任契約の手数料が別にかかります。親が入院していて公証人に病床まで来てもらう場合は、加算と日当・交通費が別に必要です。実際の費用は契約の内容や枚数で変わるため、作成する公証役場で確認してください。

出典:日本公証人連合会「手数料」(koshonin.gr.jp)、同「Q22 任意後見契約公正証書を作成する費用」(koshonin.gr.jp)、法務省「成年後見制度Q&A(Q22)」(moj.go.jp)/いずれも2026年10月22日参照。根拠は公証人手数料令(令和7年政令第263号)。改定前の額(手数料11,000円・登記嘱託手数料1,400円)を載せた資料が残っているので、日付に注意してください。

家族信託の注意

契約で決める。親が元気なうちしか結べない

家族信託(民事信託)は、親(委託者)が自分の財産を子など(受託者)に託し、受託者が決められた目的に沿って管理・処分する仕組みです。信託法3条1号の「信託契約」の形で結ぶので、親が契約の内容を理解できるうちにしか使えません。判断能力が下がったあとから始められない点は、任意後見と同じです。

家庭裁判所の監督はなく、チェックの仕組みも契約で決める

後見のように家庭裁判所へ定期的に報告する仕組みはありません。受託者を誰がチェックするか(信託監督人を置くかなど)も、契約で決めます。きょうだいの一人が受託者になるなら、ほかのきょうだいが収支を確認できる形にするかどうかを、契約の段階で話し合っておくことになります。

預金は信託用の口座で分けて管理する形が多い

信託した金銭は、受託者が自分のお金と分けて「信託財産」として管理します。管理には信託用の口座(信託口口座など)を使う形が多いのですが、口座を扱っているかどうかや条件は金融機関ごとに違います。どの財産を信託に入れるか、口座を開けるかは、金融機関と専門家(弁護士・司法書士)に確認してください。

身上保護は含まれない。税と遺言については別に確認を

介護サービスや施設入居の契約、入院の手続きといった身上保護の代理は、信託の対象になりません。そうした場面にも備えたいなら、任意後見と組み合わせるかどうかを専門家に相談してください。

信託契約の中で、親が亡くなったあと信託した財産を誰に引き継ぐかを決めておくこともできます。遺言との違いや、自筆の遺言書を預ける手順は「親の自筆の遺言書を法務局に預ける手順」で説明しています。相続税などの税の扱いはこの記事では書かないので、税理士か税務署に確認してください。この記事では、家族信託を扱う特定の業者や専門家は紹介していません。

出典:e-Gov法令検索「信託法」(laws.e-gov.go.jp)/2026年10月22日参照。契約の内容・費用は弁護士・司法書士などの専門家に確認してください。

元気なうちに家族で決めること

どの制度を使うにしても、その前に家族で話しておけることがあります。どこの銀行に口座があるか、といった置き場所の聞き取りは「親が元気なうちに聞いておくこと」に一覧があるので、ここではその次に決める5つを挙げます。

  1. 誰が親のお金を管理するか。きょうだいがいるなら、管理する人と収支を確かめる人を分けておくと、あとで「勝手に使った」と疑われる場面を減らせます。
  2. 何にお金を使うか。施設の費用、医療費、実家の修理など、親が「これには使ってよい」と考える範囲を聞いておきます。
  3. 実家をどうするか。施設に入ったら売るのか、貸すのか、そのままにするのか。後見が始まってから売るには家庭裁判所の許可が要るので、親自身の考えを先に聞いておく意味があります。
  4. どの専門家に相談するか。任意後見なら公証役場、家族信託なら弁護士・司法書士、と相談先が変わります。
  5. 親の取引先の銀行に、代理人届の扱いがあるか。あるなら条件と手続き、親の判断能力が下がったあとも代理人が取引を続けられるかを、親と一緒に確認しておきます。

話し合いの進め方やきょうだいの役割分担は「親の介護を兄弟で分担する」で、判断能力が下がる前に書き残しておく事実の整理は「エンディングノートの選び方」で説明しています。物の片づけを含めた準備は「親が元気なうちの生前整理」で扱っています。物忘れが気になって受診をどう勧めるか迷っているなら、「親が認知症かも|何科を受診するか・受診を嫌がるときの誘い方」を先に読んでください。

相談先

どこに聞けばよいか分からない段階なら、まず地域包括支援センターか親が住む市区町村の高齢福祉の窓口に連絡してください。制度ごとの窓口は次のとおりです。

出典:厚生労働省「地域包括支援センターについて」(mhlw.go.jp・PDF)/2026年10月22日参照。

日常のお金の管理だけなら、日常生活自立支援事業

判断能力が不十分でも、契約の内容を判断できる方なら、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業を使える場合があります。実施主体は都道府県・指定都市の社会福祉協議会で、窓口は市区町村の社会福祉協議会などです。福祉サービスの利用援助と、それに付随する預金の払戻し・預け入れなどの日常的な金銭管理を行います。

利用料は実施主体が定めます。厚生労働省は訪問1回あたり平均1,200円を参考値として示しており、契約前の相談と生活保護受給世帯の利用料は無料です。契約の内容を判断できなくなると使えないので、その場合は成年後見を検討することになります。利用料と申込み方法は、親が住む市区町村の社会福祉協議会で確認してください。

出典:厚生労働省「日常生活自立支援事業」(mhlw.go.jp)/2026年10月22日参照。

施設・介護サービスの契約との関係

介護サービスや施設の契約も、契約の当事者は親本人です。親が契約の内容を理解できなくなると、サービスを使い始める手続きで止まることがあります。成年後見の申立ての動機の45.7%が介護保険契約でした(令和7年)。

なお、成年後見・任意後見・家族信託は、介護保険の給付(福祉用具のレンタルや住宅改修など)とは別の、民法・任意後見契約に関する法律・信託法に基づく仕組みです。介護保険の窓口で申し込むものではありません。要介護認定の申請から結果が届くまでの流れは「親の介護は何から始める?」で説明しています。

よくある質問

家族は後見人になれますか?

申立書に家族を候補者として書くことはできます。ただし誰を選ぶかは家庭裁判所が本人の事情を見て決めるので、候補者に書いた家族が選ばれるとは限りません。令和7年に後見等の開始と同時に選ばれた成年後見人等のうち、親族は約16.4%、司法書士・弁護士・社会福祉士などの親族以外は約83.6%でした(最高裁判所「成年後見関係事件の概況」令和7年)。任意後見なら、任せる相手(任意後見受任者)を親が契約で決めておけます。動き出すには、家庭裁判所が任意後見監督人を選ぶ必要があります。

後見人の報酬は誰が払いますか?

親(本人)の財産から支払います。後見人等が報酬を受け取るには報酬付与の申立てが必要で、額は家庭裁判所が審判で決めます。裁判所の現行の資料で金額を確認できなかったため、この記事では具体的な額は書いていません。

成年後見は途中でやめられますか?

2026年10月22日時点の現行制度では、利用を始めると途中でやめられません。審判が取り消されるのは、本人の判断能力が回復したなど開始の原因がなくなった場合です(民法10条)。2026年6月に成立した改正法では、家庭裁判所が必要がなくなったと認めたときに補助の審判を取り消せる規定が設けられますが、施行日は決まっておらず、具体的な運用もまだ決まっていません。

家族信託は誰に頼めばいいですか?

契約の内容は家族の事情と財産の中身で変わるので、弁護士・司法書士などの専門家に相談してください。この記事では特定の業者や専門家は紹介していません。費用も依頼先と内容で変わるため、相談の段階で見積もりを確認してください。信託用の口座を開けるかどうかは、親の取引先の金融機関にも確認が要ります。

日常のお金の管理だけ手伝ってもらうことはできますか?

契約の内容を判断できる方なら、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業を使える場合があります。福祉サービスの利用援助と、それに付随する預金の払戻し・預け入れなどの日常的な金銭管理を行う事業です。利用料は実施主体が定め、厚生労働省は訪問1回あたり平均1,200円を参考値として示しています。申込み方法は親が住む市区町村の社会福祉協議会で確認してください。

親が施設に入ったあと、実家を売ることはできますか?

親本人に判断能力があれば、親自身が売主として売れます。成年後見人がついている場合、本人が住む(住んでいた)家や土地を売るには家庭裁判所の許可が要ります(民法859条の3)。施設に入ったあとの実家が「居住用」に当たるかどうかは、家庭裁判所に確認してください。元気なうちに家族信託を結んでおく選択肢もあります。実家のような不動産を信託に入れられるか、受託者がどこまで売却できるかは契約の内容で変わるため、弁護士・司法書士に確認してください。

いわゆる「口座凍結」は、どんなときに起きるのですか?

親の判断能力が下がり、本人の意思を確かめられなくなったときに起きます。銀行は本人の意思を確認できないと預金を払い出せないため、家族が代わりに引き出しや解約を進められなくなります。全国銀行協会の考え方では、本人の判断能力が低下した場合は成年後見制度などの利用を求めるのが基本とされています。何をきっかけに、どこまで取引が制限されるかは金融機関ごとに違うため、親の取引先の銀行に確認してください。亡くなったあとの口座の扱いは相続の手続きで、この話とは別です。

3つの制度を比べる