親の介護を兄弟でどう分担するか|役割・お金・連絡の決め方と、話し合いの進め方

決めることを3つに分けて、話し合う順番に並べました

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近くに住んでいるから、という理由で、通院の付き添いも、ケアマネジャーからの電話も、親の通帳の管理も、気づけば一人に集まっている。ほかの兄弟は様子が分からないまま、たまに電話で意見だけを言う。お金の話を切り出すと、返事が遅くなる。親の介護をめぐる兄弟のこうした行き違いは、Q&Aサイトなどにも寄せられています。この記事は、兄弟姉妹で「誰が何をするか」「お金をどう出すか」「どう連絡を取り合うか」の3つを決め、不公平だと感じたときに見直すまでを、順番に書いたものです。法律の扱いは裁判所の手続案内などに書かれている範囲にとどめています。自分の家庭で何が認められるかは個別の判断になるので、弁護士や家庭裁判所の窓口に確認してください。要介護認定の申請や介護保険のお金の仕組みは「親の介護は何から始める?」にまとめてあるので、ここでは兄弟の分担だけを扱います。

先に結論

作業の書き出し表を見る

兄弟の介護分担がこじれる3つの場面

兄弟の間で介護の話がこじれるときに、相談に出てくる場面を3つに分けました。どれも、誰が何をするかを決めないまま時間がたっている点が共通しています。

近くに住む人に、電話・手続き・見守りなどの作業が寄っていく

介護が始まったばかりのころは、担当を決めないまま、目の前の用事を片づける日が続きます。病院から電話がかかってくる。役所に書類を出す。冷蔵庫の中を見て買い足す。こうした用事は親の家に早く行ける人が片づけることになり、何か月かたつと、通院も手続きも買い物も、近くに住む一人がほとんど引き受けている形になっていることがあります。遠方の兄弟は何を頼まれているのか分からず、近くに住む側は伝えたつもりでいる、というすれ違いが起き、互いに相手の考えを確かめないまま時間が過ぎていきます。

電話や手続きなど、見えにくい作業が数に入っていない

通院の付き添いや泊まりがけの介護は、ほかの兄弟にも見えます。一方で、ケアマネジャーとの電話、介護サービスの契約書の確認、薬の残りの確認、請求書の支払いといった作業は、やっている本人以外にはほとんど見えません。兄弟で話すときに帰省の回数だけで比べると、電話や手続きのように外から見えにくい作業が数に入らず、多く担っている人が不公平だと感じることがあります。

費用をどこから出すか決まっていない

介護サービスの利用料、おむつ代、通院のタクシー代。最初は近くに住む人が自分の財布から立て替え、そのまま払い続けていることがあります。親の年金から出すのか、兄弟で出し合うのか、立て替えた分をいつ精算するのかが決まっていないと、金額が積み上がったあとでは、お金の話を切り出しにくくなります。兄弟に介護費用の負担を求めたいのに、兄弟と連絡が取れなくなっている、という相談もQ&Aサイトに寄せられています。

出典例:Yahoo!知恵袋「兄弟が実両親の介護を目前に、全員逃げました」(detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/2026年10月22日参照)。個人の相談で、統計ではありません。

次の章から、役割・お金・連絡の順に、決めておくことを書いていきます。

決めること①役割|窓口(キーパーソン)を決め、作業を書き出す

窓口(ケアマネジャー・病院との連絡役)を1人決める

最初に決めるのは、ケアマネジャーや病院、地域包括支援センターからの連絡を受ける窓口です。この記事では、この窓口になる人を「キーパーソン」とも呼びます。窓口が兄弟の数だけあると、ケアマネジャーは誰に話せばいいか迷いますし、兄弟の間でも聞いた内容が食い違います。

窓口になる人が、介護の作業を全部引き受けるわけではありません。役目は、連絡を受けること、受けた内容を兄弟に共有すること、決める必要があることを兄弟の話し合いに持ち帰ることの3つです。日中に電話に出られるか、親の家に行ける距離に住んでいるか、親が話しやすい相手か、といった点を見て決めます。窓口の役目そのものも、次の書き出し表で1つの作業として数えます。

作業の書き出し表

次に、親の暮らしと介護で発生している作業を書き出します。下の表の作業と頻度は例です。親の状態に合わせて、行を足したり消したりしてください。

作業中身の例頻度の例遠方からでも担当できるか
窓口(連絡の受け手)ケアマネジャー・病院・地域包括支援センターからの連絡を受け、兄弟に共有する随時電話に出られれば担当できる。面談は帰省や電話で
通院の付き添い送り迎え、診察で医師の説明を聞く、次の予約を取る月1〜2回など帰省に合わせれば一部を担当できる
手続き要介護認定の申請・更新、介護保険や医療の書類の提出、役所への問い合わせ認定の更新のときなど郵送やオンラインで出せるものは担当できる(受け付け方は市区町村によって違う)
ケアプランの相談ケアマネジャーとの面談、サービスの内容や回数の相談ケアプランを作るとき・見直すとき電話やオンラインで参加できるか、ケアマネジャーに相談する
買い物・日用品の補充食品、おむつなどの消耗品、薬の受け取り週1回など通販や定期便で届ける形なら担当できる
見守りの電話体調、食事、困っていることを聞く週2回、曜日を決めるなど担当できる
お金の管理年金の入金と引き出しの確認、公共料金や介護サービスの支払い、出納帳を付ける月1回など通帳を預かる人と、記録を確認する人を分ければ一部を担当できる
帰省時の交代泊まって家事や夜の介護を代わり、主に見ている人が休む月1回、連休など帰省のときに担当できる
書類の保管介護保険の通知、ケアプラン、領収書をまとめておく届いたとき写真やスキャンで共有すれば一部を担当できる

表ができたら、作業ごとに担当者の名前を書き、1回にかかる時間も書き添えます。名前の入らない作業が残ったら、誰が引き受けるかを話し合うか、介護保険のサービスや外部のサービスに任せられないかをケアマネジャーに相談します。

手続きのうち要介護認定の申請は、本人や家族のほか、地域包括支援センターや居宅介護支援事業者などに代行を頼める場合があります。代行を頼んでも提出先は親が住む市区町村です。代行を頼めるかどうかは、親が住む市区町村の窓口で確認してください。申請の手順は「親の介護は何から始める?」の申請の章で説明しています。

出典:横浜市「要介護認定の申請」(city.yokohama.lg.jp/2026年10月22日参照)。横浜市の例では、代行を頼んでも提出先は親が住む区の窓口です。代行を頼める先や受け付け方は、親が住む市区町村で確認してください(この一文は編集部の注意書きです)。

遠方の兄弟が担当できること

離れて暮らしていても、担当できる作業はあります。厚生労働省の2025(令和7)年国民生活基礎調査では、在宅で介護を受けている人の主な介護者のうち、「別居の家族等」が13.4%でした(同居46.1%、事業者16.0%、不詳23.9%)。離れて暮らしていても、主な担い手になっている人はいます。

遠方の兄弟が帰省したときに介護のやり方へ意見を言うと、毎日見ている人は責められていると受け取ることがあります。気づいたことはその場で言うより、窓口の人に伝えて、次の話し合いで扱う形に決めておくと、そう受け取られる場面を減らせます。

出典:厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」(2026年7月15日公表/mhlw.go.jp(PDF)/2026年10月22日参照)。割合はいずれも主な介護者全体に占める割合です。

決めること②お金|親のお金を基本に、足りない分の分け方を決める

まず親の年金・預貯金と、月にかかる費用を兄弟で共有する

介護にかかるお金は、親本人の年金や預貯金から出すことを基本に考えると、兄弟の話し合いを始めやすくなります。必ず親の口座から払うという決まりがあるわけではなく、考え方の一つで、家庭によって違います。

そのために、親の年金がいくら入り、預貯金がどのくらいあり、介護にいくらかかっているかを、兄弟全員で同じ数字を見て確認します。通帳や保険証券の置き場所を親に聞いておく話は「親が元気なうちに聞いておくこと」にまとめています。

月にどのくらいかかるかの目安として、生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」(2024(令和6)年度)では、介護に使った月々の費用の平均が9.0万円(在宅5.3万円、施設13.8万円)、一時的な費用の平均が47.2万円、介護の期間の平均が55.0か月でした。介護経験のある人の回答の平均で、親の要介護度や、在宅か施設かで大きく変わります。

出典:公益財団法人生命保険文化センター 介護費用・期間の解説ページ(2024(令和6)年度「生命保険に関する全国実態調査」〈2人以上世帯〉の結果/jili.or.jp/2026年10月22日参照)。

介護保険の自己負担の割合や、1か月に保険で使える上限、上限を超えた分が払い戻される仕組みは、「親の介護は何から始める?」のお金の章で説明しています。

足りない分の分け方の例

親のお金で足りない分が出たら、兄弟でどう出し合うかを決めます。ここで扱うのは、毎月続く介護費用のうち、親のお金で足りない分です。葬儀費用や相続のときの分け方とは別の話で、葬儀費用については「親の葬儀費用は誰が払う?」で扱っています。

足りない分が月3万円、兄弟3人(A・B・C)の場合の仮の数字
分け方の例考え方話し合っておきたい点仮の数字での例
均等に割る兄弟の人数で同じ額ずつ出す収入や家計の事情に差があると、同じ額でも負担の重さの感じ方が違うA・B・C 1万円ずつ
収入や家計の事情に応じて割る出せる額に合わせて割合を決める収入を兄弟にどこまで見せるか。転職や子どもの進学などで事情が変わったときの見直しA 1万5,000円
B・C 7,500円ずつ
作業を多く担う人は少なめにする書き出し表で作業の多い人の負担額を減らす作業の量をどう数えるか。作業の分担が変わったときの扱い通院と窓口を担うA 5,000円
B・C 1万2,500円ずつ

※数字は書き方を示すための仮の値で、相場や勧める額ではありません。

どの分け方が正しいという決まりはありません。2つを組み合わせることもできますし、作業の量をお金の割合に入れるかどうかも、兄弟で決めることです。決めた額を親の口座に入れるのか、立て替えている人に渡すのか、毎月何日までに出すのかも、あわせて決めておきます。

子が払うときは、医療費控除を申告できる人が変わることがある

兄弟の誰かが介護サービスの利用料を払う場合、誰が実際に払ったかで、医療費控除を申告できる人が変わることがあります。払い方を決める前に「親の介護費は医療費控除になる?」で確認し、迷うときは税務署に相談してください。

親のお金を預かる人・立て替えた人の記録

親の通帳やキャッシュカードを兄弟の一人が預かる場合や、誰かが費用を立て替える場合は、最初から記録を残します。記録があれば、預かっている人は「何に使ったのか」と聞かれたときに、日付と金額で答えられます。

立て替えと精算の表は、葬儀費用の場合と同じ考え方で作れます。「親の葬儀費用は誰が払う?」の精算表の章で、表の例を示しています。毎月のおむつ代を兄弟で出し合う場合の、注文するアカウントと支払うカードの決め方は「おむつの定期便を実家へ届ける手順」で説明しています。

決めること③連絡|手段と頻度、ケアマネジャーの話の共有

役割とお金を決めても、情報が一人にしか届かないと、また同じ行き違いが起きます。連絡は、手段・頻度・誰が誰に伝えるかを決めておきます。

連絡の種類手段の例誰から誰へタイミングの例
定期の報告兄弟全員が入ったグループのメッセージ窓口の人から全員へ月1回、決めた日に
ケアマネジャーとの面談の内容グループのメッセージに要点を書く面談に出た人から全員へ面談のあと数日以内
急ぎの連絡
入院・転倒・急な体調の変化など
電話知った人から全員へその日のうちに
お金の報告出納帳の写真やファイルお金を預かる人から全員へ月1回
見守りの電話で気づいたことグループのメッセージ電話をかけた人から全員へ電話のあと

報告を読んだ人は、短くてもよいので返事をします。既読の表示だけでは、読んだのか、内容に賛成なのかが分かりません。

ケアマネジャーには、兄弟の窓口が誰か、急ぎのときは誰に電話すればいいかを伝えておきます。ケアマネジャーとの連絡手段と頻度の決め方は、「親の介護は何から始める?」のケアマネジャーの章で説明しています。

話し合いの進め方(5つの順番)

いきなり「誰がやるか」から話し始めると、事実を共有しないまま、それぞれの事情を言い合う形になることがあります。話し合いは、次の5つの順番で進めます。

① 親の希望を先に聞く

親がどこで暮らしたいか(自宅か施設か)、誰に何を頼みたいか、自分のお金をどう使ってほしいかを、先に聞きます。兄弟の話し合いは、親の希望を前提にして始めます。誰が聞くかより、聞いた内容を兄弟全員が見られるようにしておくことが大事です。聞いておく項目と聞き方は「親が元気なうちに聞いておくこと」にまとめています。

② 要介護度・ケアプラン・月の費用を共有してから役割を決める

役割の話の前に、親の要介護度、ケアプランに入っているサービス、月にかかっている費用と親の収入を、兄弟全員が同じ資料で確認します。資料は、要介護認定の結果の通知、ケアプラン、介護サービスの請求書や領収書です。要介護度ごとの目安は「要支援1から要介護5まで、うちの親はどれ?」で説明しています。事実をそろえてから、作業の書き出し表で担当を決めます。

③ 決めたことをメモに残し、全員が「了解」を返す

口約束のままだと、あとで記憶が食い違います。兄弟全員が入ったグループのメッセージでもかまわないので、次の内容を一度文章にして、全員が「了解」と返す形にしておきます。葬儀費用の分担で「親の葬儀費用は誰が払う?」が勧めているのと同じやり方です。

書き残しても、決めたとおりに進まないことはあります。そのときも、何を決めたかが文章で残っていれば、見直しの話し合いを始めるときの手がかりになります。

④ 見直す時期を決めておく

親の状態も、兄弟それぞれの仕事や家庭の事情も変わります。決めた分担は、次のようなときに見直すと先に決めておきます。

要介護認定は、新規の認定の有効期間が原則6か月で、その後も更新の手続きがあります。更新の結果が届いたときを、見直しの合図にする方法もあります。

出典:厚生労働省「要介護認定に係る法令」(mhlw.go.jp/2026年10月22日参照)。新規認定の有効期間は、市町村が必要と認める場合は3か月から12か月の間で定められます。

⑤ ケアマネジャー・地域包括支援センターを交える

兄弟だけで話すと、昔からの関係や感情が話に入りこみ、介護の話が進まないことがあります。介護の状況を知っている第三者に同席してもらう、または第三者から説明してもらうと、事実をもとに話を進めやすくなります。

厚生労働省の資料(令和7年7月時点)では、ケアマネジャーによるケアプランの作成など(居宅介護支援)は全額が介護保険から給付され、利用者の負担はありません。制度改正で変わることがあるので、最新の扱いは市区町村で確認してください。地域包括支援センターは市町村が設置する相談窓口で、令和7年4月末現在、全国に5,487か所あり、すべての市町村に置かれています。高齢者本人だけでなく家族介護者の相談も受けていて、困りごとが出始めたころから相談できます。家族の話し合いへの同席を引き受けるかどうかは、事業所や担当者によって違うので、頼む前に聞いてください。

出典:厚生労働省老健局「介護保険制度の概要」(令和7年7月/mhlw.go.jp(PDF)・7ページの注記/2026年10月22日参照)、厚生労働省「地域包括支援センターについて」(mhlw.go.jp(PDF)/2026年10月22日参照)。

不公平だと感じたとき

分担を決めたあとでも、「自分ばかりやっている」「口だけ出される」と感じることはあります。気持ちをそのままぶつける前に、次の3つを試してください。

作業量を書き出して、相手にも見える形にする

作業の書き出し表に、1か月の回数と1回にかかる時間を書き足します。「通院の付き添い 月2回・1回半日」「ケアマネジャーとの電話 月4回・1回20分」のように書くと、見えにくい作業もほかの兄弟に伝わります。不満を言葉で伝えるより、表を見せて「この作業を誰かに代わってほしい」と具体的に頼むほうが、相手も自分にできることを考えやすくなります。

交代や外部サービスで負担を減らす

兄弟の間で作業を移しても足りないときは、介護保険のサービスを増やせないかをケアマネジャーに相談します。親が短い期間施設に泊まるショートステイを使えば、主に見ている人がまとめて休む日を作れます。申し込みの流れと費用は「初めてのショートステイ」で説明しています。夜の介護で眠れない日が続いているなら、「夜中に何度も起こされて眠れない」に、記録の付け方と兄弟への頼み方を書いています。遠方の兄弟が、ショートステイを使う日の費用を出す形の分担もあります。

お金で調整する例

作業を移せないときは、お金の出し方で調整する方法もあります。次の3つは例です。

どれを選ぶか、あるいはお金で調整しないかは、兄弟で決めることです。調整のしかたを変えたら、③のメモも書き直して、全員が「了解」と返す形にしておきます。

法律ではどうなっているか

法律の規定は、話し合いの前提として知っておくためのものです。ここでは裁判所の手続案内などに書かれている範囲を説明します。自分の家庭で何が認められるかは事情によって変わるので、弁護士や法テラスに相談してください。

扶養義務|親に対しては、子である兄弟姉妹それぞれが扶養義務を負う

民法では、直系血族(親と子、祖父母と孫など)と兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務を負うと定められています。義務を負う人として書かれているのは直系血族と兄弟姉妹で、長男・長女のように生まれた順で区別する書き方はされていません。

ただし、兄弟全員が同じ額を出す義務がある、という意味ではありません。親を引き取るのか、お金を出すのか、いくら出すのかといった扶養の中身は、まず当事者の話し合いで決めます。話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に「扶養請求調停」(家事調停)を申し立てることができます。調停では、扶養する義務のある人それぞれの経済状況や生活状況、扶養を受ける人の意向などが考慮されます。調停で話し合いがまとまらなければ、原則として審判の手続に移ります。

出典:裁判所「扶養請求調停」(courts.go.jp/2026年10月22日参照)。

相続のときの寄与分と特別の寄与|対象になる人が違う

介護をした人が相続のときに考慮される仕組みとして、「寄与分」と「特別の寄与」があります。名前は似ていますが、対象になる人が違います。

制度対象になる人どんな制度か決め方・期限
寄与分相続人(親の子である兄弟姉妹など)療養看護などで、親の財産の維持や増加に「特別の寄与」をした場合に、相続分とは別に認められる相続人どうしの話し合い。まとまらなければ家庭裁判所の調停・審判で決める(遺産分割と合わせて進む)
特別の寄与相続人ではない親族(たとえば子の配偶者)無償で療養看護などをして、親の財産の維持や増加に特別の寄与をした場合に、相続人に金銭(特別寄与料)を請求できる。相続を放棄した人などは対象外令和元年(2019年)7月1日以降に開始した相続が対象。相続の開始と相続人を知った時から6か月、または相続開始から1年を過ぎると、家庭裁判所への申立てができない

介護をしたら必ず多く受け取れる、というものではありません。寄与分や特別の寄与と認められるかどうかは個別に判断され、日々の世話をしたことだけで認められるとは限りません。具体的なことは、弁護士か、家庭裁判所の手続案内で確認してください。

親が自分の財産をどうしたいかを形にする手段の一つに遺言がありますが、書くかどうか、何を書くかは親本人が決めることです。親の意向は、話し合いの①で聞いておく内容の一つとして扱います。

出典:裁判所「寄与分を定める処分調停」(courts.go.jp/2026年10月22日参照)、裁判所「特別の寄与に関する処分調停」(courts.go.jp/2026年10月22日参照)、法務省「相続に関するルールが大きく変わります」(平成30年12月/moj.go.jp(PDF)/2026年10月22日参照)。

親のお金を預かる人の注意

親のお金を預かる人は、親のお金を親のために使い、出金と支払いを出納帳とレシートで記録し、兄弟がいつでも見られるように共有します。記録の付け方はお金の章で書いたとおりです。

親の判断能力が下がると、本人の口座の手続きを家族が代わりに進めるのが難しくなる場合があります。どこまで家族が手続きできるかは金融機関によって扱いが違うので、気になり始めた段階で、取引のある金融機関や、親が住む地域の地域包括支援センターに相談してください。地域包括支援センターは、権利擁護の事業として成年後見制度の活用促進にも取り組んでいます。制度について知りたいときの相談先にもなります。

出典:厚生労働省「地域包括支援センターについて」(mhlw.go.jp(PDF)/2026年10月22日参照)。権利擁護の事業として成年後見制度の活用促進が挙げられています。

よくある質問

何もしない兄弟に、介護のお金を請求できますか

親と子は直系血族として互いに扶養の義務を負うとされ、子が複数いれば兄弟姉妹それぞれが親に対する扶養義務者になります。扶養の中身について兄弟の話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に扶養請求調停を申し立てる手続があります。調停では、それぞれの経済状況や生活状況などが考慮されます。ただ、請求が認められるか、立て替えた分を兄弟に求められるかは個別の判断になるので、弁護士や法テラスに相談してください。まずは作業の書き出し表と出納帳で、誰が何をしていくら出しているかを見える形にしてから、話し合いの場を持つことを勧めます。

介護をした分は、相続で多くもらえますか

相続人である兄弟姉妹が、療養看護などで親の財産の維持や増加に特別の寄与をした場合には、寄与分が認められることがあります。ただし、認められるかどうかは個別に判断され、日々の世話をしたことだけで認められるとは限りません。子の配偶者のように相続人ではない親族が、無償で療養看護などをして親の財産の維持や増加に特別の寄与をした場合は、特別の寄与という別の制度があり、家庭裁判所への申立てには期限があります。具体的なことは、弁護士か家庭裁判所の手続案内で確認してください。

親の介護費用を立て替えています。どうすればいいですか

立て替えた人・日付・金額・内容を記録し、領収書を1か所にまとめておきます。そのうえで、親のお金から精算するのか、兄弟で分けるのか、いつ精算するのかを兄弟で決めてください。誰が払ったかで医療費控除を申告できる人が変わることがあるので、払い方を決める前に「親の介護費は医療費控除になる?」を読み、迷うときは税務署に確認してください。

一人っ子の場合は、どうすればいいですか

分け合う兄弟がいないぶん、外の手を早めに借ります。地域包括支援センターはすべての市町村にあり、家族介護者の相談も受けています。厚生労働省の資料(令和7年7月時点)では、ケアマネジャーによるケアプランの作成などは利用者の負担がありません(制度改正で変わることがあります)。配偶者や親戚に頼めることがあれば、この記事の書き出し表を使って、何をどのくらい頼むかを具体的に決めてください。泊まりの介護を代わる人がいないときは、ショートステイで休む日を作る方法もあります。

兄弟が話し合いに来ません

集まって話すのが難しければ、作業の書き出し表と、月にかかっている費用をメッセージで送り、返事がほしい期日を書いておきます。電話やビデオ通話で短く話す形でもかまいません。それでも返事がないときは、ケアマネジャーや地域包括支援センターに状況を伝えて相談してください。扶養の中身について話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所の扶養請求調停という手続もあります。

作業の書き出し表を見る