親が弱ってきたかも(フレイル)|帰省したときに見るところと、介護予防の相談先

体重・歩く速さ・食事・口・外出・気持ちの変化に気づいたときの、次の一歩を順に並べました

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たとえば、半年ぶりに実家に帰ると、親のズボンのベルトが前より内側の穴で留まっている。駅から一緒に歩くと、子のほうが何度も立ち止まって待つことになる。電話ではいつも「元気だよ」と言っていたのに、聞けば最近はほとんど出かけていないという。そんな場面に出会うと、介護はまだ先だと思っていたのに、急に心配になります。この記事では、帰省したときに親の変化に気づくための見るところと、気づいたあとに頼れる相談先と介護予防の仕組みを、厚生労働省と日本老年医学会の資料をもとに説明します。

先に結論

帰省したときに見るところの表を見る

フレイルとは|健康と要介護の間の段階

「フレイル」は、日本老年医学会が2014年5月に出したステートメント(学会としての見解)で提唱した呼び方です。その説明を、ここでは次のように言い換えます。

年をとって体や心の予備力が落ち、病気やけがなどをきっかけに介護が必要な状態になりやすくなった段階。健康な状態と要介護の間にあたり、適切な対応で健康な状態に戻ることもある。

同学会は、75歳以上の多くの方は、健康な状態からこの中間の段階を通って、少しずつ介護が必要な状態になっていくとみています。早く気づいて対応すれば、食事や着替え、買い物など日々の生活を自分でこなす力を保ったり高めたりすることが期待できる、という立場です。ただし、全員が元に戻るとは言っていません。

フレイルは体だけの話ではありません。同学会は、体の変化(筋力が落ちる、体重が減る)だけでなく、気持ちの落ち込みや物忘れ、一人暮らしで人と話す機会が減ることまで含めて考えています。帰省したときに、体の様子だけでなく、外出や人付き合い、気分にも目を向けるのはこのためです。

研究や診療で使われる基準があること

フレイルかどうかを見るための基準は、研究や診療の場で使われています。日本の研究や診療で使われている基準の一つ(J-CHS基準。厚生労働省の後期高齢者の質問票の解説にも参考として載っています)では、体重減少・筋力(握力)・疲れやすさ・歩く速さ・身体活動の5つを見ます。握力や歩く速さは器具や計測が必要で、当てはまるかどうかの判断は医療機関で行います。

この記事には、基準の数値や「いくつ当てはまればフレイル」という判定の方法は載せていません。日本老年医学会は2014年の時点で、フレイルの定義や診断基準について世界的な合意はまだない、としていました。家族が数字を当てはめて決めるものではありません。

出典:日本老年医学会「フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント」(平成26年5月・厚生労働省掲載PDF)、厚生労働省「後期高齢者の質問票の解説と留意事項」(mhlw.go.jp(PDF)。J-CHS基準の5項目が参考として載っています)。いずれも2026年10月22日参照。

帰省したときに見るところ

下の表に、帰省したときに目を向けたい変化と、気になったときに読む記事・相談先を並べました。表の項目の多くは、国の基本チェックリスト(後の章で説明します)の質問と重なっていて、家族が普段の様子から確かめられる形にしてあります。

このチェックでフレイルかどうかは判断できません。当てはまるものがあっても、それだけで病気や要介護と決まるわけではありません。前回の帰省と比べて変わったところを見つけ、相談するときの材料にするための表です。

見るところどんな変化か次に読む記事・相談先
体重・服のゆるみズボンやベルトがゆるくなった、顔や腕が細くなった。体重計があれば、前回の帰省のときと比べる。減り続けているならかかりつけ医。食事の補い方は「親の食が細くなったら」
歩く速さ一緒に歩くと遅れる。15分ほど続けて歩くのを嫌がる。階段で手すりや壁に頼るようになった。「高齢の親に贈る室内運動グッズの選び方」、通いの場
立ち上がり椅子や床から立つときに、机や膝に手をついて勢いをつける。立つまでに時間がかかる。家の中のつかまり先は「実家の転びやすい場所7つと、帰省時10分チェックリスト」
足元・転びかけすり足になった。この1年で転んだことがある。スリッパがよく脱げる。「親のスリッパが危ない」
握る力ペットボトルや瓶のふたを開けにくそうにしている。重い買い物袋を持たなくなった。握力が落ちてきたサインの一つとして見る。ほかの変化と重なるなら地域包括支援センターかかかりつけ医に伝える。家でできる運動の道具は「高齢の親に贈る室内運動グッズの選び方」
食事の量と中身一回に食べる量が減った。冷蔵庫に同じものが並んでいる。食事を抜く、菓子パンだけで済ませる日がある。「親の食事が心配になったら」、配食は「介護食の宅配の選び方」
むせ・口お茶や汁物でむせる。固いものを避けるようになった。口が渇くと言う。入れ歯が合わない様子がある。むせが続くならかかりつけ医。手入れは「親の口臭と入れ歯の手入れ」
水分トイレを気にして水やお茶をあまり飲まない。「親が水を飲まない」
外出・人付き合い週に1回も家の外に出ない週がある。去年より出かける回数が減った。人と話す機会が減った。地域包括支援センター・通いの場
疲れやすさ・気持ちわけもなく疲れたと言う。前は楽しんでいたことをしなくなった。日中もよく横になっている。続くようならかかりつけ医
もの忘れ同じことを何度も聞く。今日の日付が分からないことがある。「親が認知症かも」

家の中の段差や照明の確認は、この表に入れていません。「実家の転びやすい場所7つと、帰省時10分チェックリスト」を見てください。

国のチェック票と、受けられる場所

高齢の方の心身の変化を確かめる質問票は、国が様式を示しているものが2つあります。名前が似ていますが、使う場面と対象が違います。

基本チェックリスト(25問)|65歳以上の方が、窓口で相談したときに答える

基本チェックリストは、はい・いいえで答える25問の質問票で、様式は厚生労働省の通知に載っています。質問は7つの分野に分かれています。外出や買い物などの暮らしの動作、階段や立ち上がり・15分続けて歩けるか・転倒などの運動、体重の減りと体格(BMI)、固いもののかみにくさ・むせ・口の渇きといった口の状態、外出の回数、物忘れ、気分です。

体重の質問は「6か月で2〜3kg以上の体重減少があったか」です。この数字に当てはまればフレイル、という意味の質問ではありません。

受け方は、65歳以上の方が、親の住む市区町村の窓口か地域包括支援センターに相談したときに、職員と対面で答えるものとされています(総合事業のガイドラインの記載)。結果は窓口の職員が見て、本人の希望も聞きながら、次のどれにつなぐかを決めます。

「事業対象者」に当たるかどうかの基準は国が示していますが、結果をどう見て何につなぐかは窓口の職員が判断するもので、家族が点数を当てはめて使うものではありません。そのため、判定の基準はこの記事には載せていません。

手続きは本人が窓口に行くのが原則です。ただし、入院中、窓口が遠い、外出がつらいなど本人が行けない場合は、電話や家族が窓口に来ての相談をもとに、本人の状況を聞き取ることになっています(国の通知による)。家族だけの相談でどこまで進められるかは、親が住む市区町村によって違います。本人が希望すれば、チェックリストとは別に要介護認定の申請もできます。

40〜64歳の方は基本チェックリストの対象外です。この年代の方が介護保険のサービスを使えるのは、加齢が原因とされる特定の病気(特定疾病)で介護が必要になった場合に限られ、要介護認定の申請が必要です。詳しくは親が住む市区町村の介護保険の窓口で確認してください。

後期高齢者の質問票(15問)|主に75歳以上の方の健診の問診で使われる

後期高齢者の質問票は15問の問診票で、健康状態、心の健康、食習慣、口の働き、体重の変化、運動と転倒、物忘れ、喫煙、社会参加、困ったときに相談できる人の有無の10の分野を聞きます。体重の質問は基本チェックリストと同じく「6か月で2〜3kg以上の体重減少があったか」です。

厚生労働省の解説によると、この質問票は、高齢の方の健康状態を全体的に確かめ、市区町村などが行う健康支援の取り組み(保健事業)や受診につなぐために使われます。主に75歳以上の方の健診(後期高齢者健診)の問診で使われ、通いの場や、かかりつけ医を受診したときに使われることもあります。答えの結果で、家族がフレイルかどうかを決めるものではありません。

親の年齢によっては、この質問票を使う健診の対象ではないこともあります。対象になる年齢、健診の受け方・時期・費用は、親が住む市区町村に確認してください。

出典:厚生労働省 老健局振興課長通知「介護予防ケアマネジメント(第1号介護予防支援事業)の実施及び介護予防手帳の活用について」(老振発0605第1号・平成27年6月5日。様式1が基本チェックリスト/mhlw.go.jp(PDF))、厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業のガイドラインについて」(老発0605第5号・最終改正 令和8年8月20日/mhlw.go.jp(PDF))、厚生労働省「後期高齢者の質問票の解説と留意事項」(mhlw.go.jp(PDF))。いずれも2026年10月22日参照。

体・食・口・外出・気持ち、5つの入口

帰省して気になった変化は、おおむね次の5つの入口のどれかに入ります。それぞれの対策や道具の選び方は別の記事で扱っているので、ここでは入口ごとに読む先を一つずつ挙げます。

  1. 体を動かす:歩くのが遅くなった、立ち上がりがつらそうなら、家でできる運動の道具を「高齢の親に贈る室内運動グッズの選び方」で、足元の安全を「親のスリッパが危ない」で説明しています。
  2. 食べる:食べる量が減った、痩せてきたという変化のうち、体重が減り続けているときは、食品を足す前にかかりつけ医に相談してください。そのうえで、何から決めるかは「親の食事が心配になったら」で確かめられます。栄養を足す食品の成分表示の見方は「親の食が細くなったら」で、水分は「親が水を飲まない」で扱っています。
  3. 口:固いものを避ける、入れ歯が合わない、口が乾くといった変化は、食べる量にもつながります。手入れの方法は「親の口臭と入れ歯の手入れ」と「スポンジブラシの使い方」で説明しています。むせが続くときは、道具より先にかかりつけ医に相談してください。
  4. 外に出る・人と会う:外に出る回数や人と会う機会が減ってきたら、市区町村の介護予防の取り組み(通いの場など)が入口になります。この記事の相談先の章で説明しています。
  5. 気持ち:気持ちが沈んでいる、わけもなく疲れると言う、物忘れが増えたという変化は、かかりつけ医に伝えてください。物忘れの受診の進め方は「親が認知症かも」で説明しています。

相談先と介護予防の仕組み

介護保険の認定を受ける前から使える介護予防の仕組みがあります。相談先は大きく3つです。

地域包括支援センター

市区町村の高齢の方の相談窓口で、介護予防の相談も受けています。厚生労働省の通知には、本人が窓口に来られない場合は電話や家族の来所による相談をもとに状況を聞き取る、と書かれています。家族からの相談の受け方は市区町村やセンターによって違うので、離れて暮らしているなら、まず親が住む地域を担当するセンターに電話して確かめ、帰省で気づいたことを伝えてください。表で気づいた変化は、「いつごろから」「どのくらい」とメモしておくと、センターの職員に正確に伝わります。担当のセンターの探し方と最初の電話の内容は「親の介護は何から始める?」の最初の章で説明しています。

介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)

総合事業は、市区町村が行う介護予防と暮らしの支援の仕組みです。誰が使えるかで、大きく2つに分かれます。

通いの場は、地域の人が集まって体操などをする場です。65歳以上なら、要支援などの認定を受けていなくても参加できる場合があります。場所・内容・参加の条件は市区町村ごとに違うので、実家のある市区町村の高齢者福祉の窓口か地域包括支援センターで聞いてください。家でできる運動とあわせた説明は「高齢の親に贈る室内運動グッズの選び方」の介護保険の章にあります。

総合事業のサービスには利用料がかかるものがあり、金額は市区町村がサービスごとに決めます。従来の訪問介護・通所介護にあたるサービスでは、介護保険の利用者負担の割合(原則1割、所得により2割か3割)を考慮して、市区町村が利用料を決めます。親の場合にいくらかかるかは、親が住む市区町村か地域包括支援センターで確認してください。

出典:厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業のガイドラインについて」(老発0605第5号・最終改正 令和8年8月20日/mhlw.go.jp(PDF))、「介護予防・日常生活支援総合事業の適切かつ有効な実施を図るための指針」(令和6年厚生労働省告示第168号/厚生労働省 法令等データベース)。いずれも2026年10月22日参照。

かかりつけ医

体重が減り続けている、お茶や汁物でむせることが続く、疲れやすさや気持ちの落ち込みが続くときは、運動の道具や栄養の食品を買うより先に、かかりつけ医に相談してください。こうした変化の原因は家族には判断できません。受診のときは、帰省で気づいた変化と、いつごろからかを伝えます。後期高齢者の質問票は、かかりつけ医の受診時に使われることもあります。

物忘れが気になる場合の受診先と、受診を嫌がるときの誘い方は「親が認知症かも|何科を受診するか・受診を嫌がるときの誘い方」で説明しています。

離れて暮らす子ができること

帰省のたびに、同じところを見て書き残す

変化は一度だけでは分かりにくく、前回と比べて初めて気づくものです。帰省のたびに、表の項目をスマートフォンのメモに同じ順番で書いておくと、前回との違いがはっきりします。書くのは「駅から家まで、前は休まず歩けたが今回は2回休んだ」「ベルトの穴が一つ内側になった」のような、見たままのことで十分です。このメモは、地域包括支援センターやかかりつけ医に相談するときにそのまま使えます。

冬に帰省するなら、浴室と脱衣所の寒さも見ておきます。令和6年の人口動態統計をもとにした消費者庁の資料では、令和6年(2024年)に浴槽での溺死・溺水で亡くなった方7,776人のうち、65歳以上が7,363人でした。消費者庁は、入浴前に脱衣所と浴室を暖めること、家族の入浴が長い・音がしないなど異変を感じたらためらわず声をかけることを呼びかけています。

出典:消費者庁「年末年始、高齢者の事故に注意しましょう!」(令和7年12月23日・caa.go.jp(PDF)。厚生労働省「人口動態統計(令和6年)」を消費者庁が加工)。2026年10月22日参照。

電話で聞く質問の例

帰省と帰省の間は、電話で様子を聞きます。「元気?」と聞くと、たいてい「元気」で終わります。「何をしたか」「何を食べたか」を聞くと、様子が見えてきます。

一度の電話で全部を聞くと、調べられているように感じさせてしまいます。1回に1つか2つ、世間話の流れで聞く程度にしてください。

責めずに話す

「年なんだから」「なんでできないの」という言い方をすると、親が変化を話さなくなることがあります。「こっちが安心したいから、一度話を聞いてもらおう」のように、子の側の気持ちとして伝える方法もあります。

地域包括支援センターへの相談や通いの場は、介護が必要になった人だけのものではありません。一般介護予防事業は65歳以上の方すべてを対象にした仕組みなので、「弱ったから行く所」ではなく「65歳を過ぎた人向けに市区町村が用意している仕組み」として話すと、構えずに聞いてもらえることがあります(参加の条件は市区町村ごとに違います)。

よくある質問

フレイルかもしれないとき、病院は何科に行けばいいですか

まずはふだん通っているかかりつけ医に相談してください。かかりつけ医がいなければ、近くの内科で、体重が減った、歩くのが遅くなったなど、帰省で気づいた変化といつごろからかを伝えます。どこに行けばよいか迷うときは、親が住む地域の地域包括支援センターに聞くこともできます。

サプリメントを飲ませたほうがいいですか

この記事では、サプリメントや特定の食品がフレイルに効くかどうかは扱いません。食べる量が減った、体重が減ってきたときは、まずかかりつけ医に相談してください。食事の量や中身をどう補うかは「親の食事が心配になったら」と「親の食が細くなったら」で説明しています。持病があって薬を飲んでいる場合、サプリメントや健康食品を足すときは医師か薬剤師に確認してください。

フレイルの段階でも介護保険は使えますか

介護保険のサービスを使うには、要支援・要介護の認定を受けるのが基本です。65歳以上なら、認定を受けていなくても、窓口で基本チェックリストに答えて「事業対象者」になれば、総合事業の訪問型・通所型のサービスを使える場合があります。通いの場などの一般介護予防事業は、65歳以上の方すべてが対象です。どれに当たるかは窓口の職員が本人の希望も聞いて案内するので、まず親が住む地域の地域包括支援センターに相談してください。要介護認定の申請の流れは「親の介護は何から始める?」で説明しています。

親が「年だから仕方ない」と言って取り合いません

本人が困っていないと感じているうちは、説得しようとするほど話がこじれることがあります。子の側の心配として「一度話を聞いてもらいたい」と伝える、健診や受診のついでにかかりつけ医から話してもらう、といった進め方があります。親が乗り気でなくても、家族から地域包括支援センターに電話して相談することはできます。本人とどう会ってもらうかも含めて相談に乗ってもらえることがありますが、対応の範囲はセンターや市区町村によって違います。

どのくらいの頻度で様子を見ればいいですか

何か月おきに見ればよい、という決まった目安はありません。大事なのは、見るたびに同じところを見て、前回と比べられるようにしておくことです。帰省の回数を増やすのが難しければ、帰省の間は電話で具体的なことを聞き、気になる変化が続いたら、次の帰省を待たずに地域包括支援センターやかかりつけ医に相談してください。

帰省したときに見るところの表