玄関の上がり框でつまずく・ふらつく方に|段差の測り方と、踏み台・腰掛け・手すりの選び方
「測る」→「動作を分ける」→「道具を決める」の順番で
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帰省したら、親が玄関の上がり框(あがりかまち)から、壁に手をついて降りていた。立ったまま靴を履こうとして、片足でよろけていた。この記事は、そういう場面を見た家族が、実家の玄関に何を置くかを決めるためのものです。最初に框の高さと土間の広さを測り、次に「昇り降り」「靴の脱ぎ履き」「つかまる所」の3つに分けて、玄関台(踏み台)・腰掛け・手すりのどれを、どの寸法で置くかを考えます。製品の寸法と価格はメーカーや販売ページの表示で、介護保険の扱いは厚生労働省の通知と自治体の案内で確かめられた範囲だけを書いています。編集部が製品を使って比べた記事ではありません。
先に結論
最初にやるのは、上がり框の高さと、土間の奥行・幅をメジャーで測ることです。玄関台も腰掛けも手すりも、寸法が合っていないと、狭い土間につまずく物が1つ増えるだけになります。
框が高くて昇り降りがつらそうなら、玄関台で段差を分けます。立ったまま靴を履いてよろけるなら、座って履ける腰掛けを置きます。框のそばにつかまる所が無いなら手すりです。3つとも要る家もあれば、1つで足りる家もあります。
介護保険では、置くだけの玄関台と腰掛けは原則として対象外で、自費での購入になります。玄関台を框に固定して据え付けるなら住宅改修の「段差の解消」として、工事なしで置く手すりなら福祉用具貸与(レンタル)の「手すり」として相談できることがあります。要介護・要支援の認定があるなら、買う前にケアマネジャーに相談してください。 → 3つの比較表へ
玄関で起きていること
玄関では、短い時間にいくつもの動きが重なります。親が普段どう出入りしているかを思い出しながら、動きを分けてみてください。
- 上がるときは、框に片足をかけ、もう片方の足で土間を蹴って体を持ち上げます。框が高いほど、片足で体を支える時間が長くなります。
- 降りるときは、框の上から土間へ足を下ろします。足元の靴や段の縁が見えにくいまま降りることもあります。
- 靴を履く・脱ぐときに立ったままだと、片足立ちで靴に足を入れ、かかとを入れようと前かがみにもなります。
- ドアを開け閉めしながらだと、片手でドアを押さえ、もう片方の手に荷物や杖を持つので、框を降りるときにつかまる手が残りません。
片足立ちになる瞬間が続く
4つに共通しているのは、片足で体を支える場面があることです。消費者庁には、65歳以上の人が自宅で転倒したという事故情報が5年間で275件寄せられ、その8割以上が通院や入院を要するけがでした。75歳以上の件数は65〜74歳の2.2倍で、玄関・勝手口は、浴室・脱衣所や階段と並んで事故が起きた場所として挙げられています。救急搬送の人数を場所別に見たデータ(東京消防庁)は、「実家の転びやすい場所7つと、帰省時10分チェックリスト」で扱っています。夕方や夜の玄関が暗いなら、照明の足し方は人感センサー足元灯の選び方にまとめました。
この記事では、昇り降りのつらさは玄関台で、立ったままの靴の脱ぎ履きは腰掛けで、つかまる所の不足は手すりで補う、という分け方で進めます。
帰省したときに測る3か所
メジャーで測った数字をメモして、玄関全体の写真も撮っておくと、家に帰ってから製品の寸法と並べて考えられます。
上がり框の高さ
土間の床から框の上面までを、まっすぐ縦に測ります。土間は水はけのために傾いていたり、タイルの目地で凹凸があったりするので、玄関台や椅子を置く予定の位置で測ってください。
ネットの質問サイトには、框が30cm弱と高い家で踏み台を考えている、という相談や、床と框の高さの差が235mmの玄関で壁に縦手すりを付けたいが位置の基準が分からない、という相談が寄せられています。家によって高さが違うので、実家の数字を測ってから考えるのが近道です。
土間の奥行と幅
奥行は、框の縁から玄関ドアまで。幅は、左右の壁(または下駄箱)の間です。見ておきたいのは、玄関台や椅子を置いたあとに、人が立つ場所と、脱いだ靴を置く場所が残るかどうかです。
たとえば奥行60cmの玄関台を置くなら、土間の奥行から60cmを引いた残りが、ドアを開けて入ってきた人が立つ場所になります。靴を土間に脱ぐのか、台の上で脱ぐのかも、家族で決めておくと置き方が決まります。
ドアの開く向きと可動範囲
玄関ドアが外に開くか内に開くか、引き戸かを見ます。土間側に開くドアなら、開ききったときにドアの先端が通る範囲を床にマスキングテープで印をつけて、その範囲に台や椅子がかからないようにします。ドアクローザーで自然に閉まるドアは、手で押さえながら昇り降りすることになりがちなので、手すりの位置を考えるときの材料になります。
玄関台(踏み台)の選び方
玄関台は、土間に置いて、框までの段差を分けるための台です。式台(しきだい)と呼ばれることもあります。
高さと段数:框の高さから引き算する
高さはメーカーの表示で見ます。例として、アロン化成の「安寿 木製玄関台」の1段型(45W-30-1段・60W-30-1段)は高さ12cm、2段型の60W-30-2段は高さ20cm(1段10cm)と表示されています。
見るのは、框の高さから台の高さを引いた残りです。それが台の上から框へ上がる1歩になります。框が24cmなら、12cmの1段型で12cmずつ2回に分かれる計算です。框が30cmなら、1段10cmの2段型で10cmずつ3回になります。
段差をいくつに、何cmずつ分けるのがよいかという基準は、公的な資料では確かめられませんでした。ネットの記事で見かける高さの目安も、元の出典が書かれていないものが多いため、この記事では数字の目安を挙げていません。メーカーの表示で台の高さを見て、上の引き算で残りの段差を出し、できれば親に同じくらいの高さの段で昇り降りしてもらってから決めてください。
天板の奥行・幅と、最大使用者体重
天板は、両足が乗る広さが要ります。福祉用具のレンタル事業者のダスキンヘルスレントは、式台(踏み台)は両足と杖が乗る広さがあり、丈夫で滑りにくい材質のものを、と案内しています。杖を使う方なら、杖の先まで天板に乗るかを見てください。
安寿の木製玄関台の表示では、45W-30-1段が幅45×奥行30×高さ12cm(約4.1kg)、60W-30-1段が幅60×奥行30×高さ12cm(約4.7kg、最大使用者体重100kg)、60W-30-2段が幅60×奥行55・60×高さ20cm(約10.3kg、最大使用者体重100kg)です。幅と奥行が大きいほど乗りやすくなる一方で、土間に残る場所は減ります。前の章で測った土間の数字と並べて選びます。最大使用者体重は、親の体重と比べて足りているかを必ず見てください。
固定するか、置くだけか
玄関台には、置くだけで使うものと、固定金具で框や床に留めて使うものがあります。安寿の60W-30-2段には固定金具と木ネジが付いています。置くだけの台は、踏んだときの力の向きによって動くことがあるので、置く場合も下に滑り止めが付いているか、土間が平らかを確かめます。
固定するかどうかは、介護保険の扱いにも関わります(介護保険の章)。実家が賃貸なら、框や床にネジを留める前に大家さんか管理会社に確認してください。
踏み台の事故から分かる注意点
NITE(製品評価技術基盤機構)が2020年5月にまとめた資料では、2010〜2019年度に通知された屋内の高齢者の製品事故790件のうち、転倒・転落の130件を製品別に見ると、踏み台が23件(転倒19件・転落4件)ありました。脚を開いて使う踏み台や、浴槽用の踏み台兼いすも含む「踏み台」全般の件数で、玄関台に限った数字ではありません。NITEは踏み台を使うときの注意として、次のことを挙げています。
- 止め具があるものは、ゆるみがないのを確かめてから乗る。
- 天板の中央に体が来るように乗る。端に乗ると傾いて、転倒・転落するおそれがある。
- 床が柔らかい場所や、段差・凹凸がある不安定な場所では使わない。玄関なら、玄関マットの上や、土間の傾きがきつい所に置いていないかを見る。
- 幅が広く、安定のよいものを選ぶ。
NITEは2025年12月の注意喚起でも、踏み台では体の前を昇り降りする面に向け、身を乗り出したりつま先立ちになったりしないよう呼びかけています。
腰掛け(玄関椅子)の選び方
立ったまま靴を履くと、片足立ちの時間が長くなります。座って履けるようにすると、その時間を短くできます。玄関台と違って、段差そのものは変わりません。
座面の高さと立ち上がりやすさ
ネットの質問サイトには、框が30cm弱の家で踏み台を考えている人から、「踏み台を置いたら、靴ひもを結ぶときは踏み台に座るのか。低い商品が多く、座ってしまうと立ち上がるのに苦労しそう」という相談が出ています。回答した人は、框に座って靴を脱ぎ履きし、靴べらは立ったまま使える長いものを使っている、と書いています。
低い台に腰を下ろすと、膝を深く曲げた姿勢から立ち上がることになります。玄関椅子の座面の高さについて、公的な資料で目安を確かめることはできませんでした。そこで、親が普段座って楽に立ち上がれている椅子の座面の高さを測り、それに近い高さに合わせられるものを選ぶ方法をすすめます。座面の高さを変えられる椅子もありますが、何段階で、どの高さに合わせられるかは製品ごとに違うので、販売ページやメーカーの表示で確かめてください。
安定と肘掛け・置き場所
次に挙げるのは、椅子を選ぶときと、置く場所を決めるときに見ておくことです。
- 立ち上がるときに手をつける肘掛けや枠が、左右にあるか。
- 座ったまま足元の靴に手が届くか。脱いだ靴を置く場所が、足元に残るか。
- 椅子を置いたあとも、玄関台から土間への動線がふさがらないか。ドアの可動範囲にかからないか。
- 耐荷重(最大使用者体重)の表示が、親の体重に足りているか。
座って履く場合も、かかとを入れるときに前かがみになります。長い靴べらを一緒に置いておくと、かがむ深さを浅くできます。
つかまる所(手すり)をつくる
框を昇り降りするときに、壁や下駄箱の角に手をついているなら、つかまる所が足りていません。玄関の手すりには、工事なしで置く据え置き型と、壁や框にネジで留める型があります。
据え置き型の玄関用手すり
框をまたぐように置いて使う型が、玄関用として売られています。例として、矢崎化工の「あがりかまち用たちあっぷ」CKE-02-1(片手すり・ステップ台なし)は、全幅78×奥行56×全高80〜85cm、適応段差18〜36cm、重さ26.9kgで、玄関に置くだけで補助手すりをつくれる製品と説明されています。据え置き型と突っ張り型の違いは、工事なしで置ける手すり(据え置き型と突っ張り型の選び方)で比べています。
NITEが2022年6月にまとめた手すりの事故防止対策報告書では、テクノエイド協会のヒヤリハット情報から手すりに関するもの20件を抜き出して整理したところ、床置き型(据え置き型)の手すりのものが多かった、としています。固定部が壊れて転倒し、重傷になった事故も取り上げ、対策の1つに定期的な点検を挙げています。置いたあとも、帰省のたびにぐらつきやネジのゆるみがないかを見てください。
框に固定する「上がりかまち用手すり」は住宅改修の側
框にネジで固定して使う手すりもあります。アロン化成は「安寿 上がりかまち用手すり」を「(住宅改修)」の分類で掲載していて、全9型式のメーカー希望小売価格は税込35,750円から90,200円まで幅があります。スチールで高さ固定のK-140L/Fが35,750円、樹脂被覆で高さ固定のK-650L/Fが50,050円、樹脂被覆で高さ調節ができるS-650L/Fが57,750円、木製で高さ調節ができるSM-1100L/Fが90,200円(いずれも税込)です。同じシリーズでも型番で価格が大きく違うので、見積もりや販売ページを見るときは型番まで確かめてください。
壁に縦手すりを付ける場合も工事になります。取り付ける高さや位置は、親が実際に昇り降りする様子を見ながら、ケアマネジャーや施工する事業者と相談して決めてください。介護保険での扱いは次の章で説明します。
比較表と、この記事で比べる3つ
ここで並べる3つは、助ける動きが違います。1つで全部をまかなう道具ではないので、測った寸法と親の困りごとに合わせて組み合わせます。下の表はメーカーや販売ページの表示を編集部が並べたもので、実機で試した比較ではありません。
| 道具(例) | 何を助けるか | 本体の寸法(土間に要る広さの目安) | 高さの調整 | 介護保険の扱い | 価格 |
玄関台 安寿 木製玄関台 60W-30-2段 | 段差を分ける | 幅60×奥行55・60cm | できない(高さ20cm・1段10cm) | 框に固定すれば住宅改修「段差の解消」の対象になり得る。置くだけは対象外 | 希望小売価格 47,300円(税込) アスクル 32,600円(税込・535586 ライトブラウン・2026-09-26時点) |
腰掛け アイリスオーヤマ 玄関椅子 GC-55 | 座って靴を脱ぎ履きする | 幅約55×奥行約29cm | 座面 約23.5cm(最大45.5cm)で調節できる 何段階かは未確認 | 対象外(自費) | 6,048円(税込) ヤマキシオンラインショップ・ナチュラル・2026-09-26時点 |
据え置き手すり 矢崎化工 たちあっぷ CKE-02-1 | つかまって昇り降りする | 全幅78×奥行56cm | 全高80〜85cm/適応段差18〜36cm | 認定があれば福祉用具貸与の「手すり」として借りられる可能性がある。通販で買うなら自費 | 希望小売価格 92,620円(税込) レンタル例 月額4,000円(サカイヘルスケアー・自己負担は1割400円/2割800円/3割1,200円・2026-09-26時点) |
①段差を分ける
🪜
2段型の玄関台:アロン化成 安寿「木製玄関台 60W-30-2段」(535-584 ブラウン/535-586 ライトブラウン)
希望小売価格 47,300円(税込)/アスクル 32,600円(税込・535586 ライトブラウン・2026年9月26日時点)/楽天 介護BOX パンドラ 27,500円(税込・送料無料・535-586 ライトブラウン・2026年10月1日時点。ブラウンは売り切れ)
向いている方- 框が高く、1歩で上がるのがつらそう
- 土間に奥行60cmの台を置いても、立つ場所が残る家
気になる点- 高さは変えられない(20cm・1段10cm)。框の高さとの差を先に計算する
- 約10.3kgあり、置き直しには手間がかかる
幅60×奥行55・60×高さ20cm(1段10cm)、約10.3kg、最大使用者体重100kg、天然木(ラバーウッド)にウレタン樹脂特殊塗装、とメーカーは公表しています。固定金具と木ネジが付いており、住宅改修の対象品として案内されています。ただし介護保険の住宅改修を使えるのは、框や床に固定して据え付ける場合で、要介護・要支援の認定と、購入・取付けの前の市区町村への事前申請が要ります。先に買って付けると支給の対象にならないことがあるので、保険を使うつもりなら、買う前にケアマネジャーか市区町村に相談してください。框の高さとの差を計算して1段で足りそうなら、同じシリーズの1段型(60W-30-1段:幅60×奥行30×高さ12cm、希望小売価格30,250円)もあります。
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②座って履く
🪑
座面の高さを変えられる玄関椅子:アイリスオーヤマ「玄関椅子 GC-55」
6,780円(税込・楽天 JOYライト・ナチュラル/ブラウン・2026年9月26日時点)
向いている方- 立ったまま靴を履いて、片足でよろけることがある
- 普段の椅子に近い高さに座面を合わせたい
気になる点- 耐荷重は約90kg。親の体重と比べて確かめる
- 昇り降りの段差は変わらない。框が高いなら玄関台や手すりと組み合わせる
サイズは幅約55×奥行約29×高さ約60cm、座面の高さは約23.5cm(最大45.5cm)、重さ約5.7kg、耐荷重約90kg。座面の下の棚に靴が2足入る、と販売ページに表示されています。店によっては商品名に「肘つき」と入れています。高さを調節できると表示されていますが、何段階で変えられるかは販売ページでは確認できませんでした。親が普段座っている椅子の座面の高さを測り、その高さに合わせられるかをリンク先で確かめてください。
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③つかまる
🤚
置くだけの玄関用手すり:矢崎化工「あがりかまち用たちあっぷ」CKE-02-1(片手すり・ステップ台なし)
希望小売価格 92,620円(税込)/楽天 介護もーる 63,379円(税込・2026年9月26日時点)/レンタル例 月額4,000円(サカイヘルスケアー・自己負担は1割400円/2割800円/3割1,200円・レンタル料は事業者ごとに異なる・2026年9月26日時点)
向いている方- 框を昇り降りするとき、壁や下駄箱に手をついている
- 壁に穴を開けられない、または工事の前に試したい
気になる点- 全幅78×奥行56cmと大きく、重さも26.9kgある。土間の寸法を先に確かめる
- 購入すると高額。認定があるならレンタルを先に考える
全幅78×奥行56×全高80〜85cm、適応段差18〜36cm、26.9kg。手すりはイレクター、ジョイントはアルミ合金、ベースはステンレスと表示されています。工事なしで置く型なので、要介護・要支援の認定があれば福祉用具貸与(レンタル)の「手すり」として借りられる可能性があります(TAISコード 00055-000110)。通販で自分で買った場合は、介護保険の給付は受けられず全額自費です。サカイヘルスケアーのページには、月額4,000円と、全国平均貸与価格4,297円が載っています。レンタル料は事業者によって違います。ステップ台付きのCKE-02のように、踏み台と手すりが組み合わさった製品は、介護保険での扱いが市区町村によって分かれることがあるので、借りる前にケアマネジャーに確かめてください。
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玄関台・腰掛け・手すりは、どれか1つを置いたら終わり、というものではありません。置いたあとは、親が実際に出入りする様子を見て、つまずいていないか、ドアや靴の置き場所と干渉していないかを確かめてください。室内の履き物が滑りやすいと、框の上でも足が取られます。室内履きの選び方は室内で転びにくい履き物の選び方で扱っています。
介護保険の扱い(住宅改修・福祉用具貸与)
介護保険で玄関まわりに関わるのは、福祉用具貸与(レンタル)、特定福祉用具販売(購入)、住宅改修の3つです。厚生労働省が公表している福祉用具貸与の種目(車いす、特殊寝台、床ずれ防止用具、体位変換器、手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえ、認知症老人徘徊感知機器、移動用リフト、自動排泄処理装置)と特定福祉用具販売の種目には、玄関台・踏み台は入っていません。
玄関台:固定すれば住宅改修「段差の解消」の対象になり得る
住宅改修の対象工事の1つ「段差の解消」を、厚生労働省の通知(老企第34号)は、玄関等の各室間の床の段差などを解消するための住宅改修と定めています。厚生労働省の住宅改修Q&A(根室市が「厚生労働省HPより抜粋」として公開)には、「式台については、持ち運びが容易でないものは床段差の解消として住宅改修の支給対象となるが、持ち運びが容易なものは対象外となる。また、上がり框を二段にする工事は床段差の解消として住宅改修の支給対象となる」とあります。
大和市の案内によれば、厚生労働省は踏み台を「要介護者等でないものも使用する一般生活用品」と位置づけており、福祉用具貸与の種目には当たりません。「段差解消」は本来、住宅改修で給付の対象になる、と大和市は説明しています。
まとめると、置くだけの玄関台は介護保険の給付の対象にならないのが原則で、自費での購入になります。框や床に固定して据え付けるなら、住宅改修の「段差の解消」として相談できます。安寿の木製玄関台には固定金具と木ネジが付いていて、メーカーは住宅改修の対象品として案内しています。ただし、対象になるかどうかを最終的に決めるのは市区町村(保険者)です。買う前・付ける前に、ケアマネジャーか市区町村の窓口に確認してください。
手すり:工事なしは福祉用具貸与(レンタル)、ネジ留め・壁付けは住宅改修「手すりの取付け」で相談する
福祉用具貸与の「手すり」は、取付けに工事を伴わないものに限られます(老企第34号)。玄関に置くだけの据え置き型は、こちらで借りられる可能性があります。大田区の資料では、手すりは要支援1・2や要介護1の人でも原則として貸与の対象になる種目として案内されています。
框にネジで留める上がりかまち用手すりや、壁に取り付ける手すりは、福祉用具貸与ではなく住宅改修の「手すりの取付け」として扱われるのが一般的です(認定と着工前の事前申請が前提で、対象になるかは市区町村が判断します)。手すりの方式ごとの線引きは、「工事なしで置ける手すり」の介護保険の章で詳しく書いています。
踏み台付き手すりなど一体型は、対象外と扱う市区町村がある
老企第34号の「複合的機能を有する福祉用具について」には、福祉用具貸与の種目や特定福祉用具の種目に当たらない機能が含まれる場合は、法に基づく保険給付の対象外として扱う、という定めがあります。大和市は、踏み台部分を含めての保険請求は原則できない、手すりと踏み台が一体のものは福祉用具貸与の対象外、と案内しています。
つまり、手すりと踏み台が一体で分けられない製品は、踏み台の部分が貸与の種目に無いため、介護保険の対象外と扱う市区町村があります。大和市自身も保険者によって判断が違う場合があると書いているので、全国で一律というわけではありません。一体型を借りたい・買いたいときは、その前にケアマネジャーに確認してください。
認定と、着工前の事前申請が要る
住宅改修で給付を受けるには、要介護・要支援の認定を受けていることが前提です。世田谷区などの案内では、工事の前に市区町村へ事前申請し、ケアマネジャーなどが作る「住宅改修が必要な理由書」を付けて、工事のあとに支給を申請する、という順番になります。事前申請をせずに工事を始めると、支給の対象にならないことがあります。自己負担は所得に応じて1〜3割です。住宅改修の支給限度額(20万円)の考え方は、「実家の転びやすい場所7つ」にまとめています。
まだ認定を受けていない場合の最初の一歩は、「親の介護は何から始める?最初の電話と要介護認定の手続き」にあります。
介護保険の申請の流れを見る
よくある質問
玄関台は介護保険で買えますか?借りられますか?
介護保険のレンタル(福祉用具貸与)では借りられません。玄関台・踏み台は単体では、福祉用具貸与の種目にも、特定福祉用具販売(購入)の種目にも入っていないためです。置くだけの玄関台は、原則として自費での購入になります。框や床に固定して据え付ける場合は、住宅改修の「段差の解消」として相談できます。その場合は要介護・要支援の認定と、工事の前の事前申請が必要です。対象になるかは市区町村が判断するので、ケアマネジャーか市区町村の窓口に確認してください。
実家が賃貸でも置けますか?
置くだけの玄関台、玄関椅子、据え置き型の手すりは、工事をしないので賃貸でも使えます。玄関台を固定金具で框や床に留める場合や、壁に手すりを付ける場合は、ネジ穴を開けることになるので、先に大家さんか管理会社に確認してください。住宅改修で介護保険を使う場合は、持ち主の承諾が要るかどうかも含めて、ケアマネジャーへの相談が必要です。
框が10cm台と低めです。それでも踏み台は要りますか?
要るかどうかは框の高さだけでは決まりません。低めの框でも、つかまる所が無い、靴を立ったまま履いてよろける、という場合は、玄関台より手すりや腰掛けのほうが合うことがあります。逆に低い段差に台を足すと、段が1つ増えて、かえって段の縁が増えることにもなります。親が玄関でどの動きのときにふらついているかを見て、足りないところを補ってください。
玄関台に親がつまずかないか心配です。
置く前に、ドアの開く範囲を測り、人が立つ場所・靴を置く場所が残るかを確かめておきます。NITEは踏み台の注意として、天板の中央に乗ること、床が柔らかい場所や凹凸のある不安定な場所で使わないこと、幅が広く安定のよいものを選ぶことを挙げています。置いたあとは、帰省したときに親の出入りを実際に見て、台の縁に足を引っかけていないか、台が動いていないかを確かめてください。暗い玄関なら足元の明かりも見直すと、台の縁が見えやすくなります。
玄関はスロープにしたほうがいいですか?
介護保険では、工事なしで置くスロープは福祉用具貸与の種目にあり(固定用スロープは令和6年4月から購入も選べます)、スロープを設置する工事は住宅改修の「段差の解消」の対象になり得ます。どれも認定が前提で、対象になるかは市区町村が判断します。ただ、框の高さの分だけ長さが要るので、土間の奥行によっては置けないことがあります。歩いて出入りする方に段差とスロープのどちらが合うかは、親の歩き方によって変わるので、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談してください。
この記事の根拠とした主な情報源